「スマホを落としただけなのに」  

一条真也です。
法令試験に合格した自分へのごほうびに、ここ最近は毎日のように映画を観ています。2日に公開されたばかりの日本映画「スマホを落としただけなのに」も早速鑑賞。この映画、かなり楽しみにしていました。じつは、わたしは北川景子が好きなのです。

 

ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
文学賞このミステリーがすごい!』大賞で隠し玉作品に選ばれた志駕晃のサイバーミステリーを実写映画化。恋人がスマートフォンを紛失したことで、事件に巻き込まれる派遣社員の姿を描く。スマホの拾い主から監視され、追い詰められるヒロインに、『HERO』シリーズや『探偵はBARにいる3』などの北川景子。『リング』シリーズなどの中田秀夫監督がメガホンを取った」

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ヤフー映画の「あらすじ」には、「派遣社員・稲葉麻美(北川景子)の恋人が、スマートフォンを落としてしまう。そのことを知らずに恋人に電話をかけた彼女は、『あなたが稲葉麻美さんだってことは、分かりますよ』と見知らぬ男から電話越しに言われ、絶句する。拾い主の男から恋人のスマホを受け取りホッとする麻美だったが、その日から彼女の周囲で不穏な出来事が起こり始める。同じころ、山中で身元不明の女性の遺体が次々と発見され・・・・・・」とあります。

 

この映画、まず、とても勉強になりました。スマホを落として、それを悪い奴が拾った場合、こんなにも災難が波状攻撃のように襲ってくるということを学びました。それは、まるで不幸のジェットコースターのように、これでもかこれでもかとシャレにならないトラブルが続きます。わたしもスマホを落としたことはありませんが、数年前にタクシーの中に財布を置き忘れたことがあります。すぐに警察に連絡しましたが、出てきませんでした。そして、その財布にはクレジットカードや免許証が入っていたために、それなりの災難に遭いました。そんな苦い経験があるものですから、この映画を観ながら当時の心境などを思い出しました。みなさんも、タクシーを降りるときはくれぐれもお気をつけ下さい。

 

映画の話に戻りますが、スマホを拾った人物が主人公のカップルに次々と罠を仕掛けるところは臨場感があって面白かったです。犯人がこれまでの登場人物の中にいるようだけど、誰かがわからないというところも上手に描けていました。伏線の描き方も良かったです。サスペンス映画としては成功しています。
しかし、この映画にはホラー映画の要素も入ってくるのです。黒髪に執着する連続殺人犯が物語に絡んでくるのですが、この殺人犯の描き方がステレオタイプで白けました。ネタバレにならないように気をつけて書きますが、犯人の正体がわかったとき、わたしは「おいおい、『サイコ』のノーマン・ベイツそのものじゃないかよ!」と思いましたね。

 

この映画を監督した中田秀夫といえば、「リング」シリーズで知られるJホラーの巨匠です。せっかく巨匠がメガホンを取ったのにホラー映画としては残念な作品に仕上がっていました。でも、映画館で近くにいた若い女性たちは映画終了後、一様に「すごく怖かったね」「こんな怖い映画って思わなかった」などと感想を述べ合っていました。たしかに、一人暮らしの若い女性がストーカーに狙われ、それが殺人にまで発展してゆく恐怖というのは若い女性は特に強く感じるかもしれませんね。わたしの娘たちも恐怖を感じるのではないかと思います。しかしながら、この映画を「怖い」といった人たちは普段あまりホラー映画を観ていない人種なのではないかとも思います。正直、わたしのような筋金入りの「ホラーの鬼」(笑)からすれば、この映画など怖くも何ともありません。

 

ただ、恐怖に脅える北川景子の表情は良かったですね。彼女は、日本の絶叫クイーンになれると思います。それ以上に、彼女の憎しみの表情が最高でした。「どうすれば、こんなに人を憎悪に満ちた表情で睨みつけることができるのか。現実の人生で、相手の役者に恨みでもあるのではないのか」と思えるほど、強烈な演技でした。わたしは「北川景子は、ものすごい女優になったなあ!」と心底思いましたね。
ただ物足りなかったのは、スマホを落としたために「恥ずかしい写真も晒される」という触れ込みでしたが、映画に登場したのは、ベッドの上で北川景子扮する麻美がシーツにくるまって微笑んでいるというもの。大したことないです。こんなの全然、恥ずかしい写真じゃないです。これだけの女優魂を持っている北川景子、ヌードとはいわないまでもセミヌードぐらいは見せる覚悟を示してほしかったですね。また、一部の映画評論家が大絶賛したという彼女の拘束シーンにしても、もっとSMチックに描いたほうが作品に厚みが出たと思います。このあたりの描写は北川の事務所の意向もあったのでしょうが非常に緩く、ガチのホラー・ファンのみならず、ガチのSMファンも、「なんじゃ、こりゃ?」と言いたくなるレベルだったのではないでしょうか。

 

スマホを落としただけなのに」は、スマホを落とすことによって生じたトラブルと連続殺人事件がつながっていくというミステリーですが、この映画、もう1つエピソードを加えています。北川景子演じる稲葉麻美の衝撃の過去にまつわるものなのですが、正直、「これは不要だ」と思いました。まったく意味のない余計なエピソードですし、何よりも非現実的過ぎます。致命的なのは、スマホを落としたことと連続殺人と麻美の過去という3つの主要なエピソードがまったく絡み合っていません。これは脚本というよりも原作に難があるのでしょう。志駕晃の原作は「このミステリーがすごい!」 大賞で、グランプリである「大賞」を受賞しておらず、単なる「隠し玉作品」に選ばれただけでした。その原因も、それぞれのエピソードがうまく絡んでいないという構成力のなさにあったのではないかと思います。

 

スマホを落としただけなのに (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

スマホを落としただけなのに (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 

「この映画など怖くも何ともありません」と書きましたが、スマホを拾った犯人が持ち主のLINEの内容をすべて把握し、LINEやFacebookを乗っ取るところは怖かったです。じつは、つい最近、わたしはLINEを始めました。ベッキーの不倫騒動にLINE内容の漏えいが重要な役割を果たしていたことから、「LINEなんてやるもんじゃない」と思い込んでいたのですが、気づけば家族も社員も友人もみんなやっていたので、遅まきながら始めた次第です。やってみると、これほど便利なものはないし、面白いものはない。相手に言いにくいことでもサラっと言えてしまうスタンプなんて人類のコミュニケーションの歴史に残る大発明だと思います。

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「佐久間」スタンプの一例

 

わたしも大のスタンプ好きで、かなりの数の有料スタンプを買い集めました。問題なのはそれらのスタンプのキャラがどれもウサギとかネコとかクマとかのかわいい動物であること。50代半ばのいいトシをしたオッサンが、かわいい動物キャラでメッセージを送るのは「客観的に見ていかがなものか?」と思ってしまいます。もしも、わたしがスマホを落としてLINEの内容を見られたらと思うと、ゾッとします。

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「つねちゃん」スタンプの一例

 

わたしは別に不倫はしていないので、メッセージの内容自体はどうでもいいのですが、本名にちなんだ「佐久間」とか「つねちゃん」の名を冠したウサギとかネコとかクマとかのかわいい動物キャラや、野性爆弾くっきー、平野ノラなどの色物芸人スタンプを多用している画面を見られるのはどうにも耐え難いことであります。こんな恥ずかしいものを他人から見られるくらいなら断崖絶壁に行きます。

 

サイバーミステリーとしての「スマホを落としただけなのに」ですが、ITの専門家から見ると、ツッコミ所が多いと言います。リアリティのない箇所が多いとも・・・・・・。いま、「search/サーチ」という韓国映画が上映中ですが、こちらのほうはIT専門家たちにも受けがいいと聞きました。「スター・トレック」シリーズなどのジョン・チョーを主演に迎えたサスペンスで、失踪した娘を捜すために彼女のパソコンを操作する父親の姿を描いているそうです。ヤフー映画の「あらすじ」には、「ある日、デビッド(ジョン・チョー)の16歳の娘マーゴットが突然姿を消す。行方不明事件として捜査が行われるが、家出なのか誘拐なのか不明のまま37時間が経過する。娘の生存を信じるデビッドは、マーゴットのパソコンでInstagramなどのSNSにログインする。そこで彼が見たのは、自分が知らなかった娘の一面だった」と書かれています。この「search/サーチ」、面白そうなので、ぜひ観たいのですが、残念ながら北九州では上映されていません。東京で時間を作って観るか、それがダメならDVD発売後に観たいです。

 

2018年11月3日 一条真也