「明日を綴る写真館」

一条真也です。
日本映画「明日を綴る写真館」シネプレックス小倉で観ました。冠婚葬祭業は写真と切っても切り離せないので、「何か仕事の参考になるかも?」とサンレーグループ冠婚部門の責任者である山下常務と一緒に鑑賞したのですが、2人とも感動で涙腺が緩みっぱなしでした。

 

ヤフーの「解説」には、「『7年後で待ってる』などで知られるあるた梨沙の漫画を実写映画化。さびれた写真館を営むベテランカメラマンと、彼の写真に心を奪われ弟子入りした若手カメラマンが、互いに影響を与え合いながら成長する。『箱入り息子の恋』などの平泉成が主人公、アイドルグループ『Aぇ!Group』の佐野晶哉が若手カメラマンを演じるほか、佐藤浩市吉瀬美智子黒木瞳市毛良枝らが出演。平泉と佐野も出演した『20歳のソウル』などの秋山純がメガホンを取った」とあります。

 

ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「気鋭の若手カメラマン・五十嵐太一(佐野晶哉)は一枚の写真に感銘を受け、撮影者の鮫島武治(平泉成)に弟子入りを志願する。武治はさびれた写真館を経営する無口なカメラマンで、撮影者と被写体という関係を超え、写真館を訪れる客たちと深く関わっていた。彼らの悩みや問題のために奔走する武治と共に過ごす中で、太一は自分に足りないものに気付き始める」

 

まず、この映画、地味な題材にもかかわらず豪華キャストなのに驚きました。主演の平泉成は1964年デビューの俳優歴60年の大ベテランで、現在80歳。佐野晶哉は、今年5月15日にCDデビューしたSTARTO  ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)所属の男性アイドルグループ「Aぇ!Group」のメンバーです。他にも、佐藤浩市、美保純、黒木瞳らが出演していますが、この3人は全員が63歳です。佐藤は年齢相応の白髪姿でしたが、美保純がホスピスに入っていて寿命が尽きる老婆の役なのにシワ1つなく、髪もカラスの濡れ羽のような黒髪だったことに違和感をおぼえました。黒木瞳は「美魔女」と言いたいところですが、まあ年齢相応でしたね。

 

この映画は写真館が舞台の物語ですが、もう1つ、結婚式場も舞台となっています。撮影にはIKKグループさんの「ララ・シャンス岡崎」が使われていましたが、写真のみならず、婚礼衣装や結婚式そのものの重要性も訴えており、「ザ・冠婚映画」といった印象でした。市毛良枝が演じた鮫島武治(平泉成)の妻が「わたしは、ウエディングドレスが着たかった!」「結婚式はやったほうが絶対にいい!」などと断言する場面はスッキリしました。故渡部昇一先生が言われた「ささやかな披露宴も開けないような結婚はすべきではない」という金言を思い出しました。

 

写真をテーマにした映画といえば、 ブログ「浅田家!」で紹介した2020年の作品があります。第34回木村伊兵衛写真賞を受賞した浅田政志の著書『浅田家』『アルバムのチカラ』を原案にした人間ドラマで、家族写真を撮りながら成長していく主人公の姿を描きます。家族を被写体にした卒業制作が高評価を得た浅田政志(二宮和也)は、専門学校卒業後、さまざまな状況を設定して両親、兄と共にコスプレした姿を収めた家族写真を撮影した写真集『浅田家』を出版し、脚光を浴びます。やがて彼はプロの写真家として歩み始めますが、写真を撮ることの意味を模索するうちに撮れなくなってしまいます。そんなとき、東日本大震災が発生するのでした。

 

また、ブログ「おもいで写眞」で紹介した2021年の写真も思い浮かびます。仕事をクビになり失意に沈む音更結子(深川麻衣)は、祖母が亡くなったことを受けて帰郷。母の代わりに自分を育ててくれた祖母を孤独に死なせてしまったと悔やむ中、幼なじみの星野一郎(高良健吾)から老人を相手にした遺影撮影の仕事に誘われます。当初は老人たちに敬遠されるが、一人で暮らす山岸和子(吉行和子)との出会いを機に、結子は単なる遺影ではなくそれぞれの思い出を写し出す写真を撮るようになっていきます。写真も葬儀も「その人が生きていた証を残す」ということです。自身の葬儀に縁のある人々に参列してもらい、自分が一番気に入っている遺影(おもいで写眞)を見てもらうのが、最高の人生の卒業式ではないかと思いました。

 

映画「明日を綴る写真館」では、さまざま家族写真が登場します。ドイツの哲学者ヘーゲルは「家族とは弔う者である」と述べましたが、それに加えて、わたしは「家族とは一緒に写真に写る者である」と言いたいです。40年以上にわたって富士フィルムの年賀状CMに出演し続けた樹木希林は、「写真は家族の形を整える」「写真は家族の記憶をとどめるもの」「写真がなかったら、うちの家族って何だったのっていうようなもんですよ」との名言を残しています。つまり、家族写真とは、初宮参り、七五三、成人式、結婚式、長寿祝い、葬儀、法事法要といった冠婚葬祭と同じ役割や機能があるのです。やっぱり、家族写真は大切ですね。「明日を綴る写真館」は、冠婚葬祭業に関わるすべての方々に観てほしい映画です!



2024年6月13日  一条真也