グリーフケアと葬儀   

一条真也です。東京に来ています。
4月1日より、わたしは上智大学グリーフケア研究所客員教授に就任いたしました。上智といえば、日本におけるカトリックの総本山として知られており、わたしは大いなるミッションを与えられました。11月14日の18時45分から最初の講義を行いました。社会人の受講生も多いので、この時間となりました。

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今夜の上智大学

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さあ、いよいよ客員教授としての講義です!

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聖イグナチオ教会のステンドグラス

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教会で七五三祝福式が!


昨年、一昨年と特別講義を行った時は受講を兼ねたサンレー社員が随行していたのですが、この日は自分1人で四谷の上智大学を訪れました。そして、自分1人でパソコンを立ち上げ、パワポを操作して、講義を行いました。正直、生まれて初めての経験でした。

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上智大学の正門前で

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公式LINEスタート!

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講義を行った6号館の外観

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6号館のロビーで

 

冒頭、わたしは姿勢を正して、「わたしは、これまで冠婚葬祭の仕事に従事してきました。これまで、わたしが学んできたこと、行ってきたことのすべて、いわば人生のすべてをかけて、グリーフケアの研究と実践に尽力したいと考えています。どうぞ、よろしくお願いいたします」と受講生のみなさんに対して深く一礼いたしました。みなさん、温かい拍手を下さって、とても感激いたしました。

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1人でパワポを操作しました

 

講義のテーマは「グリーフケアと葬儀」です。
まずは、「葬儀」についての自分の考えを明らかにしました。わたしは、人類の文明も文化も、その発展の根底には「死者への想い」があったと考えています。約7万年前に、ネアンデルタール人が初めて仲間の遺体に花を捧げたとき、サルからヒトへと進化しました。その後、人類は死者への愛や恐れを表現し、喪失感を癒すべく、宗教を生み出し、芸術作品をつくり、科学を発展させ、さまざまな発明を行いました。

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講義のレジュメ

 

つまり「死」ではなく「葬」こそ、われわれの営為のおおもとなのです。葬儀は人類の存在基盤です。葬儀は、故人の魂を送ることはもちろんですが、残された人々の魂にもエネルギーを与えてくれます。もし葬儀を行われなければ、配偶者や子供、家族の死によって遺族の心には大きな穴が開き、おそらくは自死の連鎖が起きたことでしょう。葬儀という営みをやめれば、人が人でなくなるように思えてなりません。葬儀という「かたち」は人類の滅亡を防ぐ知恵なのではないでしょうか。

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「こころ」と「かたち」について

 

それから、「グリーフケア」について話しました。わたしたちの人生とは喪失の連続であり、それによって多くの悲嘆が生まれます。大震災の被災者の方々は、いくつものものを喪失した、いわば多重喪失者です。家を失い、さまざまな財産を失い、仕事を失い、家族や友人を失った。しかし、数ある悲嘆の中でも、愛する人の喪失による悲嘆の大きさは特別です。グリーフケアとは、この大きな悲しみを少しでも小さくするためにあるのです。

f:id:shins2m:20181114230810j:plain月あかりの会」の活動を紹介

 

2010年6月、わが社では念願であったグリーフケア・サポートのための自助グループを立ち上げました。愛する人を亡くされた、ご遺族の方々のための会です。月光を慈悲のシンボルととらえ、「月あかりの会」という名前にしました。同会の活動をはじめ、「隣人祭り」や「ともいき倶楽部」「笑いの会」など、これまでわたしが実践してきた実例を紹介しながら、無縁社会=グリーフ・ソサエティを超える方策についての私見を語りました。

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グリーフ・ソサエティの現在と未来を俯瞰

 

上智大学グリーフケア研究所といえば、以前は髙木慶子先生が所長を務めておられました。かつて、わたしはブログ『悲しんでいい』で髙木先生の著書を紹介しました。そして現在の所長は、宗教学者島薗進先生です。島薗先生の所長就任は2013年4月1日のことで、ブログ「島薗進先生からのメール」に書かせていただきました。さらには、ブログ「鎌田東二先生からのメール」に書いたように、2016年4月から「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生が上智大学グリーフケア研究所の特任教授に就任されました。わたしは、島薗・鎌田両先生との御縁で16年・17年と2年連続で特別講義を担当し、今年の4月から客員教授を拝命しました。


島薗所長、鎌田副所長と

 

今日の客員教授としての初講義ですが、ちょっとテーマを拡げすぎて受講生のみなさんを戸惑わせたかもしれません。そのへんは反省していますが、講義後の質疑応答では何人もの方が興味深い質問をして下さいました。もしかしたら、そこでのわたしの回答のほうが講義の要点を押さえていたかもしれません。終了後も廊下で儀式の役割について質問をされる方などもいて、その熱心さには頭が下がりました。これまで自分なりに冠婚葬祭業界で実践してきたことを踏まえて、さらなる研究を重ね、充実した講義を行いたいと願っています。来週、11月21日は「グリーフケアと読書」をテーマにした講義を行います。

 

2018年11月15日 一条真也