長崎原爆の日

一条真也です。
8月9日は「長崎原爆の日」です。
詳しくはブログ「小倉に落ちるはずの原爆」をお読みいただきたいと思いますが、今日は、わたしにとって1年のうちでも最も重要な日です。原爆投下時間である11時02分に、サンレー本社の社長室で黙祷いたします。

2023年8月9日の各紙朝刊

 

長崎原爆といえば、ブログ「母と暮せば」で紹介した映画を思い出します。名匠・山田洋次監督が、原爆で亡くなった家族が亡霊となって舞い戻る姿を描いた人間ドラマ。ジェントルゴースト(優霊)ストーリーの名作でした。



「母と暮らせば」は、原爆で壊滅的な被害を受けた長崎を舞台に、この世とあの世の人間が織り成す不思議な物語を映し出した作品です。主人公の母親を名女優吉永小百合が演じました。2015年12月12日に公開されましたが、戦後70年という「死者を想う」年の締めくくりにふさわしい名作であると思いました。


昨年の「広島原爆の日」に当たる2022年8月6日に、ブログ「長崎の郵便配達」で紹介したドキュメンタリー映画を観ました。元イギリス空軍所属のピーター・タウンゼントさんは、後にジャーナリストとなり長崎を訪れます。彼はそこで、16歳のときに郵便配達中に被爆核廃絶のための運動に生涯を捧げてきた谷口稜曄さんと出会います。1984年に谷口さんへの取材をまとめたノンフィクション『ナガサキの郵便配達』を出版。2018年8月、ピーターさんの娘であるイザベル・タウンゼントさんが長崎を訪問し、父親の本に登場する場所をめぐる映画です。

 

映画といえば、現在、アメリカをはじめとした世界各国ではクリストファー・ノーラン監督の最新作オッペンハイマーが公開中です。日本では公開されていません。科学者の伝記映画としては例外的な大ヒットとなっているそうです。内容は、アメリカ陸軍による原子爆弾開発計画「マンハッタン・プロジェクト」のリーダーを務めた物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描いたものです。「マンハッタン・プロジェクト」を中心に据え、特に試作された核弾頭「トリニティ」の臨界実験を映像的なクライマックスに据えているといいます。原爆というのは世界史上で2回しか使われていません。その土地は日本の広島と長崎です。ですから、被爆国である日本の人々は、当事者として、映画「オッペンハイマー」をどこの国の国民よりも早く観る権利、また評価する権利があると思います。


実際、わたしは「オッペンハイマー」が日米同時公開されるとばかり思っていました。それが、日本だけ非公開で、現在も公開が決定していないのは何故なのか。この映画で、原爆開発の倫理的責任はどう描かれているのか。試作弾頭「トリニティ」の臨界実験の描写は凝りに凝ったCGと音響で圧倒的なインパクトが強いそうですが、それが、原爆の恐怖を表現しているのか、それとも開発成功を称える高揚シーンになっているのか。さらには、広島・長崎の惨状はどう描かれているのか。本当は、「広島原爆の日」である8月6日までには公開されているべきでした。1日も早い「オッペンハイマー」の日本公開を切に希望します。

 

その「オッペンハイマー」と7月21日にアメリカで同時公開された映画が、バービー人形を題材にした「バービー」です。この2作を二本立てで見ることがブームになり、ファン達が関連画像をSNSに投稿。その画像は、バービー役の女優マーゴット・ロビーの髪型に原爆を連想させるキノコ雲が合成されています。さらに、爆発を背景に2作品の登場人物が合成された画像もあります。 日本人には見過ごせない画像ですが、さらに問題なのがバービーの公式アカウントが「忘れられない夏になりそうですね」とハートマークをつけて投稿した点です。また、キノコ雲の画像にもウインクのマークをつけて返信しています。公式が好意的に受け止めているかのような返信に見えます。アメリカの一部の人々がいまだに「原爆は栄光の兵器」「ウィニング・ウェポン」という考え方があることを知り、呆然としました。岸田首相が開催した「広島G7」はいったい何だったのでしょうか?

西日本・毎日・読売・朝日新聞8月9日朝刊広告

 

長崎原爆の日、わが社では毎年、「昭和20年8月9日 小倉に落ちるはずだった原爆。」というキャッチコピーで「西日本」「毎日」「読売」「朝日」の各紙に広告を掲載しています。もう20年以上も広告掲載を続けているせいか、ようやく北九州でも歴史上の事実が知れ渡ってきました。新聞広告は、満月のイラストをバックに「鎮魂」と大きく書かれ、「昭和20年8月9日−−小倉に落ちるはずだった原爆。」と続き、「平和への願いを込めて、長崎に祈りを」として、こう書かれています。
「それは78年前のこと。昭和20年8月9日、長崎に第2の原子爆弾が投下されました。広島に人類最初の爆弾が落とされた3日後のことです。長崎型原爆・ファットマンは8月6日にテニアン島で組み立てられました。そして、8月8日にアメリカ陸軍在グアム第20航空軍司令部野戦命令17号において、小倉を第1目標に、長崎を第2目標にして、8月9日に投下する指令がなされました。8月9日に、ソ連が日本に宣戦布告。この日の小倉上空は前日の八幡爆撃による煙やモヤがたち込めていたため投下を断念。第2目標であった長崎に、同日の午前11時2分、原爆が投下されました。小倉の軍需工場が爆弾投下の第1目標であったことを、皆さんはご存知でしたか。長崎ではこの原爆によって74000人もの尊い生命が奪われ75000人にも及ぶ人々が傷つき、現在でも多くの被爆者の方々が苦しんでいます。もし、この原爆が小倉に投下されていたら、あなたの家族や知りあいの方々が命を失い、あるいは大きな痛手を受けたことでしょう。もしかすると、この文章を読んでいるあなたは、この世に存在していなかったかもしれません。絶対に戦争の悲惨さを風化させないためにも、私共は原爆の犠牲になられた方々へのご冥福を祈るとともに、恒久平和への祈りを捧げていきたいと思います。古来、世界各地で月はあの世に見立てられていました。夜空に浮ぶ月を見上げて手を合わせ、亡くなられた方々を想ってみてはいかがでしょうか。私たちは、『人間の尊厳』を見つめながら、全国各地で真心を込めて、鎮魂と慰 霊のお手伝いをさせていただきたいと願っております。 株式会社サンレー代表取締役社長  佐久間庸和

 

また、拙著『供養には意味がある』(産経新聞出版)のプレゼント告知も行いました。同書は、日本の供養の簡素化が進む中、忘れてはいけない大切なもの。日本人はどのように故人を追悼し、供養してきたのか。そこにはどのような意味があるのかを考えた本です。抽選で30名様に進呈します。ハガキでご応募下さい!
<応募方法>
郵便ハガキに郵便番号・住所・氏名・電話番号・書籍名をご記入の上、下記宛へお送り下さい。当選者の発表は商品の発送をもって代えさせていただきます。
〒802-0022
北九州市小倉北区上富野3-2-8
サンレー「鎮魂」書籍プレゼント 係
2023年8月19日(金)消印有効

 

9月28日(木)18時からサンレーグランドホテルで行われる「月への送魂」のセレモニーの案内もさせていただきました。ぜひ、今年も多くの方々にご参集いただき、月を見上げてなつかしい故人を偲んでほしいと思います。死者を忘れて、生者の幸福など絶対にありません。


さて、長崎といえば、名曲「長崎は今日も雨だった」を連想します。内山田洋とクールファイブのメインボーカルだった前川清さんは、あの桑田佳祐さんが「日本一のブルース・シンガー」と絶賛した歌手です。現在、わが社のイメージキャラクターを務めていただいています。そのきっかけは、わが社が長崎原爆の追悼広告を出稿し続けていることを知り、長崎出身の前川さんが感動して下さったことでした。奇しくも、長崎への原爆投下から77年目の日、前川さんから素敵なプレゼントが届きました。「長崎は今日も豆だった」という豆菓子です。嬉しかったです。美味しくいただきました。最後に、長崎の原爆で亡くなられた方々の御冥福を心よりお祈りいたします。合掌。

豆菓子をいただきました!


前川さん、ありがとうございます!

 

2023年8月9日 一条真也