一条真也です。
3日、「西日本新聞」に「令和こころ通信 北九州から」の第15回目が掲載されました。月に2回、本名の佐久間庸和として、「天下布礼」のためのコラムをお届けしています。今回のタイトルは、「『風と共に去りぬ』再鑑賞」。
「西日本新聞」2019年12月3日朝刊
わが社では高齢の方のために無料の映画上映会を行っていますが、この秋から映画史に残る三大名作を上映中です。その名も、「1939年映画祭」。1939年は映画史における奇跡の年でした。西部劇の「駅馬車」、ラブロマンスの「風と共に去りぬ」、そしてミュージカルおよびファンタジー映画の「オズの魔法使い」と各ジャンルで最高傑作というべき3作がほぼ同時に誕生したからです。
この名作中の名作たちが今年で製作80周年を迎えました。この3作を愛してやまないわたしは、紫雲閣や三礼庵といった、わが社のセレモニーホール=コミュニティーセンターの施設数がこのたび80を超えたことを機に「末広がり」の縁で三大名画の80周年を記念した上映会の開催を決めたのです。
ハロウィーンの日には、小倉紫雲閣の大スクリーンで「風と共に去りぬ」が上映された。この作品は、わたしが生まれて初めて観た本格的長編映画であり、わたしにとって不動の歴代ベスト1に輝く名作です。わたしは、小学6年生のときに、この生涯の名作と出合いました。
1975年10月にテレビの「水曜ロードショー」で2週にわたって放映された「風と共に去りぬ」を観たのです。主役のスカーレット・オハラを演じたヴィヴィアン・リーの美しさに子ども心に一目惚れしたわたしは、「将来、この人に似た女性と結婚したい!」と思ったものです。
さて、「水曜ロードショー」では、ヴィヴィアン・リーの吹替えを栗原小巻さんが担当しましたが、ラストシーンの「明日に希望を託して」というセリフが子ども心に深く残りました。原作では"Tomorrow is another day."というセリフですが、放送では「明日に希望を託して」というセリフに変えて、栗原さんが力強く言い放ちました。わたしは非常に感動し、わが座右の銘となったのです。
また、この映画を観ながら、「よく人が死ぬなあ」とも思ったものです。南北戦争で多くの兵士が死に、スカーレットの最初の夫が死に、二人目の夫も死に、親友のメラニーも死ぬ。特に印象的だったのが、スカーレットとレットとの間に生まれた娘ボニーが落馬事故で死んだことです。わたしは「映画というのは、こんな小さな女の子まで死なせるのか」と呆然としました。
その一方、わたしは人生で最初に鑑賞したこの映画によって、「人間とは死ぬものだ」という真実を知ったといえます。それでも、スカーレットは生きる希望を失いません。今回、彼女の生きざまを再鑑賞してみて、「風と共に去りぬ」とは大いなるグリーフケアの物語であったことに気づいた次第です。
小倉紫雲閣の前で
2019年12月3日 一条真也拝