『お葬式川柳』

お葬式川柳 じいちゃんのお棺に入れる肩もみ券


一条真也です。
『お葬式川柳』葬式川柳倶楽部編(ぶんか社)を読みました。
北九州の門司にある金山堂という書店で見つけ、求めました。
昼食のラーメンを啜りながら10分くらいで読破できましたが、ちょうどその夜、「ベスト50レビュアー」こと不識庵さんが同書のレビューをアマゾンに投稿しており、その偶然に驚きました。



本書の表紙には、霊柩車のイラストとともに「じいちゃんのお棺に入れる肩もみ券」という川柳が紹介されています。また、帯には「泣いて 笑って あの世まで おもしろおかしくって、元気が出ます!」「告別式、お通夜、遺言書、相続・・・・・『お葬式』にまつわる傑作川柳満載!!」と書かれています。



本書には、全部で108の川柳が掲載されています。
これらは、NPO法人「自分らしいエンディングを考える会」、川柳サークル「柳樽の会」、「せんりゅう城西倶楽部」などから協力を得て集めたとか。
かつて、「サラリーマン川柳」が大ブームになり、最近では「シルバー川柳」が流行しています。三菱UFJ信託銀行は「遺言川柳」を募集して話題を呼びました。
俳句なら「季語」が必要ですが、川柳は五七五という17文字のフレームに収まっていればOKです。それゆえ、誰にでも気軽に作れます。
それにしても、「お葬式川柳」とは! わたしに「こういうのって、一条さんは許せないのでは?」と言った人がいましたが、とんでもない。「お葬式」をタブー視せず、日常会話として話題にするのは大いに良いことだと思います。



でも、読んでみて、中には「うーん、これはちょっとないのでは?」と思えるものもありました。要するにブラックユーモアが満点なわけですね。
無粋を承知で紹介すると、以下のような川柳です。



遺言書 開封するまで 宝くじ(女性・53歳・会社員)
遺産分け 割り算ばかり 上手くなり(一番星・70歳・東京都)
鬼嫁が 遺産ねらって 下の世話(林千代子・東京都)
喪服妻 涙で隠す 黒い腹(女性・56歳・アルバイト)
通夜の席 子連れの美人が 気にかかる(男爵芋・男性・55歳)



不識庵さんも、ブラックな川柳について以下のように書いています。
「川柳は本質的に諧謔と風刺、そう、ユーモアと皮肉がキモですから、テーマがテーマなだけにキワドイものが少なからずあります。しかしながら、普通の会話では『キツメ』の内容が、川柳というスタイルで表現されるともう、笑って許してッ!という感じですね」
しかしながら、本書には次のような心温まる作品も掲載されています。



通夜の席 いつのまにやら 同窓会(じぇじぇ・63歳・千葉県)
死に水は 親父の遺言 大吟醸(サンタさん・男性・46歳)
お供えは カロリー気にせず グルメでね(女性・40歳・主婦)
じいちゃんの お棺に入れる 肩もみ券(萌えママ・43歳・埼玉県)
天国に 着いたらメールで 教えてよ(女性・74歳・無職)



そして、わたしは思ったのは、これらの川柳には葬儀というサービス商品を購入する消費者の正直な声が反映されているということでした。たとえば、以下のような川柳は、まるでアンケートの回答のようです。



霊柩車 乗ったことない キャデラック(友蔵・男性・76歳) 
葬儀屋の 手際の良さに 腹が立ち(タメゴロー・男性・63歳)
葬儀屋に 嫌な顔され 家族葬(男性・35歳・会社員)
散骨は ダメよあなたは カナヅチよ(しずかちゃん・女性・51歳)
花粉症 だからダメなの 樹木葬(塩こうじ・女性・45歳)



108首の川柳を読んでみて再確認したのは、みなさん「葬式は、要らない」とは考えていないということ。もちろん、そのサービスのあり方や料金などには要望もあるようですが、いずれの川柳からも「お葬式」に対する真剣なまなざしが感じられました。人生涙もあれば、笑いもあり。やはり「お葬式」のない社会なんてつまらないです。本書を読んで、「葬式は必要!」と思われる方もいるのでは?



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2013年10月9日 一条真也