一条真也です。東京に来ています。
25日の夜、1976年の日本映画「犬神家の一族」4Kデジタル修復版を角川シネマ有楽町で観ました。角川映画の初作品ですが、鑑賞したのはじつに50年ぶり。やはり怖いし、面白い! これはもうミステリー映画というより、日本ホラー映画史に燦然と輝く金字塔です!
映画.comの「解説」には、「名探偵金田一耕肋を主人公にした横溝正史の同名小説の映画化で、湖畔にそびえる犬神邸に次々と発生する怪奇な連続殺人事件に挑む金田一耕肋の活躍を描く。脚本は『反逆の旅』の長田紀生と日高真也、市川崑の共同、監督は『妻と女の間』の市川崑、撮影は同じ『妻と女の間』の長谷川清がそれぞれ担当」と書かれています。

映画.comの「あらすじ」は、以下の通りです。
「日本の製薬王といわれた信州・犬神財閥の創始者、犬神佐兵衛は、自分の死後の血で血を洗う葛藤を予期したかのような不可解な遺言状を残して他界した。犬神家の顧問弁護士、古館恭三の助手、若林は、莫大な遺産相続にまつわる一族の不吉な争いを予期して、金田一耕肋に助力を得るための手紙を送ったが、那須に着いた金田一と顔を合わさぬまま、何者かに毒入り煙草で殺害された。奇怪な連続殺人事件は、若林の死からその第一幕が切って落された。佐兵衛は生涯妻子を持たず、松子、竹子、梅子という腹違いの三人の娘があり、松子には佐清(すけきよ)、竹子には佐武(すけたけ)と小夜子、梅子には佐智(すけとも)という子供がいる。そして、犬神家には佐兵衛が今日の地盤を築いた大恩人である野々宮大式の孫娘、珠世も住んでいた。問題の遺言状は佐清の復員を待って公開されることになっていたが、戦争で顔を負傷した佐清は、仮面をかぶって一族の前に現われた」
本作は、やはり日本映画史に残る不朽の名作!
佐清の白マスクや水面から突き出た足など、
50年前に公開されたとき、わたしは中学1年生でした。小倉の映画館で鑑賞し、震え上がった記憶があります。それなのに半世紀ぶりに観たらストーリーや真犯人などはすっかり忘れていました。新作のように楽しめて良かったです。改めて、島田陽子の美しさ、坂口良子の可愛さ、石坂浩二の名演技を堪能しました。本作は日本ミステリー映画史上最高傑作とされており、海外でも高い評価を得ています。それにしても1976年当時すでに「忘れられた作家」となっていた横溝正史を蘇らせ、文庫本も映画も大ヒットさせた角川春樹の天才ぶりには驚きます。ブログ『最後の角川春樹』にも書いたように、わたしは彼をリスペクトしていますが、本作に刑事役で出演していました。それが演技も上手いし、なかなかのハンサムなのです。天才は何をやっても一流ですね!
本作は、2021年に角川映画45周年を記念し、記念すべき第1作の4Kデジタル修復版として作られたものです。オリジナル・
本作の4Kデジタル修復では、東洋現像所(現IMAGICAエンタテインメントメディアサービス)で発掘された初号オリジナル・タイミングシート(
本作に漂う怪奇で陰鬱な雰囲気は「日本的ゴシック・ロマンス」とでも呼べるものだと思います。西洋のゴシック・ロマンスといえば幽霊が必ず登場します。本作「犬神家の一族」には幽霊こそ登場しませんが、多くの殺人を犯した犯人が亡き犬神佐兵衛の亡霊に操られていたという見方もできます。それになんといっても、「オペラ座の怪人」も真っ青の「佐清」のインパクト! 日本発のホラー・アイコンとして世界的に有名になりました。ところで、映画の冒頭から登場し、重要な役割を果たすのが犬神佐兵衛の遺言状です。その内容を確認して、新しい発見がありました。

遺言状の内容は、犬神家の全財産と全事業の相続権を意味する三種の家宝、斧(よき)、琴、菊を佐清、佐武、佐智のいずれかと結婚することを条件に、珠世(島田陽子)に譲渡するというものでした。いま考えると珠世の人権無視のとんでもない内容でしたが、佐武は花鋏で殺され、生首だけ菊人形の首とすげかえられ、佐智は琴糸を首に巻きつけられて、そして、佐清も斧で殺されました。犬神家の家宝「斧(よき)、琴、菊」(良きこと聞く)は、いまや祝い言葉ではなく、呪いの連続殺人の呼称となったのです。ブログ「ドラマなふたり」、ブログ「しらぬひ」で書いたように、ここ数日、わたしは「祝い」と「呪い」について言及してきましたが、ここでもそれが出てきて驚きました。これはまさに、「シンクロニシティ」ではないでしょうか?

角川シネマ有楽町前で正座する佐清
それにしても、角川映画第1作にして社会現象を起こした「犬神家の一族」の4Kデジタル修復版を角川シネマ有楽町で観ることができて感無量でした。劇場の前にはいつもウェイティング・チェアが置かれているのですが、この日は椅子が片付けられていました。代わりに、畳が敷かれ、なんと佐清が正座をしていました。写真撮影OKとのことで、わたしは受付のお嬢さんにお願いして佐清とツーショット撮影をしていただきました。しみじみと嬉しかったです。
佐清とのツーショット