「はたらく細胞」

一条真也です。
年末休み初日の28日、ブログ「私にふさわしいホテル」で紹介した日本映画に続いて、日本映画はたらく細胞を小倉コロナワールドシネマで観ました。初体験の4DX/2D上映でしたが、テーマパークのアトラクションみたいで迫力満点でしたね。今年観た160本目の作品です。この後、一条賞(映画篇)の選考に入ります!

 

ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
清水茜のコミック『はたらく細胞』に加えて、清水と原田重光、初嘉屋一生による同作品のスピンオフ『はたらく細胞BLACK』を実写化したドラマ。生活習慣や体内環境が正反対の親子と、それぞれの体内で病原体の侵入を防ごうとする細胞たちの姿を描く。監督は『翔んで埼玉』シリーズなどの武内英樹。『マイ・ブロークン・マリコ』などの永野芽郁、『るろうに剣心』シリーズなどの佐藤健のほか、『メタモルフォーゼの縁側』などの芦田愛菜、『アイ・アム まきもと』などの阿部サダヲらが出演する」

 

ヤフーの「あらすじ」は、「酸素を運ぶ赤血球(永野芽郁)や細菌と戦う白血球(佐藤健)など、37兆個もの細胞が人間の体内で休むことなく働き、その健康と命を守っている。だが、不規則で不摂生な日々を過ごす漆崎茂(阿部サダヲ)の体内では、劣悪な体内環境に疲弊した細胞たちが文句を言いながら働き、規則正しい生活習慣を身につけて高校生活を送る茂の娘・日胡(芦田愛菜)の体内にいる細胞たちは楽しく働いていた」となっています。

 

じつは、この映画、存在は知っていたのですが、あまり観たいという気は起りませんでした。同時期に公開されている「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」もそうなのですが、いかにも「お子さま向け映画」という印象があったからです。でも、上映開始時間が「私にふさわしいホテル」の終了直後で時間帯が良かったため、鑑賞を決意。実際に子ども観客が多かったですが、大人でも楽しめるエンターテインメント大作でした。子どもといえば、血小板の役を幼稚園児ぐらいの女児たちが演じていましたが、もう、この世のものとは思えないほど可愛かったですね!

この日は「4DX」で鑑賞しました!

 

上映された小倉コロナワールドシネマのシアター1は、4DX用の劇場です。コロナワールドシネマの公式HPによれば、「それは、世界が認めた新しい映画館のカタチ」だそうです。4DXとは、3Dのその先「体感型(4D)」を演出するための最新劇場上映システム。座席が作品中のシーンと完璧にリンクし、前後上下左右へ稼働。また、風、水(ミスト)、香り、煙りなど、各種演出も体感できるアトラクション効果も搭載しています。また、4DX専用作品ではなく一般公開されている映画作品で、4DXの環境効果で体感できることも特徴。観客のあらゆる感覚を刺激するそうですが、水族館のシーンでは本物の水が飛び出して顔が濡れました。

 

4DXで水が飛び出した水族館のシーンとは、芦田愛菜案じる女子高生の日胡が憧れの先輩と初デートを楽しむ場面です。初恋に心をときめかせる日胡の様子は、ブログ「星の子」で紹介した2020年公開の芦田愛菜の主演映画を思い出しました。今回の「はたらく細胞」の主演は芦田愛菜ではなく、永野芽衣です。ところで、わたしは重大なことを発見しました。芦田愛菜と永野芽衣の顔立ちがよく似ているのです。特に鼻が似ています。2人も有名人なので、わたしたち日本人は2人を間違えることはないでしょうが、外国人などは見間違える可能性があるのでは? この映画は海外でも受けると思いますが、かなりの数の観客が「日胡と赤血球の1人2役」と錯覚すると思います。

 

日胡の父親である茂を演じたのが阿部サダヲです。彼と芦田愛菜は2011年のフジテレビ系のドラマ「マルモのおきて」でW主演しています。同作は、阿部が演じる30代の独身サラリーマンで主人公の高木護が、亡くなった親友の忘れ形見である幼い双子を引き取り、懸命に育てながらも共に生きる姿を描く物語です。「マルモのおきて」の護がそのまま年齢を重ねたような「はたらく細胞の茂ですが、生活があまりにも不摂生で身体を壊します。彼はトラックを運転中に便意を催すのですが、そのとき体内で起こっているドラマは抱腹絶倒でした。この日、4DXには匂いを感じませんでしたが、排便のシーンで匂いがしなくて本当に良かったです。(笑)

 

永野芽衣芦田愛菜阿部サダヲ以外にも、映画「はたらく細胞」には豪華キャストが多数出演しています。白血球役の佐藤健も熱演でした。彼はアクション・シーンが多かったので、どうしても映画るろうに剣心シリーズの緋村剣心を連想してしまいましたね。その他、キラーT細胞を演じた山本耕史は筋肉ムキムキのマッチョ野郎でした。NK細胞を演じた仲里依紗はSMの女王様みたいなコスチュームでドキッとしましたね。マクロファージ役の松本若菜はすごく綺麗で、「こんな美人だったんだ!」と感心しました。あとは、ヘルパーT細胞の染谷将太、肝細胞の深田恭、肺炎球菌の片岡愛之助も印象的でしたが、何よりも茂の外肛門括約筋を演じた一ノ瀬ワタルが最高でした!

 

人間の体内での出来事を映像化した作品といえば、アメリカのSF映画ミクロの決死圏(1966年)が有名です。現代は、”Fantastic Voyage”で、監督はリチャード・フライシャー。この作品は、1966年度アカデミー賞2部門受賞(特殊視覚効果賞/美術監督・装置賞)しています。脳内出血の重症を負った科学者の命を救うため、想像もつかない治療法が試みられるという物語です。外科手術不可能と診断されたその患部に、手術担当員を細菌大に縮小して送りこみ、体の内側から手術しようというのです。制限時間は1時間、果たして作戦は成功するのか? 1960年代にはSF映画の名作が多く作られましたが、宇宙船で大宇宙に飛び出してゆく「2001年宇宙の旅」(1968年)や猿の惑星(1968年)といったSF超大作とは正反対で、人間の体内という内宇宙=インナースペースでの冒険を描いたスリリングなSFサスペンスでした。わたしの好きな作品です。

 

また、人体の内部を擬人化したという点では、ブログ「インサイド・ヘッド」で紹介した2015年のディズニー&ピクサーの名作アニメを連想しました。11歳の少女の頭の中を舞台に、喜び、怒り、嫌悪、恐れ、悲しみといった感情がそれぞれキャラクターとなり、物語を繰り広げるアニメです。田舎から都会への引っ越しで環境が変化した少女の頭の中で起こる、感情を表すキャラクターたちの混乱やぶつかり合いなどを描きます。メガホンを取ったのは、「モンスターズ・インク」や「カールじいさんの空飛ぶ家」などの監督ピート・ドクター。成長という普遍的なテーマと子供の頭の内部という独創的で柔軟な世界が混じり合う、個性的な物語で、非常に感動しました。

 

ディズニー&ピクサーの名作といえば、ブログ「マイ・エレメント」で紹介したアニメ映画も連想。火・水・土・風といったエレメント(元素)たちが暮らす世界を描くアニメです。異なる特性のエレメントとは関われないというルールがある街を舞台に、火のエレメントである少女と、水のエレメントである青年の出会いを描きます。火の街で暮らす少女・エンバーは街から出ることなく、父親の店を継いで家族の期待に応えようと奮闘していました。ある日、熱くなりやすい自分とは真逆の、水のエレメントの青年・ウェイドと出会います。彼と過ごすうちに世界の広さに触れたエンバーは、自分の新たな可能性について考え始め、知らない世界への興味を募らせていくのでした。

 

「マイ・エレメント」は、火と水の結びつきという陰陽和合の物語でした。「はたらく細胞」で、永野芽衣演じる赤血球が佐藤健演じる白血球に淡い憧れの想いを抱き、立場の異なる両者が助け合い、支え合う姿を見て、わたしはエンバーとウェイドの関係を連想しました。火と水、赤血球と白血球、どちらも正反対の存在であり、普通は相容れません。ましてや、両者が心惹かれ結ばれるなど論外です。しかし、『ロミオとジュリエット』の物語を見てもわかるように、禁じられた関係の2人の恋の炎ほど燃え上がるものはないことは古今東西の常識でもあります。考えてみれば、男と女だって正反対の存在です。でも両者が合体すれば、そこに「産霊(むすび)」が実現し、「息子(むすこ)」や「娘(むすめ)」が生まれるのです。

 

最後に、わたしはこの映画を会社経営者をはじめとしたビジネスマンに観てほしいです。なぜなら、この映画はマネジメントや組織論を考える上でのヒントが描かれているからです。すなわち、この映画に登場する細胞たちは「自分は何のために存在しているか」「自分は何をすべきか」を明確に理解しているのです。経営学ピーター・ドラッカーは、「3人の石切り工」の話をしました。ある人が、教会建設のための石を切っている3人の男に「何をしているのですか」と聞きました。1人目の男は「暮らしを立てている」と答え、2人目の男は「石切りの仕事をしている」と答え、3人目の男は「教会を建てている」と答えました。拙著最短で一流のビジネスマンになる!ドラッカー思考フォレスト出版)で紹介したエピソードです。

最短で一流のビジネスマンになる!ドラッカー思考

 

ドラッカーが語った第1の男は、仕事で何を得ようとしているかを知っており、事実それを得ています。1日の報酬に対し、1日の仕事をします。でも、彼は管理職ではありませんし、将来もなれません。問題は第2の男です。熟練した専門能力は不可欠です。たしかに組織は、最高の技術を要求しなければ2流の存在になってしまいます。しかしスペシャリストは、単に石を磨き脚注を集めているにすぎなくとも、重大なことをしていると錯覚しがちです。専門能力の重要性は強調しなければなりませんが、それは全体のニーズとの関連においてでなければなりません。成長し、自己啓発する者とは、「教会を建てている」と言える人間なのです。映画「はたらく細胞」で擬人化されているすべてのキャラクターたちは「人間を生かす」という目的を理解していることに感心しました。

 

2024年12月29日  一条真也