『世界一わかりやすい「論語」の授業』 

一条真也です。
57冊目の「一条真也による一条本」は、『世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP文庫)です。2011年12月19日に刊行されました。編集は、造事務所さんにお願いしました。わたしにとっては、『論語』そのものについての初めての著書になります。

f:id:shins2m:20210128143322j:plain世界一わかりやすい「論語」の授業
(2011年12月19日刊行)

 

本書のカバー表紙には孔子と弟子たちのイラストが描かれ、帯には「孔子先生による白熱LIVE!」「個性豊かな5人の弟子と一緒に学ぶ、笑いあり涙ありのかつてない超入門書」と書かれています。また、カバー裏表紙には以下のように書かれています。「2500年の時空を超えて、笑いあり涙ありの伝説の講義が現代に蘇える!本書では、山奥の学校で教鞭をとる孔子先生が、個性豊かな5人の弟子たちに『論語』を伝授します。『勉強が大の苦手、子路』『お金儲けに目がない、子貢』『成績ナンバー1の秀才、顔回』『クラスのムードメーカー、冉有』『自分勝手な問題児、宰我』といったように、あなたに似た弟子がきっとみつかるでしょう。『大事なのは、読書と実践と誠実と信義の4つだけ』『立派な人は、人と調和しようとするが、決して人に流されたりはしない』『どうすれば親孝行ができるのか? それは、病気以外のことで親に心配をかけないことだ』など、マンガと超訳を駆使し、難しい金言が手に取るようにわかる! 白熱の授業がついに開講! 文庫書下ろし」

f:id:shins2m:20210413161552j:plain孔子文化賞受賞記念の帯バージョン

 
論語』は、孔子とその弟子の言行を弟子たちがまとめた書物です。孔子は、紀元前551年、現在の中国に生まれました。同じ聖人であるブッダとほぼ同時代の人で、ソクラテスより80数年早いですね。千数百年にわたって『論語』は、わたしたちの祖先に読みつがれてきました。意識するしないにかかわらず、これほど日本人の心に大きな影響を与えてきた書物は他に存在しません。とくに江戸時代に徳川幕府儒学を奨励すると、必読文献として、武士階級のみならず、庶民の間にも広く普及しました。


湯島聖堂の巨大孔子

 

「君子」という言葉が『論語』には多く登場します。
初めは地位のある人を、後に徳のある人を指す言葉になりました。君子は、いわゆる最高の人格者である聖人とは異なります。あくまで現実社会に存在する立派な人格者で、生まれつきなれるものではありません。『論語』の憲問篇に「君子は上達す」とあるように、努力すれば達しうる境地、それが君子なのです。


湯島聖堂孔子像の前で

 

儒教とか君子とかいうと、孔子は堅苦しくストイックな印象があるのかもしれませんが、大いに人生を楽しんだと思います。何しろ、酒を飲み、きれいな色の着物を好み、音楽を愛した人でした。『論語』には「楽しからずや」「悦ばしからずや」といったポジティブな言葉が多く見受けられます。仏典や聖書には人間の苦しみや悲しみについては出てきても、楽しみや喜びなどはまず見当たりません。この点、『論語』にポジティブな言葉が多いのは、本当にすばらしいことだと思います。


5人の弟子が登場します

 

また、『論語』に出てくる孔子は完全無欠な聖人としてではなく、血の通った生身の人間として描かれています。そして、孔子は何よりも偉大な先生でした。たとえば、弟子それぞれによって教え方を変えたりしました。すなわち、相手に一番ふさわしいメッセージを与えたのです。本書には、タイプの異なる5人の弟子が登場します。きっとこの本を読むあなたに似た弟子が必ず見つかると思います。


北陸大学での講義のようす

 

わたしは当時、北陸大学の客員教授として、「孔子研究」の授業を担当していました。学生の中には、孔子を生んだ国である中国や儒教が盛んな韓国からの留学生もたくさんいました。彼らに孔子が残したメッセージをわかりやすく伝えるため、わたしは黒板に『論語』の一節を書き、身振り手振りをまじえ、ゆっくりとした日本語で説明していました。日本人のみならず、中国人や韓国人の「こころ」のDNAの中には、孔子が説いた「人の道」がきっと生きていると信じています。

                                   
5つの授業から構成されています

本書の「目次」は、以下の通りです。
〈はじめに〉「『論語』を学んで、君子になろう!」
「楽しく学べる「論語」学校」
「本書の6大特徴」
1限目
[下学上達]成長するため、学び続ける
(1)人は学問で成長
(2)学問への心構え 
(3)何をするにもまずは「健康」
(4)豊かな人生を送るための学問
(5)学べば近づく理想の自分
孔子が遺したもの〈1〉]
門下に集った有能な人材「孔門十哲」その(1)
2限目
[人間関係]他者から信頼、尊敬される
(1)人とのつながりで成り立つ社会
(2)つき合うべき相手の判断基準
(3)人生において友人は宝物
(4)意思の疎通のさまざまな重要性
(5)好かれる人 嫌われる人
孔子が遺したもの〈2〉]
門下に集った有能な人材「孔門十哲」その(2)
3限目
[率先垂範]先頭に立ち、指導力を発揮する
(1)リーダーが備えるべき資質
(2)リーダーとしての下の者への接し方
(3)だれもがあこがれる理想の上司の姿
(4)目指すべき真のリーダー像
(5)努力の継続から生まれるリーダー
孔子が遺したもの〈3〉]
日本のリーダーが取り入れた「儒教」の概念
4限目
成功哲学]目標を定め、達成する
(1)望みどおりの人生を生きる条件
(2)人格をさらに高めるための教養
(3)万事に欠かせないバランス感覚
(4)成功するために避けること
(5)本当の成功 本当の幸福
孔子が遺したもの〈4〉]
日本人になじみ深い
論語』出典の「故事成語
5限目
[礼儀作法]日々の生活を円滑にする
(1)見直すべき礼儀作法
(2)肉親への礼儀作法
(3)社会人に必要な基本的な礼儀作法
(4)日常生活において実践する礼儀作法
(5)社会秩序を支える礼儀作法
論語」学校卒業式


6大特長があります

 

それぞれの授業ごとに『論語』の金言を紹介。
さらに、わたしの超訳を加えた上で解説しています。
本書には、類書にはない、次の6大特長があります。
1.テーマ〜この授業で、何について学べるかが、ひと目でわかります。
2.金言〜『論語』に収録されている孔子の教え(金言)を紹介します。
3.超訳〜金言を現代風に解説しています。金言とセットで読みましょう。
4.授業内容〜金言をもとに、孔子が「人として大切なこと」を教えてくれます。
5.補習授業〜この授業でいちばん大切な教えを、孔子と生徒が確認します。
6.授業のキーワード〜授業に出てきた重要な単語をわかりやすく説明します。

 
「わかりやすさ」を追求しました

 

本書は、造事務所さんの編集協力により、マンガを取り入れるなど、とにかく「わかりやすさ」を追求しました。やはり造事務所と一緒に作った『開運! パワースポット「神社」へ行こう』(PHP文庫)と同じく、つぼいひろき氏がマンガを描いてくれています。おかげさまで、類書を圧倒する非常にポップな『論語』入門書になったと思います。どこからでも気軽にページを開き、楽しみながら『論語』の魅力を味わえます。


北陸大学での講義のようす

 

論語』は全部で20篇あり、512の短文が収められています。その中でも、特に現代人が指標生きるうえでの指標となる金言を100程度選びました。なお、書き下し文は岩波文庫論語』(金谷治訳注)を参考にしています。本書を読まれた方が、社会の中で幸せに生きるための言葉に1つでも多く出会い、その言葉が一生の宝物となることを願っています。


北陸大学での講義のようす

 

大山倍達は「空手バカ一代」ですが、わたしは「論語バカ一代」を目指しています。ブログ「論語三昧」に、わたしの『論語』への傾倒ぶりが書かれています。当時も今も『論語』ブームであり、はっきり言って類書は多いです。しかし、「論語バカ一代」が書いた『世界一わかりやすい「論語」の授業』をぜひ御一読下さい。同書はおかげさまで多くの読者を得て、特に電子書籍ではアマゾンでも1位を続けています。

 

世界一わかりやすい「論語」の授業 (PHP文庫)
 

 

 

2021年5月2日 一条真也