一条真也です。
ネットフリックス映画「セキュリティ・チェック」を観ました。映画についての情報を交換している映画通の方のおススメ作品ですが、最高に面白かった! 酔いどれた正月に観る映画は、やはりエンタメ作品に限ります!
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「[Netflix作品]『キングスマン』シリーズなどのタロン・エジャトンらが出演するサスペンス。クリスマスイブに飛び立つ航空機に危険物を忍び込ませるよう脅迫されたアメリカ運輸保安局職員が、脅迫犯の裏をかこうとする。メガホンを取るのは『ブラックアダム』などのジャウマ・コレット=セラ。『パープル・ハート』などのソフィア・カーソン、『AIR/エア』などのジェイソン・ベイトマン、『ティル』などのダニエル・デッドワイラーのほか、テオ・ロッシ、ローガン・マーシャル=グリーン、ディーン・ノリスらが出演する」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「アメリカ運輸保安局の職員イーサン(タロン・エジャトン)は、謎の人物から脅迫を受ける。謎の人物の指示は危険物をセキュリティ・チェックで通過させて、クリスマスイブに飛び立つ航空機に載せろというものだった。イーサンは脅迫犯の計画を阻止しようとする」
舞台は、クリスマスの米ロサンゼルス空港。手荷物検査業務に当たる30歳の職員イーサン・コーペックが、謎の男(ジェイソン・ベイトマン)からイヤホン越しに「おまえのレーンに来る俺の仲間の荷物を何も言わずに通せ。通報したら恋人の命はない」と脅されます。愛する人の命を守るため、多数の乗客にもたらされるであろう惨事を、何もせず傍観するのか。一瞬も気の抜けないサスペンスフルな物語となっています。わたしもよく飛行機を利用し、当然ながらセキュリティ・チェックのお世話にもなっていますが、実際にこんな出来事があったら怖いですね。
多くの人も同じでしょうが、「セキュリティ・チェック」を観たとき、サスペンス&アクション映画の最高傑作である「ダイ・ハード」(1988年)を連想しました。ジョン・マクティアナン監督、ブルース・ウィリス主演のアメリカ映画です。クリスマスの日、武装テロリストに占拠された日本企業のハイテク高層ビルを舞台に、たった1人の刑事の戦いを描いた超娯楽作です。伏線が隅々まで生きる脚本、絵空事ではない描写に最大限の効果を発揮したSFX、それらを手際良くまとめた演出で素晴らしいアクション映画の傑作となっています。スーパー・ヒーロー然としていない人間臭い主人公に扮したブルース・ウィリスが素晴らしかったですが、「セキュリティ・チェック」のタロン・エジャトンがそれを見事に継承しています。
クリスマスに起きる巻き込まれ型のクライムサスペンスアクション、しかも舞台はロスアンゼルスということで、「ダイ・ハード」と「セキュリティ・チェック」は完全に被っています。なぜ、ジャウマ・コレット=セラ監督はあえて古典的名作に挑んだのか? 監督は、「誰もが次の『ダイ・ハード』を作りたいと思っています。でも、実際には誰もそんなことはしない。あれは複製不可能な完璧な映画ですし、あの時代の特殊な作品でもあります。しかし、『セキュリティ・チェック』の脚本を読んだ時、『ダイ・ハード』の新しい世代に向けたもっと地に足の着いたバージョンを見つけたような気がした」と語っています。
また、ジャウマ・コレット=セラは「この物語は本物のミレニアル世代のキャラクターを中心にしています。今の現実に苦しんでいる人たち、若者が常に抱えている不安や孤独感がある。シンプルで古典的な善玉対悪玉のプロットがあって、ロスアンゼルスでクリスマスの日に展開されるポッポコーン映画の楽しみがあって、大切なものを背負った本物のキャラクターがいる。それが私をこのプロジェクトに引き寄せた理由です」とも語っています。確かに、タロン・エジャトンが演じる主人公イーサンは、「ダイハード」のジョン・マクレーン刑事のような果敢さや色気は持ち合わせていませんが、もっと現代の若者の共感を呼びそうな普通の青年だと言えるでしょう。
「セキュリティ・チェック」の舞台はロスアンゼルスということになっていますが、基本的に空港しか登場しません。空港を舞台にした映画といえば、アメリカ映画「ターミナル」(2004年)を思い出します。クーデターによって祖国が消滅してしまったヨーロッパのクラコウジア人、ビクター・ナボルスキーは、アメリカの空港にて足止めを余儀なくされます。その足止めの期間は数か月にも及ぶのでした。スティーヴン・スピルバーグ監督が「空港から出られなくなった男」にスポットをあてて描いた感動のヒューマン・ドラマですが、主演のトム・ハンクスとキャサリン・ゼタ=ジョーンズという大スターの演技が、空港という限られた空間での人間関係に深みを加えました。実際に建設された空港内のセットには実際にテナントも入り、本物そっくりの精巧な出来でしたね。
「ダイハード」のアップデートを目指して作られた「セキュリティ・チェック」ですが、とてもスリリングで面白い映画です。しかし、正直言って、ツッコミどころが多いのも事実です。実際に、犯罪者たちがあのように手荷物検査係の人間をイヤホン1つで操るというのは無理があります。そもそも、主人公が最初にイヤホンを耳に着けない場合だって十分ありうるし(いや、その可能性の方が高いと思います)、彼の恋人を犯罪者がレーザー銃でずっと狙い続けているという設定も無理がある。離陸した航空機の貨物室でのバトルというのも非現実的です。こういった非日常を描く映画ほど細部にはリアリティが求められるところですが、観客(視聴者)に多大なストレスを与え続けて最後にカタルシスを与える。リアリティうんぬんよりも、このような映画の痛快さというのは否定できませんね。
2025年1月3日 一条真也拝