ムーンサルトレター第100信

一条真也です。
シンとトニーのムーンサルトレター」第100信がUPしました。
わたしが、「バク転神道ソングライター」こと京都大学こころの未来研究センター教授の鎌田東二さんと満月の夜に交しているWEB上の往復書簡です。Shin(シン)はわたしで、Tony(トニー)さんは鎌田先生です。


シンとトニーのムーンサルトレター第100信がUPしました



わたしは、100信目のレターの冒頭に次のように書きました。
「Tonyさん、100回目の満月が上りました。ついにムーンサルトレターが第100信になりましたね。2005年10月18日に第1信をお送りしてから、早いもので、もう丸8年が経過しました。この8年間、明るい世直しについて、お互い、じつにいろんなことを語り合いましたね」


月への送魂」について書きました

霧ヶ丘紫雲閣の「禮鐘」についても書きました

さらに、天道館も紹介しました



わたしは、ブログ「満月の文通」で紹介した日経新聞の「交遊抄」のこと、ブログ「月への送魂」に書いたセレモニーのこと、ブログ「霧ヶ丘紫雲閣竣工式」に書いた禮鐘のこと、さらにはブログ「天道館の竣工式」で紹介したサンレーの新施設および今後の方向性などを100信目のレターに綴りました。


「Tonyさん」こと鎌田東二先生と 



Tonyさんのレターですが、神道ソングのことを中心に書かれていました。
神道ソングライターであるTonyさんには、2001年にわたしが社長に就任した直後、サンレーの社歌を作って下さるようにお願いしたことがあります。
わたしは渋谷の「八丈島ゆうき丸」という居酒屋でTonyさんにお願いしたのですが、その2時間後にTonyさんが大宮に帰り着いた時にはすでに社歌「永遠からの贈り物」が完成していたので、仰天しました。
Tonyさんが最初に作詞作曲した「神道ソング」は、「日本人の精神の行方」、2番目に作ったのが酒鬼薔薇聖斗に捧げる「探すために生きてきた」、3番目に作ったのがすべての15歳の少年少女に捧げる歌「エクソダス」でした。Tonyさんは、これら3曲をなんと1晩で作られたそうです。


神道ソングを歌うTonyさん



Tonyさんの驚異の神道ソングについては、ブログ「鎌田東二の世界」をお読み下さい。その「神速」ともいえるスピード作詞・作曲術について、Tonyさんは今回のレターで以下のように書かれています。
「『神道ソング』は考えずに作るというか、出来てくるので、すべてが日清チキンラーメンのようにワンタッチ3分間で出来ると言っていますが、実際、その通りなのです。なぜなら歌はわたしが作るのではなく、すでに向こう側に、『在る』からです。わたしはそれを『ダウンロード』するだけ。借りてくるだけ。拾ってくるだけ、です。その時、もちろん、お借りするエキュスキューズは、『礼(霊)』として必要ですが」



そして、Tonyさんは次のような驚くべきことをレターで述べられています。
「今日、朝の9時からずっと今まで、ほぼ7時間、昼食を食べに近くのカフェに行くまで、『余はいかにして神道ソングライターになりしか』について語り続けていました。ぶっつづけで。休むことなく。途中で256曲目の神道ソング最新曲の『約束』を歌いましたが。実は、ポプラ社新書で、『歌うこと。そして祈ること。』という本を出してほしいというオファーがあり、それを受けて、たった1日でそれができると確信し、語りおろしで本を作ろうと考え、それを本日実行したのです」



Tonyさんは、その話=歌を、正味6時間ぶっ続けで、歌い切ったそうです。
ブログ『超訳古事記』で紹介した本以来の語りおろしです。同書は、Tonyさんが現代の稗田阿礼に成り切って語り下ろすという試みでした。Tonyさんは自宅で半日3時間、そしてその翌日、自由ヶ丘にある版元のミシマ社本社で半日3時間語りおろし、2日間正味6時間で出来た本でした。まさに神がかりです!
しかしながら、Tonyさんはレターで次のように述べています。
「本日、それよりも早く、超速で、1日実質6時間で、『歌うこと。そして祈ること。』の新書を語り下ろしました。これは実に、実に、楽な仕事でした。そして、楽しい仕事でした。自己本来の姿を包み隠すことなくただ開陳すればよいだけですし、好き勝手に歌っていればよいだけですから。こんな楽しく、楽な本作りはこれまでありませんでした」



うーん、マンダム! じゃなくて、うーん、凄すぎる!
思うに、神道ソングライターというのは、ほとんどシャーマンですな。
でも、それは誰にでも出来る芸当ではありません。神道ソングライターになれるのは、選ばれし者だけなのです。Tonyさんは次のように書かれています。
「『神道ソング』となるためには、そこに『スピリチュアル・ペイン』(霊的・精神的痛み)や『グリーフ』(悲嘆・哀しみ)があるので、歌の根底には『悲』があるのですが、同時にそれを包み込む『慈』もあるのです。歌とは慈と悲のせめぎ合い・応答関係の中で生まれてくるものですから」



わたしは、このTonyさんの「歌とは慈と悲のせめぎ合い・応答関係の中で生まれてくるもの」という言葉に深く共感しました。というのも、わたしも神道ソングではありませんが、道歌をたしなんでいるからです。自分の想いを5・7・5・7・7の31文字に注入する「へっぽこ道歌人」です。いわゆる短歌においても、慈と悲のせめぎ合い・応答関係の中で生まれてくるということが言えると思います。考えてみれば、『万葉集』に収められた和歌は、相聞歌と挽歌が中心でした。
わたしは、これまで『愛する人を亡くした人へ』、『また会えるから』(ともに現代書林)、『のこされた あなたへ』(佼成出版社)など、グリーフケアの本を書いてきて「悲」については自分なりに考えてきたつもりですが、これからは大いに「慈」についても求めていきたいと思います。



これは、たまたま偶然なのですが、わたしは『慈を求めて』(三五館)という著書を年内に刊行する予定です。いや、ほんとうに。
孔子文化賞受賞記念出版となった『礼を求めて』(三五館)の続編で、毎日jp「風のあしあと」に連載中の「一条真也の真心コラム」をまとめた内容ですが、「世界平和パゴダ」の再開をはじめとした仏教関連のテーマが多いので、「礼」の次は「慈」を求めることにしたのです。はい。
また、ブログ「『慈経』を訳す」に書いたように、わたしは今、上座部仏教の根本経典である「慈経」の自由訳に取り組んでいるのです。はい。



日本経済新聞」10月18日朝刊



さて、わたしたちの文通のことを日経の「交遊抄」に書きました。Tonyさんは京都で日経新聞を購入されたそうで、たいそう喜んで下さいました。しかしながら、日本の将来については大きな不安を抱かれているようです。
以下のレターの文章から、Tonyさんの想いが強く伝わってきます。
「Shinさんが日本経済新聞の『交遊抄』にわたしとの『交遊』のことを書いてくれましたが、『日本』も『経済』も『科学』も『技術』もこれから正念場を迎えると思います。原発の制御もこれから多発する自然災害の中で具体的にどのように可能なのかが問われ、その対策・対応も並大抵ではないと思います。その制御の科学と技術、そして活用力を底上げしなくてはなりませんが、安陪首相の『汚染水は完全にコントロールされている』とか、『過去・現在・未来に健康被害はない』などの根拠のない暴言や大嘘は、それこそ、今後科学や技術がその根拠のなさを証明していくのではないでしょうか。放射能による健康被害も深刻なものになるのではないでしょうか? 2年や3年ではまだまだよくわからないと思います。
とにもかくにも、日本の未来は、日本の未来の安全も安心も安定も『想定内』に収まらない『想定外』の事態に見舞われることは必至でしょう。しかしそんな中で、われわれは覚悟して生きていかねばなりません。そのような生の底力と臨機応変力を常に涵養していく正精進をしてまいりましょう! 
今後ともなにとぞよろしくお願い申し上げます」


Tonyさんのレターの最後は「禮鐘」へのエール



最後に、Tonyさんのレターは次の文章で終っています。
「最後になりましたが、葬儀・告別式での『出棺』の際の『クラクション』を鳴らすことですが、それを『禮鐘』に替えるという試み、大賛成です。それによって、儀式の『質』がよりしめやかにかつ鎮魂供養のこころと意味を持ち始めると思います。そして何よりも、それは参列した方々の心と体で判断され評価されることにより、広がっていくことと思います。ぜひ全国に『礼楽の鐘』を鳴らしてください! お願いします」



これを読んで、わたしは「礼楽の鐘」という表現に大きな感銘を受けました。
そうか、わたしが「礼」を求めている冠婚葬祭人だとしたら、神道ソングライターであるTonyさんは音楽すなわち「楽」の人ですね。
ヤン坊とマー坊が2人あわせて「ヤンマー」になるように、北斗と南が合体して「ウルトラマンA」になるように、ガリ勉と番長が合体して「超人バロム1」になるように、わたしたちShinとTonyは2人あわせて「礼楽」なのです!
だから、わたしたちは100カ月も文通が続けられるほど気が合い、かつ「明るい世直し」という志を共有できるのでしょう。たぶん。

                    
「礼楽」を実現する(?)ムーンサルト・カラオケ♪



シンとトニーのムーンサルトレター」が60信を数えたとき、わたしちは水曜社から『満月交感 ムーンサルトレター』上下巻を上梓しました。今度は120信を数えたら、また単行本を2分冊で上梓したいと願っています。
そのタイトルは『満月交感』のままでもいいですけど、今度は『満月交遊』とか『満月交心』などもいいですね。あと20信、あと1年8ヵ月です。そのときを心より楽しみに待っています。Tonyさん、お互いに激務ですが、健康に気をつけて、われらの「シンとトニーのムーンサルトレター」を何とかこれからも続けましょう。それでは、また次の満月まで。オルボワール!

満月交感 ムーンサルトレター 上

満月交感 ムーンサルトレター 上

満月交感 ムーンサルトレター 下

満月交感 ムーンサルトレター 下

*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2013年10月22日 一条真也