究極のSDGs

 

 

一条真也です。
これまで多くの言葉を世に送り出してきましたが、この際もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。今回は、「究極のSDGs」です。


北九州市SDGs推進室の上田室長と記念撮影

北九州市はかねてよりSDGsに熱心に取り組んでいますが、「2021北九州SDGs未来都市アワード」において、サンレーが奨励賞を受賞しました。他の受賞企業は製造業のみで、いわゆる第三次産業ではわが社のみです。名誉なことだと思っています。



SDGs(Sustainable Development Goals)とは「持続可能な開発目標」という意味です。「SDGs(持続可能な開発目標)は、国連で採択された「未来のかたち」です。健康と福祉、産業と技術革新、海の豊かさを守るなど経済・社会・環境にまたがる17の目標があり、2015年の国連総会で全加盟国が合意しました。そして、2030年までにそのような社会を実現することを目指しています。感染症への対処、ワクチンなど医薬品の開発、「元に戻る」ためのレジリエント(復元力の高い)なインフラ構築、差別の撤廃、廃棄物の大幅削減、そして貧困の解消。これらはすべてSDGsの目標に含まれています。

 

 

ブログ『SDGs(持続可能な開発目標)』で紹介した蟹江憲史氏の著書によれば、現代社会には、多くの課題があります。大きく分けると、これらの課題は、経済の問題、社会の問題、環境の問題と3つに分けることができると指摘し、蟹江氏は「より身近な言い方をすれば、カネ・ヒト・地球の問題である。それらは一見独立した問題のようにも思われるが、実はそれぞれが深く強く関連している」と述べています。課題が相互に関連しているということは、課題解決も一筋縄では行かないということであり、何かを解決しようとしても、総合的に考えて行動を取らない限り、全体として課題を解決することにはなりません。



日本では江戸時代以来、近江商人の経営哲学としての「三方よし」という考えがよく知られています。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」として、売り手も買い手も満足し、そして世間(社会)も良くなる商いが良い商売だという考えです。SDGsはこの考えをもう一歩進めた「四方よし」であると指摘し、蟹江氏は「従来の『三方よし』には足りなかった考え方があった。『未来よし』である」と述べます。その「未来よし」を補ってくれるのがSDGsなのです。未来には、これまでの延長線上で考えられないことがたくさん出てくるとして、蟹江氏は「つまり、今とは異なる条件のなかで、課題解決を継続的に行っていくためには、『四方よし』の必要があるわけである。こうしたなかで、企業がSDGsへの注目を高めているというのは、必然だといってよい」と述べます。

古事記と冠婚葬祭(現代書林)

 

わたしは、SDGsとは「人類の生存戦略」だと考えています。わたしは、わが社の社歌を作って下さった神道ソングライターで宗教哲学者の鎌田東二先生と対談し、その内容は『古事記と冠婚葬祭』(現代書林)に収められています。鎌田先生は古事記について、「いのちの賛歌としての『古事記』は日本人の生存戦略の書でもある。すなわち『まつり』と『うた』を発明したのがそれである」と述べています。これには膝を打ちました。「まつり」と「うた」は日本のSDGsに関わっていたのです。ならば、コロナ前に北島三郎の「まつり」をカラオケで「うた」っていたわたしはどうなる?(笑)

 

 

古事記』のみならず、各民族の神話はそれぞれの生存戦略の書であるという見方もできます。つねづね、鎌田先生は「人類は神話と儀礼を必要としている」と述べておられ、わたしも大いに共感していますが、それは結局、神話と儀礼の本質は人類を滅亡させず持続させるためのものだということ。そして、神話と儀礼の本質は「物語」です。鎌田先生は儀礼について「人間がリアルからいったん離れて、あえてフィクショナルな世界に身を投じること」と喝破されました。儀礼の核をなすものが儀式です。

儀式論』(弘文堂)

 

拙著儀式論(弘文堂)の帯コピーにもあるように、わたしは「人間が人間であるために儀式はある」と考えています。儀礼や儀式といえば、わが社をはじめとした冠婚葬祭互助会が提供するものです。考えてみると、冠婚葬祭とは社会を持続させるシステムそのものではないでしょうか。結婚式は、夫婦を生み、子どもを産むことによって人口を維持する結婚を根底から支える儀式です。一方葬儀は、儀式とグリーフケアによって死別の悲嘆によるうつ、自死などの負の連鎖を防ぐ儀式です。冠婚業も葬祭業も、単なるサービス業ではありません。それは社会を安定させ、人類を存続させる重要なケアの文化装置なのです。そして、冠婚葬祭こそは究極の(Ultimate)SDGsとしての「USDGs」ではないでしょうか。

 

2024年6月19日  一条真也