グリーフケア論文

一条真也です。
23日、東京に向かいます。
全互協のグリーフケアPT会議に出席するためです。
今回の会議は新型コロナウイルス感染拡大を受けて上智大学側からの出席者はありませんが、Skypeで参加していただく予定です。グリーフケアといえば、上智大学グリーフケア研究所が発行する『グリーフケア』第8号が届きました。

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グリーフケア』第8号の表紙(左)と裏表紙(右) 

 

今回も非常に興味深い論考やデータが満載ですが、わたしの初論文となる「グリーフケアにおける葬送儀礼の意義――儀式従事者からみた実践例報告のための視点――」が、P.43からP.65まで23ページにわたって掲載されています。わたしは本名の佐久間庸和で、上智大学グリーフケア研究所客員教授・株式会社サンレー代表取締役社長として登場しています。苦労して書いた論文ですので、ようやく日の目を見ることができて安心するとともに嬉しく思います。

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グリーフケア』第8号の「目次 」

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わたしの論文が掲載されました

 

ここでその全文を紹介するわけにはいきませんが、「要旨」と「キーワード」は以下の通りです。

要旨:本稿では、葬儀に実際に携わる儀式従事者の立場から実践例を報告する前段階として、グリーフケアに関する先行研究と、葬儀等の儀式の役割を確認した。
結果、葬儀等にはグリーフケアを助ける機能があるため、葬祭業者はこれを明確に意識した事業の展開が必要であると指摘した。一方で葬祭事業者自身によるグリーフケアの体系的な論理構築は進んでいないが、遺族会の運営等を通じた実践経験の蓄積は行われている点を概観し、葬祭事業者はグリーフケアの機能を拡充させるため、消費者ニーズのみに沿うのではない葬儀のあり方を確立させるとともに、グリーフケアにおけるネットワークの構築・儀式従事者の知識の涵養を行うべきであるとの結論を得た。

キーワード:儀式、遺族ケア、家族ケア、
      自助グループ、実践例

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23ページにわたって掲載されています 

 

「要旨」と「キーワード」の英文表記は以下の通りです。

[Abstract ]

In this paper, we confirmed the role of rituals such as funerals and reviewed previous res earch on grief care as a preliminary step to reporting practical examples from the position of funeral companies actually engaged in funerals.

The results showed that funerals have a function to help grief care, so the undertakers pointed out that they should develop an awareness of this. On the other hand, although the systematic logic of grief care offered by the funeral service providers itself is not progressing, the overview of the fact that practical experience is accumulated through the management of bereaved members of society, etc., and funeral service companies expands the function of the their work of grief care.

In order to make this happen, the business should not only provide funerals that meet consumer needs , but should establish grief care networks and cultivate the knowledge of funeral workers.

Key word: ceremony, bereavement care, family care,
                 selfhelp group, practice examples

f:id:shins2m:20200321140807j:plainサンレーの実践例も紹介しました

 

わたしは、これまで100冊近くの著書を含む大量の文章を書いてきましたが、いわゆる論文スタイルの文章というのは書いたことがありません。それで『グリーフケア』のバックナンバーを熟読し、論文スタイルを学んだのですが、けっこう苦労しました。それでも、この論文を読まれた、「京都の美学者」こと秋丸知貴氏から感想メールが届きました。グリーフケアとアートの問題を専攻している滋賀医科大学非常勤講師の秋丸氏は、「前半部分のオーソドックスな研究史的記述は学術論文として非の打ちどころのない完璧な構成で、後半部分は正に一条先生だからこそ書ける実感的・実践的な具体的解説だと思いました。髙木慶子先生、島薗進先生、鎌田東二先生を始めとする上智大学グリーフケア研究所の重要な研究を網羅された上で、他にも細かい文献まで目配り良く詳細かつ的確に引用されているところに極めて強い感銘を受けました」との過分な評価を寄せて下さいました。恐縮です!

 

2020年3月23日 一条真也拝