一条真也です。ブログ「『西日本新聞』シネマ連載開始!」で紹介したように、わたしは、今年8月から「西日本新聞」に映画をテーマにしたエッセーを「佐久間庸和」の本名で連載しました。連載記事については、権利の関係で紙面掲載後1ヵ月間はウェブ公開ができません。その時期がすでに過ぎましたので、晴れてここに公開いたします。第10回目は「グリーフケアの時代に」を取り上げましたが、見出しは「『悲嘆』に向き合い再生へ」です。
「西日本新聞」2023年12月7日朝刊
2023年12月1日より、ドキュメンタリー映画「グリーフケアの時代に~あなたはひとりじゃない~」(中村裕監督)の全国公開が始まりました。公開初日の1日、東京で出演者らによる舞台あいさつがあり、秋篠宮妃紀子さまも臨席、鑑賞されました。今年の2月17日10時、火災での焼失から復活した小倉昭和館でも上映されます。当日は、わたしも舞台挨拶でも登壇いたします。また、北九州市内の「紫雲閣」などでも上映予定です。
「悲縁」という言葉を提唱しました
タイトルにある「グリーフ」とは、深い悲しみ、悲嘆を意味する言葉で、大切な人を失ったときに起こる身体上、精神上の変化や苦悩を指します。作品は、そうした家族やパートナーを失い、旅立ちを見送らなくてはならない人が、心の痛みを手放し、再生へと向かう一助となるような心温まる内容です。この映画には日本を代表するグリーフケアの達人たちが一堂に集結。語りは俳優、音無美紀子さんです。僭越ながらわたしも出演し、グリーフを抱える方同士が結ぶ「悲縁」について紹介しています。東京での舞台あいさつでは、わたしも紀子さまに直接ごあいさつを申し上げ、著書をお渡しすることができました。
高齢化が進む日本の中で、北九州市は高齢化率31.2%(今年1月時点)と全国の政令市でトップです。まさに超高齢社会を迎えていますが、次に訪れるのは、多死社会です。すなわち北九州では、身近な人を失ったグリーフを抱えながら生きていく方が増えていくと考えられます。自分たちの周りには、悲しみを抱える方がいることを知ってほしいです。この映画は、そうした人たちを意識的にサポートする「グリーフケア」に取り組む必要性が、痛いくらいに感じられるきっかけになります。グリーフを語る人と、グリーフを聴く人が共に生きる社会を、「グリーフケア」という言葉で再構築していかなければならない。映画では、そんな強い想いが、出演者の言葉1つ1つから浮かび上がります。悲嘆をかかえているのは自分だけではなく、グリーフケアの輪が全国に広がりつつあるのを知って欲しいと思っています。
2024年2月1日 一条真也拝