開成の運動会

一条真也です。
昨日、開成中学校・高校を運営する「開成学園」(東京都荒川区)に12日開催予定の運動会の中止を求める脅迫文が届いていたことを新聞で知り、驚きました。12日の「産経新聞」朝刊に「運動会やめなければ生徒の肉食べて頂く」 「開成中高に脅迫文」の見出しで記事が掲載されました。


産経新聞」5月12日朝刊



警視庁荒川署によると、10日の朝、同学園内の郵便ポストに「運動会を中止しなさい。さもなくば、開成生徒の誰かのお肉を召し上がって頂くことになりました」などと書かれた手書きの脅迫文が入っているのが発見されたそうです。開成高校といえば、じつに東大合格者数31年連続1位です。しかし、進学校でありながらも、中学・高校では運動会や文化祭などを盛大に開催することで有名です。特に運動会は「棒倒し」などの本格的な競技があり、例年家族やOBらが多数詰めかけるそうです。



じつは、わたしの弟の長男、つまり甥は開成高校の3年生です。今年は最後の運動会ということで、弟夫婦も楽しみにしていました。わたしも機会があれば、叔父として応援に行きたいと思っていたところです。
14日からは東京出張が入っていますが、13日にサンレーグループの全国営業責任者会議があるので、残念ながら断念しました。
開成の運動会、本当は叔父として行きたかった!



結局、開成の運動会は予定されていた昨日は開かれませんでした。
学校側は12日の運動会が雨天により13日に延期となったとHPで説明しています。その上で、「運動会は、事情により一般公開は中止となりました」としています。そして13日の今日、すでに朝から運動会は開始され、17時過ぎに終わる予定のようです。今まさに熱い競技の数々が繰り広げられていることでしょう。今朝のフジテレビ「とくダネ!」で小倉智宏氏も言っていましたが、全国の学校の運動会から棒倒しや騎馬戦などの競技が危険視され消えていく一方で、日本一の進学校である開成が本格的な運動会を続けるのは素晴らしいことです。



いわゆる「文武両道」という言葉が思い浮かびます。
たしか、昔読んだ吉川英治の『宮本武蔵』の中で「文武両道」の意味が語られるくだりがあったと記憶しています。それによれば、「文武両道」とは2本の道を両立するのではなく、「文武」が揃って初めて1本の進むべき道が出現するといったような意味でした。
世の中に詰め込み式の受験校が多い中で、運動会や文化祭に生徒の若いエネルギーを思い切り注がせてあげる開成学園の教育方針は高く評価されるべきでしょう。中学生や高校生の頃の思い出が勉強の記憶しかないのでは、あまりにも寂しいではありませんか!



わたしや弟が卒業した小倉高校も九州では進学校として知られていますが、やはり体育祭や文化祭が盛大に行われていました。高校の体育祭での騎馬戦や笠踊りなど、今でも当時の様子をありありと思い出すことができます。ブログ「第99回明陵同窓会総会」に書いたように、今月19日(日)には小倉高校の同窓会総会が開かれます。当日は、集まった同級生たちと昔の思い出話に花を咲かせたいと思っています。とても楽しみです。



さて、脅迫文を書いた人間ですが、ネットなどでは「運動音痴の生徒に決まってる」といった意見が大半のようですね。つまり、運動会で恥をかくのが嫌な生徒が何とか阻止しようとしているという見方です。しかし、何らかの理由で開成に悪意を抱いている人間が嫌がらせでやったという見方もできます。たとえば、開成を受験して不合格だったとか、他の高校に通っていて東大を目指している生徒がライバルの宝庫である開成に精神的揺さぶりをかけるといったことです。
いずれにしても、幼稚かつ卑怯な行為であることに違いはありません。


弟からプレゼントされた運動会のプログラム



わたしは、1日順延しても運動会を決行したことは正しいと思います。
運動会を運営する開成の生徒たち、そして学校関係者に心から敬意を表します。何よりも「脅迫には屈しない」ということを世間に広く示したことに意義があります。率直に言って、東大合格者数が日本一なのですから、開成の生徒たちはエリート予備軍です。将来、官僚や外交官や政治家や経営者になる者も多いでしょう。そんな社会のリーダーに実際なったとき、「あのとき、卑怯な脅迫には屈しなかった」という自信が日本の将来にとって必ずや良い影響をもたらすものと考えます。そして、生徒たちの間には真の意味での「絆」が生まれたのではないでしょうか。「きずな」という字には「きず」が含まれています。傷を共有した人間同士にしか本当の「絆」は生まれないのです。今回の騒動では、多かれ少なかれ、開成の生徒たちはショックを受けたでしょう。恐怖や不安や精神的ストレスも感じたでしょう。でも、その「心の傷」が「絆」という一生の宝物になるのです。
そして、何よりも未来の同窓会で「あのとき、あんな出来事があったなあ」と盛り上がることは間違いないですね。記憶に残る共通体験ほど、同窓会を盛り上げるものはありませんから・・・・・。



どうか、開成中学・高校の生徒のみなさんは、胸を張って、最後まで日本一の運動会をやり遂げてほしい。「あのとき、俺たちは脅迫に屈しなかった」ということを絶対に忘れないでほしい。そして、みんなで力を合わせて日本を世界に誇れる国にしてほしい。
負けるな、開成男児! 
がんばれ、開成男児
50歳になったばかりの叔父さんは運動会が無事に終了することを、遠く九州の地より祈っています。何もできませんが、せめて歌の言霊で無事を祈念します。
荒川のグランドに届け、この歌!


雨上がり益荒男どもが棒倒す 
    天は快晴 地には開成 (庸軒)


2013年5月13日 一条真也