『人生の暗号』

人生の暗号 (サンマーク文庫)


一条真也です。
村上和雄シリーズ5冊目は、『人生の暗号』(サンマーク文庫)です。
「あなたを変えるシグナルがある」というサブタイトルで、帯には「人生は遺伝子だけで決まってしまうのか?」「遺伝子研究の第一人者が解明する運について、人や物との出会いについて」と書かれています。



本書は、以下のような構成になっています。
「文庫化によせて」
プロローグ
第1章:いい出会いで人生が決まる
第2章:プロのすごさ、素人のすごさ
第3章:ダメと思ったときからはじまる
第4章:本物は単純で美しい
第5章:他人が喜べば自分も楽しくなる
「あとがき」



本書は1999年にサンマーク出版より刊行された単行本がもとになっていますが、「文庫化によせて」の冒頭には次のような驚くべき内容が書かれています。
「私は人生の大半を生命科学の研究現場に従事しており、『遺伝子は心の満ち方によって変化するのではないか』と常々考えておりました。そして、有名なお笑いタレントを多数輩出している吉本興業の協力を得て、笑いが遺伝子のはたらきを変え、健康により影響を与えるという仮説に基づく実験を行なうことができました」



世界的科学者が吉本興業とコラボした!!
この驚愕の告白は、さらに詳しく説明がなされます。
「実験は2日間、糖尿病患者25人に集まってもらいました。1日目は昼食直後に50分間、糖尿病のメカニズムについて専門的な講義を受けてもらい、2日目は同じ昼食直後の時間に、1000人以上の一般の人々と一緒に50分間の漫才を観賞し、大いに笑ってもらいました」



そして、真に驚くべきは、次の記述です。
「講義と漫才の前後に血糖値を測定し、両者を比較すると、血糖値の上昇に大きな変化が見られました。講義の後の血糖値は血液100ミリリットル当たり平均123ミリグラムも上昇していたのに、漫才で大笑いしたあとには平均77ミリグラムしか上昇しなかったのです」



このような驚愕の実験にまでチャレンジする著者は、よい遺伝子を目覚めさせる方法について思いをめぐらせます。
その結果、次の6つのことをするのがよいと考えました。
1.思い切っていまの環境を変えてみる
2.人との出会い、機会との遭遇を大切にする
3.どんなときも明るく前向きに考える
4.感動する
5.感謝する
6.世のため人のためを考えて生きる



著者によれば、遺伝子の構造と原理は、すべての生物に共通しています。
現在、地球上には200万種類以上の生物がいるそうですが、あらゆる生物が同じ起源をもつということは驚異的であるとして、著者は次のように述べます。
「問題は、いったいこの遺伝子という生命の設計図がどうしてできたかです。人間自身がこしらえたものではないことははっきりしている。では自然にできあがったのでしょうか。しかし材料がいくらあっても、ほうっておいて自動的に生命ができたとは考えにくい。ここはどうしても、人間を超えた何か大きな存在を意識せざるをえなくなってきます。
私はこの人間を超えた大きな存在とはたらきのことを、ここ十数年来『サムシング・グレート(偉大なる何者か)』と呼んできました」



わたしたちの遺伝子は38億年、一度も途切れることなく続いてきました。
だからこそ、わたしたちが現在ここにいることができるという事実があります。
著者は、その事実をぜひ知ってほしいと読者に訴え、さらに述べます。
「細胞1個、偶然に生まれる確率は、宝くじ100万回連続当選をするほどありがたいことです。そのような細胞を私たちは60兆個もっているのです。その細胞同士が争わず、お互いに助け合い調和を保ちながらはたらいている姿は見事です。そのはたらきを見ていると、私たちが生きているというより、大自然の偉大な力(サムシング・グレート)に生かされているのだと実感せざるをえません」



著者は、21世紀には「いのちとは何か」「何のために生きているのか」という根源的な問いが求めら、その中で新しい価値観が創造されなければならないといいます。そのためには、理性的な側面をもつ科学と、感性的な側面をもつ精神世界の両面から接近することが必要であるとして、著者は次のように述べます。
生命科学の研究に長い間従事し、そのなかでサムシング・グレートの存在やはたらきを知ったことはたいへん感動的で、ありがたいことでした。そして私はこれからも『生命科学』と『精神世界』のコーディネーターの役目を果たしていきたいと思っています」
遺伝子工学の分野で世界的業績を上げた著者が世界を駆けめぐった実体験にもとに人生の暗号を読み解く本書は、全篇が示唆に富んでいます。



*よろしければ、本名ブログ「天下布礼日記」もどうぞ。



2013年3月30日 一条真也