『真の安らぎはこの世になく』1

真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE- 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

一条真也です。金沢に来ています。
『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー ―SHOCKER SIDE―』第1巻(集英社ヤングジャンプコミックス)を読みました。藤村緋二(著)、山田胡瓜(著)、庵野秀明(著)、石ノ森章太郎(原著)、八手三郎(監修)となっています。非常に面白かったです!


本書の帯

 

カバー表紙には、主人公イチローとロボットであるKのイラストが描かれ、帯には映画で仮面ライダー2号=一文字隼人を演じた柄本佑の写真が使われ、「俳優・柄本佑、賞賛!!(映画『シン・仮面ライダー』出演)」「SHOCKERサイドから描かれる新たな仮面ライダー譚。SHOCKER達もSHOCKER達なりの正義の下世界を変えようとしていた!『シン・仮面ライダー』に奥行きが出る!」「超豪華制作陣が贈る、『シン・仮面ライダー』完全オリジナル漫画プロジェクト!!」と書かれています。


本書の帯の裏

 

カバー裏表紙には、SHOCKERマークとともに、「大したことじゃない。学校でのけ者にされても、家でひとりぼっちでも、僕が耐えれば済むことだから。でも、なぜ、お母さんが死ななきゃならなかったのか、それだけは何度考えても、分からなかった。少年・緑川イチローを襲った悲劇は、彼をとある研究機関と結び付けた。その機関の名は・・・『SHOCKER』。日本一有名な『悪の組織』を、新たな筆致で描き出す、ダークヒーロー・ライジング・ストーリー!!」と書かれています。


そう、この漫画はブログ「シン・仮面ライダー」で紹介した映画のスピンオフ漫画です。「シン・仮面ライダー」は、1971年から1973年にかけて放送された石ノ森章太郎原作の「仮面ライダー」50周年プロジェクトとして、「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」などの庵野秀明が監督を務めた特撮アクションです。仮面ライダーこと本郷猛を池松壮亮、ヒロインの緑川ルリ子を浜辺美波仮面ライダー第2号こと一文字隼人を柄本佑が演じ、西野七瀬塚本晋也森山未來などが共演しています。



ただし、映画は約2時間という短さもあって、仮面ライダーの物語について描き切れているとは言い難いです。仮面ライダー最大の敵であるSHOCKERの真実の姿が描かれます。怪人、科学者、幹部、首領の正体、なぜ彼らが世界征服を企むのかという理由が初めて明かされます。この第1巻では、SHOCKER怪人であるクモオーグやサソリオーグの魅力が炸裂しています。しかし、惜しむらくは映画公開にあわせて1巻だけ出版されたこと。本当は、映画の公開前に全巻出しておいてほしかったですね。

日本一有名な「悪の組織」の正体!

 

石ノ森章太郎の『仮面ライダー』はSF漫画の金字塔で、わたしも少年時代に夢中になって読みました。蜘蛛男、蝙蝠男といった異形の怪人たちの怪奇性が大好きでした。でも、悪の秘密結社であるショッカー(ここではあえて、SHOCKERとは書きません)の目的については「世界征服」としか認識していませんでした。ショッカーという組織は明らかにナチスをイメージしており、TVドラマではゾル大佐というナチスそのものの幹部も登場していました。ショッカーが「日本一有名な『悪の組織』」というのはまさにその通りですが、オウム真理教という強力なライバルが現実の世界に誕生しましたね。



それが本書『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー ―SHOCKER SIDE―』第1巻では、SHOCKERの目的は「人類を持続可能な幸福へと導く」と明示されています。映画版でも「幸福」という言葉が何度も登場するので、わたしは教祖が最近亡くなった某宗教団体を連想してしまいました。また、「持続可能な幸福」といえば、今はやりの「ウェルビーイング」そのものではありませんか! わが社は、40年前から「持続的幸福」としてのウェルビーイングを追求しており、わたしはまさに今、『ウェルビーイング?』という本を書いているところです。なんと、日本で最も有名な悪の秘密結社が目指すものは、世界制服ではなく、ウェルビーイング

 

興味は尽きませんが、本書で一番良かったのは、クモオーグとサソリオーグがなぜか柔道の乱取りをするシーンでした。映画では長澤まさみが演じた妖艶なサソリオーグの柔道着姿、彼女がクモオーグから腕ひしぎ逆十字をかけられるシーンには萌えました。(笑)なお、本書のタイトル「真の安らぎはこの世にはなく」というのは、バロック後期を代表する音楽家であるヴィヴァルディの宗教的声楽曲のタイトル“Nulla in mundo pax sincera”の日本語訳だそうです。続巻の刊行が楽しみ!

 

 

2023年3月30日 一条真也