人生の四季

 

一条真也です。
わたしはこれまで多くの言葉を世に送り出してきました。この際もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。今回は、「人生の四季」という言葉を取り上げます。

人生の四季を愛でる』(毎日新聞出版

 

わたしは、「サンデー毎日」2015年10月18日号から2018年4月8日号までの2年半にわたって、「一条真也の人生の四季」というコラムを連載しました。高齢者の方々をはじめ、かなり好評で、多方面からの注目を浴びました。その全コラムを集めた本が、『人生の四季を愛でる』(毎日新聞出版)です。


サンデー毎日」2015年10月18日号

 

わたしは、冠婚葬祭会社を経営しながら、大学の客員教授として孔子の思想などを教えています。講義では、特に孔子が説いた「礼」について重点的に説明します。「礼」は儀式すなわち冠婚葬祭の中核をなす思想ですが、平たく言うと「人間尊重」でしょう。「礼」の心を形にしたものが「儀式」です。孔子は「社会の中で人間がどう幸せに生きるか」ということを追求した人ですが、その答えとして儀式の重視がありました。

儀式論』(弘文堂)

 

人間は儀式という「かたち」を行うことによって不安定な「こころ」を安定させ、幸せになれるように思います。その意味で、儀式とは人間が幸福になるためのテクノロジーなのです。そうです、カタチにはチカラがあるのです!

決定版 年中行事入門』(PHP研究所)

 

さらに、儀式の果たす主な役割について考えてみたいと思います。それは、まず「時間を生み出すこと」にあります。日本における儀式あるいは儀礼は、「人生儀礼」(冠婚葬)と「年中行事」(祭)の2種類に大別できますが、これらの儀式は「時間を生み出す」役割を持っていました。「時間を生み出す」という儀式の役割は「時間を楽しむ」や「時間を愛でる」にも通じます。

決定版 冠婚葬祭入門』(PHP研究所)

 

日本には「春夏秋冬」の四季があります。わたしは、冠婚葬祭は「人生の四季」だと考えています。七五三や成人式、長寿祝いといった儀式は人生の季節であり、人生の駅です。セレモニーも、シーズンも、ステーションも、結局は切れ目のない流れに句読点を打つことにほかなりません。わたしたちは、季語のある俳句という文化のように、儀式によって人生という時間を愛でているのかもしれません。それはそのまま、人生を肯定することにつながります。未知の超高齢社会を迎えた本人には「老いる覚悟」と「死ぬ覚悟」が求められます。それは、とりもなおさず「人生を修める覚悟」でもあるのです。

人生の修め方』(日本経済新聞出版社

 

人の「こころ」は、人生のさまざまな場面での「かたち」によって彩られます。人には誰にでも「人生の四季」があるのです。その生涯を通じて春夏秋冬があり、その四季折々の行事や記念日があります。大切なことは、自分自身の人生の四季を愛でる姿勢でしょう。どうか、人生の四季を愛で、「こころ」を豊かにする「かたち」を知っていただきたいと思います。

 

2022年8月23日 一条真也