孔子講義    

一条真也です。
一連のサンレーグループ創立50周年記念行事がようやく終了し、わたしは放心状態であります。しかしながら、「天下布礼」に休みはありません!
わたしは、九州国際大学九国大、KIU)の客員教授として「教養特殊講義」を担当しています。その講義が30日の16時20分から行われました。


九州国際大学のキャンパスで

プロフィールを紹介していただきました



この日は、学年を超えた受講希望者を対象に「孔子からのメッセージ」と題する講義を行いました。事前に告知していたのですが、100名以上が集まり、大教室で行いました。なかなか面構えの良い学生さんたちが受講してくれました。冒頭、経済学部の三輪教授によるプロフィール紹介がありました。過分なご紹介を受けて恐縮しつつ、わたしは講義を開始しました。


みなさん、こんにちは!

「世界の四大聖人」について



わたしは、パワーポイントを使って講演しました。
まず、孔子の人物紹介や世界史的位置づけから説明しました。
孔子は、紀元前551年に中国の山東省で生まれました。
ブッダとほぼ同時期で、ソクラテスよりは八十数年早い誕生でした。
孔子ブッダソクラテスにイエスを加えて、世界の「四大聖人」です。


情熱をもって講義を行いました



孔子は学問に励み、政治の道を志しましたが、それなりのポストに就いたのは50歳を過ぎてからでした。試みた行政改革が失敗に終わって、「徳治主義」という自らの政治的理想を実現してくれる君主を求めて、諸国を流浪したのです。春秋戦国時代の末期であった当時は、古代中国社会の変動期でした。つねに「天」を意識して生きた孔子は、混乱した社会秩序を回復するために「礼」の必要性を痛感し、個人の社会的道徳としての「仁」が求められると考えました。多くの弟子を教えた孔子は、74歳で没します。死後、彼の言行録を弟子たちがまとめたものが『論語』です。そして、なぜ孔子を学ぶのか、その理由を説明しました。


孔子を学ぶ理由



それから現代日本に話題を移し、「無縁社会」の話をしました。
年間に3万2000人が無縁死し、3万人が自殺する社会に日本がなってしまった大きな原因は、血縁と地縁が弱まったことです。そして、その結果、あらゆる人間関係が希薄化しました。わたしたちが生きる社会において、最大のキーワードは「人間関係」だと思います。


現代日本の問題点



社会とは、つまるところ人間の集まりです。そこでは「人間」よりも「人間関係」が重要な問題になってきます。そもそも「人間」という字が、人は一人では生きてゆけない存在だということを示しています。人と人との間にあるから「人間」なのです。だからこそ、人間関係の問題は一生つきまといます。


人間と人間学 



わたしは、人類が生んだあらゆる人物の中で孔子をもっとも尊敬しています。孔子こそは、人間が社会の中でどう生きるかを考え抜いた最大の「人間通」であると確信しています。その孔子が開いた儒教とは、ある意味で壮大な「人間関係学」です。


論語』について



孔子は「仁」「義」「礼」「智」といった人間の心にまつわるコンセプト群の偉大な編集者でした。彼の言行録である『論語』は千数百年にわたって、わたしたちの先祖に読みつがれてきました。意識するしないにかかわらず、これほど日本人の心に大きな影響を与えてきた書物は存在しません。特に江戸時代になって徳川幕府儒学を奨励するようになると、教養の中心となりました。そうして儒学は、武士階級のみならず、庶民の間にも普及したのです。


五倫五常について



江戸時代の日本において、『論語』で孔子が述べた思想をエンターテインメントとして見事に表現した小説が誕生しました。滝沢馬琴が書いた『南総里見八犬伝』です。江戸の大ベストセラーになりました。その中に登場する八犬士が持っていた玉には、それぞれ「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」の文字が浮かび上がりました。この8つの文字こそ、孔子儒教思想のエッセンスとしてまとめたコンセプト群であり、わたしたち日本人が最も大切にした「人の道」のキーワードでした。


「仁」について語りました

「義」について語りました



それから、わたしは、「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」について話しました。「仁」の項目では、結局は「思いやり」の心が最も大切であると言いました。「義」の項目では、正義を行うことこそ勇気であると述べました。


「礼」について語りました

「智」について語りました


わたし自身が最も重視している「礼」の項目では、孔子は高貴な人にだけでなく、障害者や高齢者などをはじめ、あらゆる人に礼を尽くしたことを述べました。そして、「礼」とは「人間尊重」であると訴えました。「智」の項目では、善悪の区別を知ることが重要であると訴えました。


孔子からのメッセージを伝えました

質問タイムのようす

学生さんから質問を受けました

質問には真摯にお答えしました



講義の後は、質疑応答です。冒頭、三輪教授から「どうして『論語』を読むようになったのですか?」という質問があり、わたしは「40歳を前にして『不惑』の出典である『論語』を40回読んだのですが、本当に迷いや悩みがなくなって、『不惑』を得ることができました」とお答えしました。また、ある学生さんから、「お墓について質問します。最近のお墓はシェアする形のものがあると聞きました。これからお墓はどのように変わっていくのでしょうか?」という質問がありました。わたしは、「供養する心さえあれば、お墓にはどんな形があってもいいと思います。いま、海洋葬、樹木葬、天空葬などもあるのですよ」とお答えしました。終了すると、教室から盛大な拍手が巻き起こって、感激しました。今日の講義が、彼らがこれから生きるうえで何かのヒントになれば嬉しいです。久しぶりに教壇に立ちましたが、いいものですね。本やコラムやブログを書くのもいいですが、やはりLIVEは最高です。
今日の講義内容が、学生さんたちの人生を豊かにしてくれますように!



2017年10月30日 一条真也