「search/サーチ」

一条真也です。
東京に来ています。28日の互助会保証の監査役会、取締役会に出席するための出張ですが、27日の午後から、赤坂見附のホテルで月刊「清流」の取材を受けました。その夜、サンダンス映画祭2018の観客賞を受賞したサスペンス・スリラー映画「search/サーチ」をTOHOシネマズ日比谷のレイトショーで観ました。

 

ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『スター・トレック』シリーズなどのジョン・チョーを主演に迎えたサスペンス。失踪した娘を捜すために彼女のパソコンを操作する父親の姿を描く。『ナイト・ウォッチ/NOCHNOI DOZOR』の監督を務めたティムール・ベクマンベトフが製作、眼鏡型端末 Google Glassだけで撮影した短編が話題を呼んだアニーシュ・チャガティが監督と共同脚本を担当。ドラマシリーズ『ウィル&グレイス』などのデブラ・メッシングらが共演した。パソコンの画面の中で全てのストーリーが展開する」

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ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「ある日、デビッド(ジョン・チョー)の16歳の娘マーゴットが突然姿を消す。行方不明事件として捜査が行われるが、家出なのか誘拐なのか不明のまま37時間が経過する。娘の生存を信じるデビッドは、マーゴットのパソコンでInstagramなどのSNSにログインする。そこで彼が見たのは、自分が知らなかった娘の一面だった」

 

 

いやあ、この映画、とっても面白かったです!
もう開始直後に時間が飛んで、一気にラストを迎えた感じですね。サイバー・サスペンスということで、ブログ「スマホを落としただけなのに」で紹介した日本映画のようなイメージを抱いていました。北川景子演じる派遣社員の主人公が、その恋人がスマートフォンを紛失したことで、連続殺人事件に巻き込まれる物語でした。しかし、そのイメージは良い意味で裏切られました。「search/サーチ」のほうがずっと面白かったです。

 

むしろ、この映画はブログ「カメラを止めるな!」で紹介した日本映画に近い感じでしょうか。とにかく製作者のアイデアが斬新です。ストーリーは大したことないのですが、全編をPC画面だけで表現したのは、やはり凄いと思いました。また、クリックの音とか、書きかけのメッセージを削除して、当たり障りのない文章に直してからの送信で父親の心情を見事に表していました。

 

「search/サーチ」は、妻であり母であった最愛の家族を亡くしてから関係がギクシャクしていた父と娘の物語です。ある意味では、グリーフケア映画と言えるかもしれません。ある日、娘のマーゴットが突然行方不明になります。父のデビッドは彼女の残したパソコンを手掛かりに、検索を繰り返して、彼女の行方を探します。ところがパソコンを開いてみると、娘の友人など彼女のことを何も知らなかった事実を知り、デビッドは愕然とするのでした。

 

娘の知らなかった一面が次々に明かされていく展開は、ブログ「渇き。」で紹介した日本映画を連想させました。役所広治演じる父が、小松菜々演じる娘の知られざる一面を知るという中島哲也監督の作品でした。わたしにも娘がいるので、その意味では非常に怖い映画でした。「search/サーチ」では、なんとかパスワードを変更して娘のフェイスブックに入り込んだ父が、多くの「友達」の中に真の友人など1人もいないことを悟るシーンがあります。とりわけ興味深かったです。

 

 さて、「スマホを落としただけなのに」「カメラを止めるな」「渇き。」と、日本映画ばかりを取り上げてきましたが、狂ったように娘の行方を探し求める父親の姿からは、ハリウッド映画の「フライトプラン」(2006年)も思い浮かびました。高度1万メートルの密室で繰り広げられる、サスペンス・アクションです。オスカー女優ジョディ・フォスターが、突然娘を奪われた母親に扮して正体不明の敵に立ち向かう物語でした。あまりに臨場感のあるリアルな設定に、客室乗務員協会(AFA)が映画のボイコットを呼びかけたほどでした。ジョディ・フォスターの鬼気迫る演技は、「search/サーチ」でのジョン・チョーの演技に通じます。わが子を探す母親の執念を描いた映画が「フライトプラン」なら、父親の執念を描いた映画が「search/サーチ」だと言えるでしょう。

 

ブログ「グリーフケアと葬儀」で紹介した上智大学の講義後の質疑応答で、わたしは受講生の1人から質問を受けました。それは、「社会の無縁化によって、あらゆる縁が希薄化していると述べられましたが、ネットでの縁作りについてはどう思われますか?」という内容でした。わたしは「FacebookやLINEなどのSNSによって、新たな電縁というものが生まれていることは認めます。でも、よく知らない相手に対する『友達申請』というやつだけは理解できません。中にはネットだけの友達関係もあるようですが、違和感をおぼえます。だって、友達というのは、その人の結婚式や葬儀に参列する人でしょう」と答えました。ちなみに、この映画には葬儀の動画生配信サービスというものが登場しますが、これにも違和感をおぼえました。

 

「カメラを止めるな」と同じく、この「search/サーチ」も、書けば書くほどネタバレの危険が大きくなるので、このへんにしておきますが、それにしても、どうしてこんな面白い映画が全国公開ではないのでしょうか。わたしは現在の日本で最もアメニティが優れていると思われるTOHOシネマズ日比谷で鑑賞したのですが、上映前に多くの映画の予告編が流されました。今年も残り少なくなってきましたが、この日の予告編で観た次の3本だけはぜひ年内に観賞したいと思います。

 

 

 

 2018年11月28日 一条真也