礼器



一条真也です。
わたしは、これまで多くの言葉を世に送り出してきました。この際もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。今回は「礼器(らいき)」という言葉を取り上げます。儀式が行われる空間や施設は、単なる箱ではなく「礼」を実現し完成させるための器=「礼器」です 。

「礼器」とは「礼」を実現し完成させるための器

 

儀礼は行い(作法)だけでなく、それを受け止める場や形があって初めて完成します。もうすぐ100店となるわが社のセレモニーホール(紫雲閣三礼庵)は、故人や遺族の想いを受け止め、儀礼を成り立たせるための「礼器」としての役割を担うものです。もともと「礼器」は、儒教儀礼の三本柱として、儀式の書である「礼文」、精神である「礼意」と並び、儀式に用いる器を意味しますが、わたしは葬儀などの儀式が行われる空間全体に拡大解釈することを提案します。



「礼器」という考えの背景には、冠婚葬祭や年中行事などの民衆的儀礼としての「民禮」があります。これは、柳宗悦が提唱した民衆的工芸としての「民藝」になぞらえて、日常の儀礼を支えることを意味します。儀礼文化の代表的なものといえば、茶道が第一にあげられます。宗教儀礼の中、仏教を基盤として生まれた儀礼文化でした。具体的には禅宗の茶礼をその出発点としたものであり、それが日本文化の土壌の上で、ゆたかに育成されたものだったのです。


 

 

茶道からは華道が派生しました。華道の場合も仏前に花を献り、また花を飾ることが、基礎をなしたことは考えられます。さらにそれ以前に祭りに花を飾る風習も存しました。しかし、そうした仏前献花の信仰習俗が、「活け花」として形成される段階に到達するためには、茶の湯の母胎を通ることが必要なのでした。ちなみに、茶の湯には茶器、生け花には花器、いずれも陶器を「うつわ」として使います。まさに、儀礼文化と工芸文化のコラボです。さらには、儀礼文化は工芸文化によって完成すると言えるかもしれません。

日本最初の「礼器」である小倉紫雲閣

 

茶の湯には茶器、生け花には花器、いずれも陶器を「うつわ」として使います。儀礼文化は「うつわ」によって完成すると言えるかもしれません。すると、葬儀という儀礼文化が行われるセレモニーホールとは「うつわ」そのものです。わが社の創業者であり、日本初の大型セレモニーホールである「小倉紫雲閣」を作った父・佐久間進はもともと茶人でした。父は茶器のように「礼」を完成させる器として紫雲閣を建設したのです。そして、わが社は、「はこ」ではなく礼を完成させる「うつわ」としてのセレモニーホールを作り続けてきました。それは、まさに「礼器」と呼べるものです。

 

*よろしければ、佐久間庸和ブログもお読み下さい!

 

2026年6月14日  一条真也