オリンピックどごろでねえ

一条真也です。
9年目の「3・11」を迎えますが、被災地の復興は進んでいません。新型コロナウィルスの感染拡大という新たな国難も日本を襲っています。そんな中で東京オリンピック開催を強行しようとする政府の姿勢に批判の声があがっています。

f:id:shins2m:20200311133106j:plain東京五輪開催に抗議する福島の人たち

 

東京オリンピック聖火リレーの出発地となるのは、福島県楢葉町にあるサッカーのナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ(J‐Village)」です。Jヴィレッジは原発事故の対応拠点として利用され、昨年ようやく一般向けに再開された場所です。聖火は今月20日、宮城県に到着しますが、少なくとも2022年より前に住民が帰還する見込みはないといいます。水道などの基本インフラもまだ整っていないそうです。

 

『オリンピックどごろでねえ』聖火リレー出発地・福島、『復興五輪』に喜べず」というAFP=時事のネット記事によると、先月、このJヴィレッジ前で行われた抗議デモで、「福島はオリンピックどごろでねえ」と書かれた横断幕が掲げられました。記事には以下のように書かれています。
福島県出身でひだんれん共同代表の武藤類子(Ruiko Muto)さん(66)は、五輪の焦点がずれており、Jヴィレッジが聖火リレーに使われることに怒りを覚えるという。武藤さんは『私たち福島県民にとっては、ここを使ってオリンピックの聖火リレーを始めるということは原発事故というものを本当になくしてしまう、終わらせてしまうという意味に取れる。ここから聖火リレーが走るということは、私たちにとっては屈辱的なことでもある』とAFPに述べた。さらに汚染土壌や汚染水の問題、避難者たちの問題が解決していないままで、五輪どころではない状況だと指摘。『心から楽しめる人はそれほど多くないと思う』と語った」

 

また、記事には以下のようにも書かれています。
「ひだんれん幹事の一人、熊本美彌子(Miyako Kumamoto)さんは、政府が避難指示を取り下げたことで、住宅支援を削減される避難者らが苦境に立たされていると指摘。復興五輪の考えについて否定した。支援者らは、多くの人が今も汚染を恐れて帰還したがらない状況であるにもかかわらず、日本政府は震災が終わったと宣言しようとしていると非難している。熊本さんによると、震災当初に無償提供された仮設・借り上げ住宅に住む避難者らは、家賃の支払いを強いられるようになり、その家賃も徐々に値上がりし、最終的には退去を求められているという。熊本さんは、政府は東京五輪に120億ドル(約1兆2500億円)以上を費やすのに、なぜ避難者支援を削減するのかと疑問を投げ掛け、福島は五輪を祝える場所ではないと語った」

 

わたしは、日本はオリンピックの開催権を返上すべきであると考えています。儀式や祭典やイベントといった「人が集まる」ことの意義と重要性を誰よりも理解しているつもりなのですが、今回だけは日本はオリンピックを開催すべきではありません。詳しくはブログ「東京で考えたこと」ブログ「すべては東京五輪開催のために」ブログ「もう、中止だ中止!」をお読み下さい。国際オリンピック委員会(IOC)で最古参委員であるディック・バウンド氏は「東京五輪の開催判断の期限は5月下旬」との見方を示しました。この頃、ロンドン市長選が行われ、新市長が「五輪のロンドン開催」を提言すると見られています。わたし個人の見解は、日本人として大変残念ではありますが、もはや東京五輪の開催は厳しいと思います。

 

これから日本国内での感染拡大を想定した場合、海外から選手や観客を日本に集めるのはリスクが高すぎます。というか、彼らは日本に渡航してこないでしょう。「中止」だと選手があまりにも気の毒ですので、「ロンドンに開催地を変更」でいいではないですか。「日本が30兆円の経済損失」などという声も聞こえますが、この際、金のことなど言っている場合ではありません。だいたい、スポーツの祭典であるオリンピックに参加する選手の健康を損なう可能性があるのは本末転倒ではないですか!

 

政府も東京都も東京五輪『開催不可能宣言』の準備に入るべきではないのか?」というネット記事で、作家・ジャーナリスト・出版プロデューサーの山田順氏はこう述べます。
「日本が目指さなければいけないのは、五輪開催ではない。優先事項は五輪開催より、国民の命、安全を守るための新型コロナウイルスの感染拡大防止だ。これが、最優先課題で、五輪開催は優先課題ではない。この点をメディア報道ははき違えているように思えてならない。 この優先順位がわかれば、いま、日本がしなければならないのは、どれほど感染が拡大しているのか、PCR検査を徹底して、その実態をつかむことだ。五輪開催を優先して、感染者数を少なくしようと検査数を抑えようなどとは、けっしてしてはならない。 そうして、そろそろ準備に入らなければならないのが、東京五輪の自主返上である。自ら期限を決めて『開催不可能宣言』の準備に入ることだ。その準備をしないで、ずるずると時間がすぎ、世界から五輪開催は無理と宣告されたら、これほど屈辱的なことはない。日本と日本人の信用は地に落ちる」
わたしは、山田氏の意見に全面的に賛成です。



最後に、「瀬戸際の2週間」がようやく終わったと思ったら、政府はさらに19日までのイベント自粛を国民に要請しました。ホテル業界も冠婚葬祭業界も大打撃で、経済的にも厳しくなりますが、ここは「天下布礼」の幟を立てて踏ん張ります。ライブハウスやスポーツジムはもちろん、映画館なども閑散としています。6日から公開されている日本映画「Fukushima50」も興行的に苦戦するでしょう。福島第一原発事故の実話を映画化したものですが、公開のタイミングが悪すぎました。わたしもまだ観ていないのですが、東日本大震災の教訓を忘れないためにも、すべての日本人が観るべき映画のような気がします。落ち着いたら、ぜひ鑑賞したいです。

 

2020年3月10日 一条真也