「ボーン・トゥ・フライ」

一条真也です。
東京に来ています。2日、冠婚葬祭文化振興財団の経営会議に出席した後、夜の打ち合わせまでの時間を利用して、TOHOシネマズ日比谷で中国映画「ボーン・トゥ・フライ」を観ました。ネットで評価が高いアクション映画ですが、それなりに泣けるものの、満足度はまあまあでした。

 

ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「中国・韓国のボーイズグループ『UNIQ』のメンバーでドラマ『陳情令』などに出演してきたワン・イーボーが、テストパイロットを演じるスカイアクション。空軍の訓練中にトラブルを起こした若きパイロットが、戦闘機のテストパイロットに抜てきされ、仲間と競いながら成長していく。ライバルのパイロットをユー・シーが演じ、チョウ・ドンユイ、フー・ジュンなどが共演。監督を空軍の映像などを手掛けてきたリウ・シャオシーが務める」

 

ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「空軍パイロットのレイ・ユー(ワン・イーボー)は訓練中にトラブルを起こし、今はその才能を持て余す日々を送っていた。ある日、戦闘機のテストパイロットチームを率いるチャン・ティン(フー・ジュン)がレイの才能を見いだし、チームに誘う。レイは新世代ステルス戦闘機のテスト飛行士として過酷な飛行を繰り返す中、ライバルのドン・ファン(ユー・シー)と衝突する」

 

現代中国の軍人が活躍するドラマを観るのは初めてです。中国の軍事力の実態でもわかるかなと思って鑑賞しましたが、テスト飛行した戦闘機が故障続きで、「これでは国威発揚映画にはならないな」と感じました。ステルス戦闘機というのはアメリカでも他の先進国と共同開発する最新兵器なのですが、中国は一国で開発・製造し、マンパワーによる危険なテスト飛行が避けられないようです。ふだんは傍若無人な中国軍が、他国が領空を侵犯した時のみに戦闘機が出動するかのような描写は違和感をおぼえました。

 

主人公レイ・ユーを演じたには、ワン・イーボー(王一博)です。1997年生まれの26歳で、中国河南省洛陽市出身。男性アイドルグループ、UNIQのメンバーでメインダンサー、リードラッパー担当。2014年9月15日にUNIQのメンバーとしてデビュー後、2019年放送のドラマ「陳情令」 にて主演の1人を務めたことでブレイク。俳優、声優、歌手、ダンサー、司会者、オートバイレーサーとして活躍しています。主な愛称は「白牡丹」「王甜甜」「王杰」「酷盖」など。スクリーンで初めて彼の顔を見たとき、速水もこみち工藤阿須加に似ていると思いました。日本人好みのイケメンだと言えるでしょう。

 

スクリーンに映るワン・イーボーを観ているうちに、わたしは、ブログ「無名」で紹介した中国のスパイ・ノワール映画にも出演していたことに気づきました。「無名」は、第2次世界大戦下の上海を舞台に、中国共産党、国民党、日本軍の間で繰り広げられるスパイたちの攻防戦を描いたサスペンスです。1940年代の中華民国・上海。政治保衛部のフー(トニー・レオン)は部下のイエ(ワン・イーボー)、彼の友人・ワン(エリック・ワン)らと諜活動に奔走していた。あるときフーは、任務に失敗した国民党のスパイを助けたことで、上海在住の日本人の要人リストを手に入れる。一方、イエはフーの部下でありながら、日本軍のスパイ・渡部(森博之)ともつながる二重スパイだった。それぞれに思惑を秘めた彼らが極秘の任務に当たる中、戦況が激化していくのでした。

 

わたしが「ボーン・トウ・フライ」を鑑賞した理由の1つは、同じように戦闘機のパイロットを主人公にしたハリウッド映画と比較してみたいと考えたからでした。その映画とは、ブログ「トップガン マーヴェリック」で紹介したトム・クルーズ主演の大ヒット作です。2022年ドの一条賞(映画篇)大賞受賞作でもあります。トム・クルーズをスターダムにのし上げた出世作トップガン(1986年)の続編で、アメリカ軍のエースパイロットの主人公マーヴェリックを再びトムが演じます。マーヴェリック(トム・クルーズ)は、かつて自身も厳しい訓練に挑んだアメリカ海軍パイロットのエリート養成学校、通称「トップガン」に教官として戻ってきます。父親と親友を空で失った過去を持つ彼の型破りな指導に、訓練生たちは反発。彼らの中には、かつてマーヴェリックの相棒だったグースの息子ルースター(マイルズ・テラー)もいました。

 

「ボーン・トウ・フライ」と「トップガン マーヴェリック」を見比べたわけですが、両作品は意外と似ていました。中国・アメリカと国は違っても、パイロットたちの愛国心、使命感、友情、家族への愛情などは共通しています。「ボーン・トウ・フライ」では、テスト飛行に出たパイロットが「帰投」しないことをグリーフとして描いていましたが、この映画に感動した人々は、日本の神風特攻隊の物語にも涙を流すのではないかと思いました。ブログ「永遠の0」で紹介した2013年公開の山崎貴監督の不朽の名作などは国家や民族を超えて、世界中の人々が共感するかもしれませんね。「ボーン・トウ・フライ」のステルス戦闘機には非常用の脱出装置がありましたが、神風特攻隊員が搭乗した零戦には脱出用装置すらありませんでした。特攻とは、ただ死にに行くだけの非人間的な作戦だったのです。わたしは、今でも若い命を散らせた特攻隊員を想うと涙が出てきます。

 

2024年7月3日  一条真也