死を乗り越える坂口安吾の言葉

 

生きるか、死ぬか、二つしか、ありやせぬ。おまけに死ぬ方は、ただなくなるだけで、何にもないだけのことじゃないか。生きてみせ、やりぬいてみせ、戦いぬいてみなければならぬ。いつでも、死ねる。そんな、つまらぬことはやるな。いつでも出来るんことなんか、やるもんじゃないよ。
坂口安吾

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、日本の小説家、エッセイストの坂口安吾(1906年~1955年)の言葉です。新潟県出身の彼は、エッセイ『堕落論』や小説『白痴』で一躍流行作家になりました。推理小説や探偵小説など幅広く執筆し、『不連続殺人事件』では探偵作家クラブ賞を受賞。

 

 

坂口安吾の代表作『堕落論』に出てくる言葉です。安吾といえば、無頼を終生貫いた作家として知られています。そんな彼が持った死生観がよく表れている言葉ではないでしょうか。一見すると死を軽んじているタイプにも見えますが、この言葉を読む限り、彼がいかに死を大切に考え、真剣に生きていたかがわかります。



安吾は、終戦後にすっかり変わり果てた世相を見ながら、筆を執ったといいます。戦争に負けたから堕落するのではなく、元から堕落の本性が備わっているのが人間である――彼はそんなメッセージを込めました。人間の本性は、政治を含む社会体制で変わるのではなく、自分自身の問題としてとらえました、堕ちるべき道を正しく堕ちきることが必要であると。さらに安吾は、日本人の美徳とされる「耐乏」、「忍苦」の精神についても批判をしています。安吾の指摘を参考にしながら、わたしは日本人の心性を大切にしたいです。なお、この坂口安吾の言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。

 

 

2022年8月23日 一条真也