「サプライズ」

一条真也です。
六本木ヒルズでの打ち合わせを済ませ、某出版社社長との会食を終えた後、映画「サプライズ」を観ました。タイトルからして、冠婚葬祭の演出の参考になりそうな匂いがプンプンしましたが、実際はバリバリのホラー映画でした。(苦笑)


原題は「YOU'RE NEXT(次は、お前だ)」で、「V/H/S」シリーズや「ABC・オブ・デス」などの傑作ホラーで知られるアダム・ウィンガード監督の作品です。
両親の結婚35周年を祝う家族パーティーの最中、アニマルマスクの集団の襲撃に遭う戦慄の物語です。突然の襲撃にパニック状態に陥る面々を「パニック・マーケット3D」のシャーニ・ヴィンソン、「コロシノジカン」のニコラス・トゥッチらが熱演しています。もう、ハラハラドキドキし通しの展開でした。


映画「サプライズ」のポスター



映画ポスターには、次のようなコピーが書かれています。
「始まりは、二階の寝室。
一匹目は、ヒツジ。
二匹目は、キツネ。
三匹目は、トラ。
家に誰が入ってきたらしい」



この映画だけは、詳しいストーリーを書くわけにはいきません。
どんなふうに書いてもネタバレになってしまいます。
そして、とにかくカメラワークが素晴らしく、ラストシーンが衝撃的なことだけは明らかにしてもいいでしょう。



次々に人が殺される内容ですが、かの「悪魔のいけにえ」や「13日の金曜日」シリーズも彷彿とさせるのですが、この映画、それらの名作ホラーとは違って、ある意味でスカッとします。このカタルシスさはハンパではありません。わたしは、ここ数ヶ月のストレスはすべて吹っ飛びましたね。(笑)
また、最初は悲鳴を上げていた観客も、最後は笑っている人が多かったのが印象的でした。


荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

ブログ『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』で紹介した本の「まえがき」には「ホラー映画とは何か」について、次のように書かれています。
「当たり前と思われるかもしれませんが、人間の在り方を問うための良心作だったり、深い感動へ誘うための感涙作だったりというのは、結果としてそれがどんなに怖い映画であっても逆にホラー映画とは言えません。ひたすら『人を怖がらせる』ために作られていることがホラー映画の最低条件で、さらにはエンターテインメントでもあり、恐怖を通して人間の本質にまで踏み込んで描かれているような作品であれば、紛れもなく傑作と言えるでしょう。つまり『社会的なテーマや人間ドラマを描くためにホラー映画のテクニックを利用している』と感じさせる作品よりも、まず『怖がらせるための映画』であって、その中に怖がらせる要素として『社会的なテーマや人間ドラマを盛り込んでいる』作品。それこそがホラー映画だというわけです」
その意味では、この「サプライズ」は完璧なホラー映画でした。



また、荒木飛呂彦氏いわく、恐怖を相対化できるようになることが人生において大事なのだそうです。ホラー映画というのは、恐怖をフィクションとして楽しむことのカタルシスを教えてくれ、映画鑑賞をより実りあるものにしてくれるのです。さらには、「不幸を努力して乗り越えよう」といった、お行儀のいい建前ではなく、「死ぬ時は死ぬんだからさ」みたいなポンと肩を叩いてくれることで、かえって気が楽になることがあります。
荒木氏は、そういう効果を発揮してくれるのがホラー映画だというのです。
その意味でも、やっぱり「サプライズ」は完璧なホラー映画でしたね。
この映画を荒木氏がどう観るか、とても興味がありますね。



まさに、ホラー映画の中のホラー映画。じつは、登場人物の1人が異様な生存本能を発揮し、観客の共感を呼びます。その人物が殺されずに生き残っていくさまを観ながら、「人生、あきらめてはいけない」「人生、何が起こるかわからない」と、妙にポジティブな考え方になっていきます。詳しく書けないのがもどかしいですが、観終わった後、途方もない爽快感とともに、これからの人生を生きていく勇気のようなものが湧いてくる映画でした。映画館を出た後、六本木ヒルズのクリスマス・イルミネーションが美しかった!


六本木ヒルズのクリスマス・イルミネーション



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2013年11月21日 一条真也