参院選とカオスの日本

一条真也です。
7月10日、第26回参議院選挙の投開票が行われました。わたしは全日本冠婚葬祭互助会政治連盟の副会長ですので、固唾をのんで選挙の行方を見守りましたが、結果は自民党が単独で改選議席過半数となる63議席を獲得し、大勝。わたしが投票した候補者も当選しました。


7月11日の各紙朝刊

 

憲法改正に前向きな「改憲勢力」の議席は、参議院で、国会発議に必要な3分の2を維持しました。わたしは「改憲は必要」であると考えていますが、いよいよ「時は来た」と感じています。岸田文雄首相は党総裁任期中の改憲実現を表明しましたが、令和6年秋の任期満了までは約2年しかありません。早期に衆参両院の憲法審査会で具体的議論に入り、改憲原案の作成に着手する必要があります。


ヤフーニュースより

 

岸田首相は参院選政権運営に一定の信任を得て、衆院を解散しない限り大型国政選挙のない「黄金の3年」の入り口に立ちました。選挙戦で焦点となった物価高対策など喫緊の課題だけでなく、急逝した安倍元首相が果たせなかった憲法改正を自身の手で実現できるのかに注目が集まります。それにしても、憲法改正を悲願としていた安倍晋三元首相が銃撃されて亡くなるという想定外の出来事が自民党大勝の追い風となった事実は否定できません。投票日の直前に「弔い合戦」の火ぶたが切られたのです。改めて、故人の御冥福をお祈りしたいと思います。

ヤフーニュースより

 

安倍元首相といえば、銃撃した元自衛官・山上徹也容疑者は、その犯行動機として「特定の宗教団体に恨みがあり、その宗教団体と関係がある安倍元首相を狙った」と供述したと報じられました。テレビニュースでも新聞でも、この「宗教団体」の名前を明らかにしませんでした。わたしも大いに違和感をおぼえましたが、その宗教団体の正体を探ろうとする人々がわたしのブログにも大量に入ってきてブログ『日本の新宗教50 パワーランキング』にアクセスが集中するという事態も発生しました。

ヤフーニュースより

 

山上容疑者は「母親が宗教団体の信者で多額の寄付をして破産させられた。宗教団体にのめり込み、恨みがあった。幹部を襲撃しようとしたが、接触が難しかった。宗教団体と安倍元首相がつながっていると思ったから狙った。以前から元首相と宗教団体の関係について、調べていた」と供述したそうですが、選挙後にその宗教団体の名前も一斉に報道されました。これはテレビ局も新聞社も必ず知っていたと思いますので、参院選に影響するので選挙が終わるまでは報道を控えるということだったのでしょう。その宗教団体とは、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)でした。日本でも1990年代に「合同結婚式」などで多く報じられました。韓国に本拠地のある教団です。これまでも日本のメディアでは、その教団と自民党あるいは安倍晋三氏との関係については報じられてきました。

ヤフーニュースより

 

昨年9月、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)が開いた大規模集会に安倍前首相がビデオメッセージを贈り、「総裁はじめ、皆さまに敬意を表します」と演説していたことがわかっています。また、教団の月刊誌の表紙には、安倍元首相の写真が何度も使われていたようです。安倍元首相を銃撃した容疑者の背景には、旧統一教会に洗脳されて破産した母親の恨みがありました。その教団名が銃撃事件のあった8日時点で明らかになっていたら、これは自民党にとっても大スキャンダルであり、選挙結果は大勝どころか逆風が吹いた可能性もあります。その意味で、自民党はマスコミの忖度に救われたわけですが、日頃は自民党に批判的である朝日新聞社毎日新聞社までが同調するとは少々意外でした。

ヤフーニュースより

 

今回の参院選では、日本全体にとって明るいニュースもありました。女性当選者数が30人となり、2016,2019年の28人を超えて過去最多となったのです。今回は、社会党が「マドンナ旋風」を巻き起こした1989年の146人を上回る最多の181人の女性が立候補しました。女性候補者が全体に占める割合も過去最高の33.2%となり、当選者数が焦点になっていました。選挙区では自民党三原じゅん子氏(神奈川)や立憲民主党蓮舫氏(東京)ら、比例代表では自民の片山さつき氏や立民の辻元清美氏、社民党党首の福島瑞穂氏らが当選を決めた。元おニャン子クラブメンバーで話題候補となった自民の生稲晃子氏も東京選挙区で初当選しました。女性議員の増加は日本でSDGsが順調に進行している証であり、素晴らしいことだと思います。

ヤフーニュースより

 

最後に、NHK党から比例代表で出馬していた「ガーシー」ことユーチューバーの東谷義和氏が当選したことには驚きました。出馬会見は海外から生配信で実施。現在もドバイに滞在しているそうで、N党の生配信内でも、会場の立花孝志党首と中継でコメントを寄せていました。(皮肉にも)NHKで当選確実が報じられた後、東谷氏は「本当に疑心暗鬼のまま立花さんに乗せられながら、気づいたらいろんな暴露を全部先に立花さんにされたんですけど。でも立花さんについていって良かったなと思っています。応援してくれた視聴者やフォロワーや、国民のみなさんが押し上げてくれたと思っています。当選して終わりじゃない。ここからがスタート。みんな見といてください。国会で寝てるおっさん議員、全員たたき起こしますから。きっちりやったります。ごめんやけど敬語も使われへんし、関西弁でバリバリいくから。戦々恐々としている方々、覚悟しといて下さい。やっと選挙終わったから。こっからいきますよ。一切引かへんから。立花さん、ケツ拭いてください。議員にしたこと後悔せんといてくださいよ」と挨拶。


わたしは、東谷氏がBTS詐欺事件を起こし、それをユーチューバーのヒカル氏から糾弾されて、自身のユーチューブ動画の配信を開始した頃から注目していましたが、まさか参議院議員になるとは思いませんでした。彼が詐欺事件で逮捕確実となった「絶体絶命」の境地からわずか3ヵ月ちょっとの大逆転劇。「詐欺師が国会議員になるとは!」とか「日本も終わり」といった声もあるでしょうが、(友人の青汁王子とは違って)東谷氏の鋼のメンタル、窮地を乗り切る知恵には感服せざるを得ません。また、わたしはN党を認めていませんが、東谷氏に目をつけて当選にまで漕ぎつけた立花党首の慧眼と行動力にも脱帽です。コロナ禍で苦境にある業種の経営者たちも学ぶ点が多々あるでしょう。それにしても、宗教問題を背景とした安倍氏暗殺からガーシー当選まで、ここ数日の日本は「何でもあり」というか「絶体絶命」というか、まさにカオスの只中にあると感じているのは、わたしだけではありますまい。

 

2022年7月11日 一条真也