ありがとう、シネスイッチ銀座

一条真也です。
本日25日、東京・銀座の映画館「シネスイッチ銀座」が閉館。71年の歴史に幕を下ろします。ブログ「遥かな町へ」で紹介した公開中の作品の舞台挨拶が23日に行われました。同劇場における最後の舞台挨拶です。

ヤフーニュースより

 

「遥かな町へ」はわたしも今月13日に同劇場で鑑賞しましたが、心温まるハートフル・ファンタジーでした。同作の音楽を担当した作曲家の瀬川英史氏は現在61歳ですが、「20代の頃から通っていろんな映画を見ました」と感謝。錦織監督も「本当に良質な洋画が多かった希望のような映画館でした」と語りました。同作の劇中音楽は1988年公開で、同館で長く愛されたイタリア映画「ニュー・シネマ・パラダイス」をイメージして制作されたそうです。瀬川氏は、「映画音楽に携わる人間にとってその名前を出されるのはプレッシャーでした」と振り返っています。

 

「ニュー・シネマ・パラダイス」の音楽は巨匠エンニオ・モリコーネが担当しており、映画音楽の歴史に残る名曲として知られています。わたしも大好きな曲です。この映画は、89年のカンヌ国際映画祭審査員特別賞および同年のアカデミー外国語映画賞を受賞しています。日本における初公開は、1989年12月でした。シネスイッチ銀座で40週にわたって連続上映されましたが、わずか200席の劇場で動員数約27万人、売上げ3億6900万円という驚くべき興行成績を収めました。この記録は、単一映画館における興行成績としては、現在に至るまで未だ破られていません。

 

同作のラストシーンは、あまりにも有名です。主人公のサルヴァトーレは、焼失した映画館を営んでいたアルフレード老人の未亡人から形見としてフィルムを受け取ります。葬儀の後、ローマに戻ったサルヴァトーレは、試写室で老人の残したフィルムを鑑賞するのですが、それは、昔、映画館でカットしていたラブシーンを繋ぎ合わせたものでした。このシーンは映画史に残る感動の場面として知られていますが、中には「あんなことして何が面白い」「老人の変態度がわかる」といった意見もあるそうです。たしかに最初に観たときはわたしも感動したラストシーンでしたが、この年齢になって観ると、素直に感動できないというか、それよりも30年も老いた母親を放っておいた行為のほうが心に引っ掛かりましたね。また、アルフレード老人が映写技師という自身の仕事を蔑んでいたことも納得できませんでした。同作に対するわたしの詳しい感想は、ブログ「ニュー・シネマ・パラダイス」に書いてありますので、そちらをお読み下さい。



ということで、「ニュー・シネマ・パラダイス」という映画、音楽は大好きなのですが、内容はあまり好きではありません。同作はシネスイッチ銀座の代名詞のようになっていますが、それには違和感をおぼえます。シネスイッチ銀座はもっと感動的で、もっと魂を揺さぶる映画をたくさん上映してくれました。ブログ「ハッピーエンドの選び方」で紹介したイスラエル映画を観たときは安楽死について考え、ブログ「ありふれた教室」で紹介したドイツ映画を観たときは教育現場の現実に、ブログ「アダムの原罪」で紹介したフランス・ベルギー合作映画を観たときは医療現場の現実に震撼しました。本当に、多くの映画から多くの学びを得ました。


シネスイッチ銀座の前で(2015年)

 

ブログ「104歳、哲代さんのひとり暮らし」で紹介した日本映画を観たときは老いた母を想いました。同劇場で最後に観た作品はブログ「あなたの息子ひき出します!」で紹介した日本映画でしたが、想定外の展開に度肝を抜かれました。本当に、長いあいだ、多くの名作をシネスイッチ銀座で観ました。ブログ「君の忘れ方」で紹介した拙著『愛する人を亡くした人へ』(現代書林・PHP文庫)が原案の日本映画が上映されたことも忘れがたき良い思い出です。エンドロールに「一条真也」の名を見たときは感動しました。ここで観たすべての映画は、わたしを「こころの王国」へと誘ってくれました。東京は日本の首都で、銀座は東京の中心地。71年間、東京のど真ん中の銀座のど真ん中で世界中の名作映画を上映し続けてくれたシネスイッチ銀座に心から「ありがとうございました」と言いたいです。


ありがとう、シネスイッチ銀座!

 

2026年10月25日 一条真也拝