「マダム・イン・ニューヨーク」

一条真也です。
インド映画「マダム・イン・ニューヨーク」を観ました。
いま、「ジゴロ・イン・ニューヨーク」も上映中です。ジゴロとマダムが同時上映というのも面白いですが、9月にニューヨークを訪問予定のわたしとしては両方とも押さえておきたい作品です。まず先に、マダムの方を観ました。「インド映画誕生100周年」記念の感動エンターテインメントです。


ご存知のように、ここ最近、わたしは多くの映画を観ました。
しかしながら、その中にいわゆる単館系の作品はありませんでした。
ブログ「ホテル・グランド・ブタペスト」で紹介した映画は東京でしか上映していない単館系作品かと思いましたが、実際は、サンレー本社からすぐ近くのシネプレックス小倉でもバンバン上映されていました。この「マダム・イン・ニューヨーク」は紛れもない単館系の映画です。わたしは、多くの日本人マダムに囲まれて、銀座の「シネスイッチ銀座」で観ました。


シネスイッチ銀座」で観ました

マダム・イン・ニューヨーク」のポスター



ヤフー映画の「解説」には以下のように書かれています。
「英語ができず苦悩する主婦が一念発起して英会話学校に通い、コンプレックスを克服し生きがいを見いだしていく女性賛歌。英会話という小さなきっかけを通して人生の喜びを発見するヒロインの日々を、アクションやミュージカルといったこれまでのインド映画とは異なる語り口で描く。本作で長編デビューを飾る新鋭女性監督ガウリ・シンデーがメガホンを取り、数多くの出演作があるインドの女優シュリーデヴィが主演」


マダム・イン・ニューヨーク」のパンフレット



また、ヤフー映画の「あらすじ」には以下のように書かれています。
「ビジネスマンの夫、2人の子供のために日々家事をこなす専業主婦シャシ(シュリーデヴィ)は、家族の中で唯一英語ができないことが悩みだった。ある日親戚の結婚式の手伝いを頼まれ単身渡米するも、英語が話せないためつらい思いをする。そんな時『4週間で英語が話せる』という英会話学校の広告を見つけた彼女は、身内に黙って学校に通い始めるが・・・・・・」



まず、わたしは英語帝国主義ともいうべき風潮に違和感をおぼえました。
本来、インド人はヒンドゥー語を、日本人は日本語で会話すればいいはずです。ところが、そうはいかないのがグローバル社会の辛いところですね。「映画.com」で、サラーム海上氏が「『マダム・イン・ニューヨーク』英語が苦手な日本人は冒頭30分で共感してしまうだろう」という映画評論を書いていますが、その中で以下のように述べています。
「インド人以上に英語が苦手な日本人は冒頭30分でこの物語に共感してしまうだろう。ニューヨークのカフェでシャシと似たようなイヤな経験をした人も多いのでは。しかし、英語はあくまでストーリーを進めるための乗り物であって、本当のテーマは専業主婦が自尊心を取り戻すことである」
まったく、その通り! わたしも冒頭からシャシに共感しまくりでした。



また、サラーム海上氏は以下のようにも述べています。
ボリウッド映画、特にファミリー向けの作品に不幸な結末は存在しない。ハッピーエンドは観る前からわかっている。しかし、そこに至るまで小さく右に傾き、左に転びを繰り返し、観ている僕たちはいつのまにかシャシの味方になっている。音楽の使い方の上手さもボリウッド映画ならではだ。お約束のダンスシーンは最後にほんの少々登場するだけだが、シャシの心のうちを描いた歌詞と魅力的なメロディーの歌が様々なシーンでさりげなく散りばめられ、観る者の共感を増幅する」



さらに、サラーム海上氏は以下のようにも述べます。
「ハリウッド映画なら最初にカットしてしまいそうな、ほんの小さなエピソードをいくつも積み重ね、時間をかけて観る者の心をジワジワと捉えていき、爽やかに涙腺をゆるませつつカタルシスへと至る。これこそハリウッド映画やフランス映画とは異なる、ボリウッド映画の文法であり、醍醐味である。キャー・バート・ヘイ(お見事)!」


シュリーデヴィが美しかった!(映画パンフレットより)



とにかくシャシを演じたシュリーデヴィの美しさに目を奪われます。
英会話学校でフランス人青年が一目惚れしたのも納得ですが、このシュリーデヴィという女優、なんとわたしと同じ1963年生まれの50歳と知って驚きました。こんな美しい50歳の女性がいるとは、インド恐るべし!


これで50歳とは!(映画パンフレットより)



そんな美しいシャシですが、夫も子どもたちも軽んじているのです。
英語のできない菓子づくりだけが得意な主婦と見ているのです。
こんな現状にシャシは大きな不満を抱いていうわけですが、「親しき仲にも礼儀あり」です。この映画を観た多くの日本人は、妻や母親に敬意を持たないシャシの家族に自分の姿を重ね合わせたのではないでしょうか。わたしも考えさせられました。


登場人物がみな個性豊かでした(映画パンフレットより)



それにしても、シャシが通う英会話学校に通う面々の個性豊かなこと!
フランス人、韓国人、パキスタン人、メキシコ人、アフリカ系・・・・・・じつに、さまざまな民族が集まり、みんな平等に英語を学んでいきます。彼らの生き生きとした姿を見ていると、もはや「英語帝国主義」への不満などどこかへ吹っ飛び、英語によって異なる民族がコミュニケーション可能という現実を素直に肯定できます。この英会話学校には国境もなく、一種のユートピアのようにさえ見えました。


感動的なシャシのスピーチ(映画パンフレットより)



そして最後の結婚式のシーンでのシャシのスピーチの感動的なこと!
ネタバレになるので、その内容は秘密ですが、シネスイッチ銀座でこの場面が流れると、多くのマダムたちの鼻をすする音が聞こえてきました。
わたしも、タオル地のハンカチを大いに濡らしました。
それから、インドの民族衣装であるサリーを身にまとい、インドの民族音楽と舞踊で祝われる結婚式の見事なこと! 民族性および宗教性がはっきりと反映されている結婚式は、日本人であるわたしが見ても最高に魅力的でした。やはり、儀式とは「文化の核」であると再認識しました。


この結婚式のシーンで、わたしはすっかりインドの文化に魅せられました。
マダム・イン・ニューヨーク」の上映前に、「めぐり逢わせのお弁当」というインド映画の予告編がシネスイッチ銀座に流れました。インドにはお弁当を配達する仕事があるそうですが、間違って届けられたお弁当から孤独な男女が出会う物語だそうです。カンヌ国際映画祭・批評家週間観客賞を受賞しヨーロッパ­で大ヒットしたそうですが、もうすぐシネスイッチ銀座などで公開されるとか。時間に余裕があれば、ぜひ観たいと思う作品でした。


ニューヨークの街も魅力的でした(映画パンフレットより)



マダム・イン・ニューヨーク」で描かれるニューヨークの街も魅力的でした。
シャシは1人で地下鉄にも乗りますが、ブログ「ある戦慄」で紹介した映画のような怖い場面はまったくありません。逆に、ニューヨークの人々はカフェの女性従業員を除いてはみんな親切でした。
現在のニューヨークは実際どうなのでしょうか?
9月に久々にニューヨークを訪れるのが、今からとても楽しみです!



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2014年7月18日 一条真也