一条真也です。
125万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」の最新号が出ました。同紙に連載中の「ハートフル・ブックス」の第187回分が掲載されています。今回は、『俺は100歳まで生きると決めた』野村進著(新潮新書)です。
「ハートフル・ブックス」第187回
9月20日、父が亡くなりました。行年90歳、満88歳の生涯でした。けっして短い人生ではありませんが、「人生100年時代」と呼ばれる今、もっと生きてほしかったです。そんな中、「100歳まで生きると決めた」という本書のタイトルが目を引きました。著者は、1937年(昭和12年)生まれ。歌手、俳優、作曲家。慶應義塾大学法学部卒業。「君といつまでも」などヒット曲多数。主演映画に「若大将」シリーズなど。2021年度の文化功労者に選出されています。
著者は「日本では、75歳以上を後期高齢者というらしいね。70になったら、まあまあ老人ということだよ。でも、ふり返ると、俺の全盛期は70代だったんじゃないかな。コンサートで歌ったり、テレビ番組であちこち歩き回ったり。70代は毎日充実していたからね。その延長線上に、今の80代の元気な暮らしがある」と書いています。
著者は「山あり谷ありの芸能生活」を経て、大借金や税金は10年で返済し、60代、70代は「けっこう頑張ってきた」と回顧します。そして、80代はブルーノート東京でのバースデー・パーティーからスタートしました。桑田佳祐・原由子夫妻と、山下達郎・竹内まりや夫妻が誕生日を祝ってくれたのです。
著者は、「桑田君や達郎君が『夜空の星』とか『蒼い星くず』、星野源君が『お嫁においで』を演奏してくれた。この日のために、みんな2日間もリハーサルをしてくれたらしい。最後は俺が『マイ・ウェイ』を歌った。いい夜だったな」と述べています。
「最後に歌うのは海の上」の項では、著者が出演した最後のNHK紅白歌合戦で、著者は「海 その愛」を歌ったことが紹介されます。著者が最初山をイメージしてつくったメロディに、岩谷時子が海の歌詞をつけてくれた曲です。間奏のときに、著者は「音楽とともに歩んできて幸せいっぱいです!本当にありがとうございます」と語りました。
最後に、著者は少年時代に過ごした湘南の海で多くの水死体を見たことを告白し、「泣いたってわめいたって、自然にはかなわない。運命にはかなわない。そう考えざるを得なくなった。俺たちの上には、手の届かない神の領域があるんだ。ずいぶん前に茅ケ崎を離れて、今は東京の街中で暮らしているけれど、子どものころに身体にしみた考え方はずっと変わらない。今は運命に逆らわないようにしながら、100歳を目指している」と述べるのでした。
人間の寿命というのは天のみぞ知るものであり、「100歳まで生きると決めた」などというのは不遜な気もしますが、天下の若大将が言うのなら「仕方ねえなぁ!」とも思います。ぜひ、加山氏には長生きしていただきたいです。
2024年11月2日 一条真也拝