ハリスチャンドラ・ガート

一条真也です。
ブログ「ガンジス川」で紹介したように、15日の早朝、わたしたちはガンジス川のボートクルーズを体験しました。まずは、船上から火葬場のハリスチャンドラ・ガートを視察しました。
さらに、有名な火葬場であるマニカルニカー・ガートを訪れました。
「ガート」とは、河に下りるための階段のことです。


船上から見たハリスチャンドラ・ガート



「ハリスチャンドラ」とは人物の名前です。かつて、ガンジス河のほとりを支配したカーストの最下層の王は、いつも人民に気前良く贈り物をしていました。ある者は宮殿を欲しがったので、王は彼に宮殿を与えました。あるとき、妻子を連れたハリスチャンドラという貧しい者が仕事を求めて王のもとを訪ねたので、王はハリスチャンドラに火葬場の仕事を与えました。



不幸にもハリスチャンドラの幼い子どもが亡くなりました。彼の妻が幼な子の亡骸を火葬場に持ってきました。夫であり父であるハリスチャンドラは、「お金を払いなさい」と妻に言いました。悲しいことですが、身内の火葬であれ、彼にとっては仕事だったのです。彼の妻はお金がなかったので、自分のサリーを売って火葬の費用を捻出しました。これを天上から見ていた神様は、哀れなハリスチャンドラを立派な姿に変えました。


一般にカースト制度の存在するインドでは、最下層のカーストのさらに下のアウト・カーストが火葬に携わるとされています。彼らはバンブー(竹)の棒を持って遺体を焼くのです。そのときの燃料はマンゴーの木の薪なのですが、貧しいものは牛糞で焼かれるそうです。


船上から見たハリスチャンドラ・ガートの火



ハリスチャンドラガートは、久美子ハウスのあるパンデーガートから上流にあります。ちょうど今読んでいる遠藤周作の『深い河』(講談社文庫)にも久美子ハウスが登場しています。こちらはメインガートからも遠いです。また小規模であり、観光客は少ないです。



メジャーなのは、やはり圧倒的にマニカルニカー・ガートです。しかしながら、ハリスチャンドラ・ガートは近くのゲストハウスのベランダからも見物できます。ここがメリットだと言えるでしょう。ただし窓を開けたままにしておくと、火葬場から灰が跳んできて、ベッドの上が灰だらけになってしまうとか。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2016年2月16日 一条真也