Share金沢ツアー

一条真也です。
金沢に来ています。30日の金沢は早朝の気温は6度くらいで寒かったですが、そこから気温が上昇して日中は20度近くにまでなりました。ブログ「Share金沢」で紹介した施設を再訪問、視察ツアーをお願いしました。ツアーの最小実施人数が8名ということで、北九州からも関連する部署の責任者が集まりました。なお、先方のご希望でネクタイは外しています。

Share金沢にやって来ました!


総勢8名で訪れました

 

2月2日、石川県の金沢市を訪れたわたしは、総合ウェルビーイング施設である「Share金沢」という総合ウェルビーイング施設を訪問・見学しました。金沢駅前の中心地から南東へ車で30分弱、郊外の静かな住宅街の中にShare金沢(総面積約11000坪)があります。ここは、高齢者、大学生、病気の人、障害のある人、分け隔てなく誰もが、共に手を携え、家族や仲間、社会に貢献できる街です。かつてあった良き地域コミュニティを再生させる街です。いろんな人とのつながりを大切にしながら、主体性をもって地域社会づくりに参加します。わが社が追求している互助共生社会やコンパッション都市の雛形を見た思いがしました。今回は2度目の訪問ですが、まずは施設内の食堂で昼食をいただきました。


Share金沢の本部

食堂に隣接した物産コーナー


昼食に天丼&蕎麦をいただきました


美味しく昼食をいただきました

 

この日のランチは、天丼と蕎麦でした。蕎麦は、なんと、ブータンのものだそうです。想像以上に美味しかったので、驚きました。天丼もミニサイズながら、濃い味付けの甘ダレで美味でした。昼食後、12時半からShare金沢の施設長である清水愛美さんの御案内で、広大な施設内を視察しました。アルパカ牧場、ドッグラン施設、高齢者サービス住宅、学生住宅、ガイア自然学校、若松共同売店などを順次視察しました。ところどころ咲いている満開の桜がとても綺麗でした。視察後は、清水施設長のセミナーを受講し、質疑応答の時間もあって、Share金沢をよく理解することができました。


ツアーのようす


この日の金沢の気温は20度

 

以下は、ツアーに同行したサンレー企画開発部施設推進課の矢野貴大課長のレポートを引用したいと思います。まず、この施設は「私がつくる町」をコンセプトに高齢者用住宅・障害児施設・学生向け住宅などが「ごちゃまぜ」となった町です。ここでの「私」とは、Share金沢に関わる全ての人のことを指しており、一人一人がこの町のために自発的に活動する町を目指しています。例えば、敷地内の草刈り大会を企画したり、ハロウィンイベントやお茶会の開催、また入浴施設(地域の方は無料で入浴可)も併設しており、無料で入浴されている方々が年末の浴槽の大掃除をお手伝いしたりと、自然と個人のつながりが増えていく施設となっておりました。この施設を運営する社会福祉法人佛子園は、もともとは金沢市に隣接する白山市の行善寺で戦災孤児の保育施設を作ったのが始まりでした。その後、星が岡牧場などの多くの施設を運営していきますが、その中の障害児入居施設の建替工事の際に現在の敷地が入札に出ていることを知り、新たな土地での船出となったそうです。


サービス付き高齢者向け住宅


サービス付き高齢者住宅の内部


ライブラリーには児童書もありました

 

サービス付き高齢者向け住宅は、32室(4室平屋建て4棟、8室2階建て2棟)です。それぞれの間取りは1LDKとなっており、それに加えて4室ごとに共有のリビングキッチンがあります。人が交わる工夫がされていると感じました。リビングには入居者がそれぞれ持ち寄った蔵書からなるライブラリーがありました。その中には『原色 日本の美術』といった美術全集をはじめ、『メアリー・ポピンズ』や『ロビンソン・クルーソー』といった児童書も置かれていました。そういえば、渡辺淳一の『失楽園』もありましたね。(笑)1級建築士である矢野課長は、「私としては、高齢者施設とはいえマンションのような建物だと病院のようで息が詰まりそうに感じるので、こういった建物に入居してもらうことは非常に好ましく感じました」とレポートに書いていました。


障害児入居施設

 

障害児入所施設(定員30名)もありました。入居児童年齢は5歳~18歳、障害のため、親とうまくいっていないお子さんなどが入居しています。施設は18歳で卒業になるのですが、卒業する児童の就職先の斡旋などの支援も行っているようです。小規模グループケアで人と交流できる仕組みとなっていました。


学生向け住宅


トレーラーハウス(現在は、DOGショップ)

 

学生向け住宅は、1K住戸(30000円/月)6戸、トレーラーハウス(40000円/月)2戸です。金沢大学などの近隣にある大学の学生のため、格安で住宅を貸し出しています。賃貸料が安い代わりに、学生は月30時間以上のボランティアに協力する条件となっています。また、金沢美術工芸大学の学生にはアトリエとしてトレーラーハウスを貸し出しています。入居する学生は、併設する入浴施設の鍵の管理や敷地内にある売店でのアルバイト、美術工芸大学の生徒の中には水彩画教室を開催するなどのボランティア活動が行われているようです。


レンタルサイクルの案内


外から見た天然温泉


中から見た天然温泉の入口


レンタルギャラリー

 

天然温泉は周辺住民をShare金沢に誘い込む目玉となっており、また学生も普段から利用することにより、多世代交流の場としても活用されていました。施設スタッフが詰めるオフィスや食事処も併設しており、「SHARE金沢」の入居者・スタッフ・近所の人が分け隔てなく交流できる建物となっておりました。建物内には共用のギャラリーがあり、発表の場となることで皆さんのやりがい・生きがいを引き出しているようでした。また、地域の農産物の販売所やレンタサイクルのサービスもありました。矢野課長は、「個人的には運動と温泉は相性がいいと思いますので、レンタサイクルのサービスは『日王の湯』でも活用できるのでは、と感じました」と書いています。


ドッグラン施設


アルパカ牧場


アルパカに興味を抱いた人


ウクレレ教室


テナント(LIVE演奏のできるカフェバー)



Share金沢では、近隣住民の要望を受けてドッグランを設置したり、バス停に屋根を付けて敷地内に引き込んだりということもしていました。また、別の施設で飼育していたアルパカを敷地で飼うことで、アルパカが施設のマスコットとして住民を一体化する一翼を担っていました。Share金沢の施設内に入ってもらっているテナントには、無料で建物を貸しているそうです。テナントは施設のコンセプトに合う事業者に声をかけて入ってもらっています。LIVE演奏のできるカフェバーもあり、各種のLIVEも開催されています。

視察は続くよ・・・


満開の桜がたくさん・・・


敷地内の小道


ホタルの幼虫を放しています

 

Share金沢では、同施設のコンセプトである「ごちゃまぜ」の工夫が各所に見られました。Share金沢で目指したものは、いろんな施設のサンドイッチだそうです。しかし、金沢市に施設の説明を行った際に、「敷地内に高齢者施設と障害者施設を併設できない。」と言われたそうです。一緒にするのならば高齢者用と障害者用の通路を分けて、2本作るように指導を受けたそうです。そこで国に相談したところ、様々な条件の緩和を取り付けたとのことでした。また、敷地内の小径はあえてすれ違うのにお互いを意識しないといけない幅として、人との交流を生む場としているそうです。また、最近小径横を流れる小川に蛍の幼虫を放流したそうで、清水施設長は「夏の夜に蛍の光が舞う様子を見るのが楽しみだ」と語られていました。


コインランドリー


若松共同売店


ガイア自然学校

 

また、学生向け住宅はあえて風呂や洗濯機を設置しないことで、入浴施設やコインランドリーに足を向けさせる工夫もなされていました。以前、新たな障害児入所施設を新築する時にイベントをしたそうなのですが、いざ新築する時になるとイベント参加者の中にはコンセプトはいいけど、うちの近所には建築してほしくないとの声が多く上がったそうです。イベントだけでは個人はわからないため、普段からの交流で関係性をはぐくんでいきたいというのがこの施設設立の動機になったようです。「私がつくる街」という言葉を運営コンセプトの象徴的な施設が「若松共同売店」と名付けられたショップです。ここはサービス付き高齢者向け住宅の住民を中心に仕入れから販売までの運営を行っています。


説明する清水施設長


熱心に聴く人びと


質疑応答のようす


ごちゃまぜのコンパッション都市!



この施設では①入居者、②職員スタッフ、③その他の人々(近隣住民・テナントのスタッフ等)というトライアングルの関係性が良好にはぐくまれています。例えば、ある不登校生徒で釣りが大好きなので釣りをしたいが、職員スタッフの中には釣りを趣味にする人がいなかったそうです。そこで今では敷地に入っているテナントの従業員と釣り友達になって、よく一緒に釣りに行くのだと話していました。また、サ高住に入居のご婦人は子供たちに大人気で、いつも子供たち遊びに誘いに来るそうです。

 

 

今回、視察の前に1冊の本を渡されていました。『ソーシャルイノベーション』(ダイヤモンド社)という本です。竹本鉄雄(著、編集)、雄谷良成(監修)ですが、アマゾンの内容紹介には、「佛子園は1960年に発足した社会福祉法人で、知的障害児の入所施設としてスタートした。95年からは知的障害者の更生施設の運営にも乗り出し、98年には障害者就労施設として奥能登地ビールレストランを開設。地元福祉関係者や行政の間ではよく知られる存在だった。その名が全国区に躍り出たのは、2013年9月に金沢市郊外にオープンした『シェア金沢』がきっかけだった。監修者である雄谷理事長は、周辺地域住民が集まる福祉の町づくりを志向し、約1万坪の敷地にサ高住、障害児入所施設、訪問介護施設などのほか、天然温泉やキッチンスタジオなど周辺地域から人を呼び寄せる多様な施設を『ごちゃまぜ』をコンセプトに集積。高齢者、障害児、地域の人々が交流するコミュニティを形成した。『シェア金沢』は、地方創生を推進する政府にも注目され、日本版CCRC(生涯活躍のまち)のモデルともされた。その佛子園が約60年の歴史の中で積み重ねてきた大小さまざまな試みは、『ソーシャルイノベーション』に相当する。本書では、佛子園及び雄谷理事長ならではの先進性、独自性あふれる取り組みを。このソーシャルイノベーションの横串としてつまびらかにしていく」と書かれています。事前に同書を読んでいたおかげで、Share金沢への理解が深まりました。また、清水施設長のご自身の仕事に対する強い誇りと福祉への情熱には感銘を受けました。今日は、施設案内にセミナーをありがとうございました!


佛子園とは?


佛子園の事業は100以上!


みんなで記念撮影しました


桜が満開の金沢刑務所の前で

2023年3月30日 一条真也