一条真也です。
125万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」の最新号が出ました。同紙に連載中の「ハートフル・ブックス」の第193回分が掲載されています。今回は、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆著(集英社新書)です。
「ハートフル・ブックス」第193回
大ベストセラーとなった本です。著者は文芸評論家・書評家。1994年、徳島県美馬市に生まれて高知県高知市で育ち、京都大学文学部卒業。同大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了後、2019年に博士後期課を中途退学して、就職のため東京へと移ります。学部在学中に京都天狼院書店の店長に就任し、大学院在学中の2017年に著作家デビューしています。
まえがき「本が読めなかったから、会社をやめました」の「AI時代の、人間らしい働き方」の冒頭では、最初に伝えたいのが、著者にとっての「本を読むこと」は、読者にとっての「仕事と両立させたい、仕事以外の時間」である、ということが述べられます。「生活できるお金は稼ぎたいし、文化的な生活を送りたい」のは当然のことですが、週5フルタイムで出社していると、それを叶えることは、想像以上に難しいことがわかります。著者はそれを社会人一年目で痛感したとして、「私だけではないはずです。今を生きる多くの人が、労働と文化の両立に困難を抱えています。働きながら、文化的な生活を送る――そのことが、今、とっても難しくなっています」とも、著者は述べています。
ChatGPTが話題になり、AIが私たちの仕事を奪う、と言われている世の中で、私たち人間が生きる意味とは何か。仕事をただ長時間こなすだけのマシーンではなく、文化的な生活をしてこそ、人間らしい生き方をしていると言えるのではないかとしながらも、著者は「しかし労働によって文化的な生活をする余裕がなくなっているのだとすれば・・・。それこそ、そんな働き方はAIに任せておけ、と言いたくなります。自分の興味関心や、生活によって生まれる文化があってこそ、人間らしい仕事が可能になる。AI時代における、人間らしい働き方。それは、『労働』と『文化』を両立させる働き方ではないでしょうか」と述べます。
みんなが「半身」で働ける社会こそが「働きながら本を読める社会」につながるとして、著者は「たとえば、こんな働き方はどうだろうか。従来の日本企業は、『全身』で働く少数の男性正規雇用者に固定費用をかけ、バッファとしての残業代を支払っていた。しかしこれからの日本は、『半身』で働くたくさんの多様な人々に残業代なしで働いてもらうことが重要ではないだろうか」と述べます。そして本書の最後に、著者は「働きながら本を読める社会をつくるために。半身で働こう。それが可能な社会にしよう。本書の結論は、ここにある」と述べるのでした。本を読むことは「人間らしくあること」であり、わたしは著者の意見には大賛成です。
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2025年11月1日 一条真也拝
