一条真也です。霜月晦日の日曜日の夕方、大きな話題となっているアメリカのホラー映画「WEAPONS/ウェポンズ」をユナイテッドシネマなかま16で観ました。想像以上に不気味で怖ろしいホラー映画でした。今年も残り1ヵ月となりましたが、超弩級の恐怖を味わえました。傑作です。
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「ある町で起きた奇妙な集団失踪事件の謎を描くホラー。ある日の深夜2時17分、特定のクラスの子供たち17人が同時に姿を消して以降、町で不可解な出来事が多発する。メガホンを取ったのは『バーバリアン』などのザック・クレッガー。キャストには『ボーダーライン』シリーズなどのジョシュ・ブローリン、『ロイヤルホテル』などのジュリア・ガーナー、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』などのオールデン・エアエンライクのほか、オースティン・エイブラムズ、エイミー・マディガンらが名を連ねる」

ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「静かな郊外の町。ある水曜日の深夜2時17分、突如17人の子供たちが家を飛び出し、そのまま消息を絶つ。行方不明になったのは、ある学校の1クラスの生徒たちだけだった。なぜ彼らだけが姿を消したのか、謎めいた集団失踪について疑惑の目を向けられた担任教師・ガンディは事件の真相を解明しようとするが、周囲で不可解な出来事が相次ぎ、やがて町全体が狂い始める」
全米で大ヒットを記録した「WEAPONS/ウェポンズ」は、1981年生まれで44歳のザック・クレッガー監督の長編2作目です。1作目は、2022年の「バーバリアン」。民泊を利用した女性が恐ろしい事態に巻き込まれていく姿を予測不可能な展開で描いたホラー映画です。仕事の面接を受けるためデトロイトにやって来た女性テス(ジョージナ・キャンベル)は、ネット予約した宿泊先の民家に到着するが、そこには既にキース(ビル・スカルスガルド)という男性が滞在しており、手違いでダブルブッキングされていたことが判明します。嵐の中、他に行く当ても見つからないテスは、キースとともにそこに宿泊することを決めます。翌日、トイレットペーパーを探しに地下室へ下りた彼女は、そこで謎の扉を発見するのでした。
「バーバリアン」に続くザック・クレッガー監督の長編ホラー映画「WEAPONS/ウェポンズ」ですが、物語の肝である17人の子供たちの失踪(疾走)シーンがいきなり登場します。日本人ならば「アラレちゃん走り」とか「ナルト走り」と呼びたくなる同じポーズで夜の暗闇の中へ消えてゆきく子供たちは不気味なことこの上ないです。しかし、BGMなどはわりと明るく、どこかユーモラスな印象さえありました。なぜ、同じクラスの子供たちが深夜2時17分にベッドから起き出し、家を飛び出していったのか? この謎が複数の登場人物の視点から考察され、解き明かされていきます。
消えた17人の子供たちの担任だったのは、ジャスティン・ギャンディという若い女性教師で、ジュリア・ガーナーが演じました。ブログ「アシスタント」、ブログ「ロイヤルホテル」、ブログ「ウルフマン」で紹介した映画でヒロインを演じていましたが、演技力には定評があります。現在31歳の彼女ですが、すでに大女優の貫禄がありますね。ガーナーが演じたギャンディは、子供たちの集団失踪事件に関わっているのではないかと真っ先に疑われます。何も知らないのに説明や監督責任を問われ、緊急集会では子どもたちの親から集中攻撃を浴びて命の危険すら感じます。そのときマーカス校長が助けてくれるのですが、その校長先生もその後とんでもない姿となります。非常にショッキングな場面でした。
キャンディを非難した父兄たちの中には、息子が失踪したアーチャーという男性がいました。ジョシュ・ブローリンが演じていますが、この彼は父兄たちの中で最も熱心に事件を究明しようとします。各家庭の防犯カメラまでチェックし、子供たちが走り合った方向まで特定。もう警察なんかお呼びじゃないほどの捜査を展開するのです。そんなアーチャーは、ガソリンスタンドで給油していたギャンディを見つけ、彼女を問い詰めます。そのとき、ギャンディをめがけてとんでもない物体が向かってきて、間にいたアーチャーは弾き飛ばされるのでした。その後も怒涛のラストシーンまでアーチャーという「あきらめない親父」の闘いは続きます。
17人の子供たちが消えて時間が経過し、犯人逮捕のための情報提供者には多額の賞金が掛けられました。そのとき、ジェームズという浮浪者が事件に関わる重大な事実を知ります。彼は窃盗を繰り返しながら小銭を稼ぐ、テント暮らしのホームレスです。空き巣に入ろうとしているところを警察官ポールに見られて追いかけられたりする男なのですが、集団失踪事件の賞金目当てに町をうろつくうちに、あるモノを偶然目撃。それをポールに告白する羽目になるのですが、事件のカギを握ると思われる問題の屋敷に踏み込んだポールも闇の世界に巻き込まれていくのでした。
映画「WEAPONS/ウェポンズ」は「これは本当にあった話なんだけど・・・・・・」という少年の語りから幕を開けます。アメリカの静かな郊外の街。なんの変哲もない小学校の、なんの変哲もないクラスの生徒たちが、ある夜いっせいにいなくなってしまう。当然ながら、観客は「なぜ?」と思います。この「なぜ?」は次第に複数の疑問となっていき、さまざまな人々の視点によって、あらゆる伏線が一気に回収されていきます。それは一種のカタルシスでしたが、「なぜ?」の答えは本当に想像を絶するものでした。
子供たちの担任教師ギャンディは町の人々から憎まれ、彼女の車には「WITCH(魔女)」と落書きされてしまいます。もちろん彼女は魔女ではありませんが、ネタバレ覚悟でいうと、この映画には本物の魔女が登場します。そして彼女は「類感呪術」と呼ばれるものを使います。文化人類学者のジェームズ・フレイザーが定義した、人類学における呪術の性質を表す言葉です。類似したもの同士は互いに影響しあうという発想(「類似の法則」)に則った呪術で、広くさまざまな文化圏で類感呪術の応用が見られます。フレイザーは、大著『金枝篇』で、呪術の要素は、この類感呪術と感染呪術の2つに分類できると述べています。
映画「WEAPONS/ウェポンズ」で子供たちが消えた衝撃の真相を知り、わたしは「かの『ハーメルンの笛吹き男』の事件にも、同じような秘密があったのでは?」と思いました。1284年、ハーメルンの町にはネズミが大繁殖し、人々を悩ませていました。1人の笛吹き男がネズミ退治に成功しますが、ハーメルンの人々は約束を反故にして報酬を払いませんでした。怒った笛吹き男が深夜に笛を吹くと、家から子供たちが出てきて広場へ集まりました。そして130人もの少年少女は笛吹き男の後に続いて町の外に出て市外の山腹にある洞穴の中に入っていき、洞穴は内側から岩で塞がれ、笛吹き男も子供たちも、二度と戻ってこなかったといいます。おそらく、「WEAPONS/ウェポンズ」の制作陣は「現代の『ハーメルンの笛吹き男』を作ろう」と考えたのではないでしょうか? わたしは間違いないと思います。
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2025年12月1日 一条真也
