一条真也です。
4日の日曜日、ヤフーニュースを見ていたら、「高齢者見守る『民生委員』の担い手足りず 人員確保へ居住要件の緩和も検討 これから 100歳時代の歩き方」という産経新聞配信の記事を見つけました。
ヤフーニュースより
記事によれば、地域で高齢者や子供の見守り活動を行う民生委員の定員割れが続いているそうです。人間関係が希薄になるなかで民生委員の重要性が増す一方、働く高齢者の増加や負担の大きさなどで担い手が不足しているといいます。確保策として、地域の住民以外に広げるなど要件緩和も検討され、民生委員のあり方が問われているようです。民生委員は一定の要件を満たした人が推薦され、厚生労働相から委嘱される非常勤で特別職の地方公務員。交通費などの実費は支払われるが、無償のボランティアです。児童委員と兼任し、高齢者などの安否確認や見守り、子供たちへの声かけのほか、医療や介護、生活に関するさまざまな相談に応じ、行政など関係機関へのつなぎ役を担います。任期は3年で、再任も可能だ。1人当たり200世帯前後を担当することが多いといいます。
1人暮らしの高齢者の増加や子育て家庭へのサポートで、地域の相談役である民生委員の存在意義は大きいです。しかし、全国で定員割れが生じていいます。令和5年3月末時点で定数24万547人に対し、22万7426人、充足率は94・5%。東京都が88・5%、大阪府が91・2%などとなっています。担い手不足の背景には、「高齢化で適任者が見つからない」「高齢になっても働く人の増加」「民生委員の活動内容が知られていない」「深刻化する民生委員の仕事内容への負担感」などがあるとみられます。法律では民生委員の要件として、その市町村に一定期間住んでいることを挙げています。厚労省は都市部の要望などもあり、その市町村に住んでいない在勤者や近隣に転居した元住民にまで居住要件を緩和するかどうかの検討に入りました。今年度中に結論を出す見通しだとか。
民生委員のみなさんの前で講演しました
この記事を読んで、ブログ「民生委員総会講演」で紹介したように、2015年5月14日、わたしは民生委員および児童委員の総会後に開かれた記念講演会で講演したことを思い出しました。この日は民生委員さんたちの総会での講演でしたが、わたしは世界一の高齢化先進国である日本が「老福国家」となるために、「民生委員」の存在はきわめて大きいと考えています。「無縁社会」などと言われる現在、独居老人などの孤立死を防ぐ民生委員の役割は大きくなる一方です。ブログ「無縁社会シンポジウム」で紹介した座談会でも発言しましたが、孤立死が増加する原因の1つは「民生委員制度」が機能しなくなったことではないでしょうか。高齢単身者がどのような生活状況、あるいは健康状況にあるかを監視するのが、地域の民生委員の役割です。この民生委員制度がうまく機能していないのです。
『隣人の時代』(三五館)
拙著『隣人の時代』(三五館)にも書きましたが、民生委員制度の発端は大正7年(1918年)の大阪府における方面委員制度に始まります。重要なことは、方面委員は無報酬の名誉職だったこと。天皇の御聖慮による名誉職だったので、誰も不満は言いませんでした。しかし戦後になって、昭和21年(1946年)に民生委員制度として再発足したときにも無報酬が引き継がれてしまったのです。名誉職的な色彩が薄くなったことにより、高度成長期の民生委員は自営業者が減少し、引退者や主婦が増加したそうです。でも、今や民生委員を引き受ける人間はどんどん減る一方です。元日本経済学会会長の橘木俊詔氏は、ブログ『無縁社会の正体』で紹介した著書で「民生委員の仕事に対して俸給を支払うことを考えてよい」と提案されています。この橘木氏の提案には、わたしも大賛成です。さらに、わたしは質の良い民生委員の数を一気に増やし、孤独死を激減させるアイデアを持っています。
民生委員の民間委託を提案しました
わたしは、行政が困っているときは民間に委託すべきだと考えます。これは郵便局の事業の一部をヤマト運輸などの宅配便業者が行ったり、警察の仕事の一部をセコムなどの警備業者がやるのと同じようなこと。つまり、行政サービスの民間委託ということですね。それで、民生委員が少なくて困っているのなら、わたしどもの冠婚葬祭互助会業界に任せてくれたらどうかなと思います。互助会には、営業員さんがたくさんいます。それなら、例えばその営業員さんが独居老人のお宅の数を控えておいて、時々訪問する。行政からそういう委託を受け、互助会が老人宅を訪問して安否確認を行えば、これは互助会の社会貢献であるだけでなく、「相互扶助」をコンセプトとする互助会が本来の使命を果たすことになります。国や行政が困ったときは、ぜひ、互助会に声を掛けていただきたいと思います。いずれにしろ、わたしはこの日本から孤独死をなくし、無縁社会を乗り越えたいと心から願っています。
2024年8月4日 一条真也拝