君たちのおかげで喉の渇きは癒えた(アレクサンダー)


一条真也です。
水といえば、アレクサンダーのエピソードが思い浮かびます。
1812年7月にナポレオンの大陸軍がモスクワに向けて進軍し、11月に撤退したあの悲劇の遠征まで、アレクサンダーが1600キロに近いゲドロシア砂漠を越えるのに費やした60日間ほど軍隊が恐ろしい苦難に直面したことはありませんでした。暑い10月の太陽に照らされながら、兵士と将兵が砂漠を進むにつれて、ひどい惨劇が繰り広げられました。


アレクサンダー大王:未完の世界帝国 (「知の再発見」双書)

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蹉跌のない馬などの駄獣の多くは、餌も水もないまま砂漠に倒れました。兵士は死んだ動物を切り刻んで食べました。落伍者はさらに困難な事態に直面しました。本隊の兵士が食料を手にしたころ、彼らのために残されたものは、あっても僅かでしかなかったからです。
しかし、この困難な旅のなかでも、アレクサンダーは兵士たちの心をつかみました。何人かの兵士がなけなしの水を兜に入れて、喉をうるおすようにとアレクサンダーのところに持ってきました。兵士たちは、アレクサンダーが楽をするどころか、軍勢の先頭に立って馬にも乗らずに砂地を徒歩で進んでいることを知っていたのです。


ところが、その貴重なもらった水をアレクサンダーは砂漠に撒きました。そして、「君たちのおかげで喉の渇きは癒えた」と言ったのです。兵士たちが飲めないのであれば、水を飲むつもりはありませんでした。その後、軍全体がすっかり元気を取り戻し、彼が捨てた水がすべての人の喉の渇きを癒したと思われるほどだったといいます。いくらリーダーとはいえ、極限状態で水を捨てるなど、とてもできることではありません。アレクサンダーは「王の中の王」でした。今回の名言は『龍馬とカエサル』(三五館)に登場します。


龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

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*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2017年5月19日 一条真也