武士といえば、
常に死ができている者と
自惚れているようだが、そんなものは
出家、女、百姓とて同様だ。
武士が他と異なるのは、
兵法の心得があるという
一点においてだけだ。
(宮本武蔵)
一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、宮本武蔵(1584年~1645年)の言葉です。武蔵は江戸時代初期の剣術家、兵法家、二刀を用いる二天一流兵法の祖。61歳没。
宮本武蔵は、まさに死をいつも意識してきた人生を送ったのではないでしょうか。本人は宗教心が薄いと評価されがちでが、その代わりとして武士道があったとわたしは考えています。武蔵の『五輪書』によると、彼は一三歳で初めて新當流の有馬喜兵衛と決闘して勝利し、一六歳では但馬国の秋山という強力の兵法者に勝利。以来、29歳までに60回ほどの勝負を行い、すべてに勝利したといいます。
命を懸けた厳しい勝負の世界に身を置き、死に接し続けた武蔵ですが、この言葉を読むと、人は死を意識しながら生きていることにおいて、身分や職業に何の差がないことがわかります。晩年は心を穏やかに過ごしたのかもしれませんが、若い頃の所業への思いがあったでしょう。それがこうした死生観、人生観を抱かせたのかもしれません。
ちなみに吉川英治の小説『宮本武蔵』は実像とはかけ離れたものですが、人間の生きる姿を剣豪に託した名作です。この作品によって、武蔵は日本人にとっての永遠のヒーローとなりました。なお、今回の宮本武蔵の名言は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。
2024年8月10日 一条真也拝