死を乗り越えるヒッチコックの言葉

 

ドラマとは、退屈な部分が
カットされた人生である。
ヒッチコック

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回の名言は、イギリスの映画監督、映画プロデューサーであったサー・アルフレッド・ジョゼフ・ヒッチコック(1899年~1980年)の言葉です。彼は「サスペンス映画の巨匠」と呼ばれ、「レベッカ」「見知らぬ乗客」「裏窓」「めまい」「サイコ」「鳥」など数々の名作があります。



わたしはヒッチコックの映画が大好きです。彼の映画を見ているときは、日常をすべて忘れ、映画に没頭できます。彼のこの言葉を見つけた時、まさにドラマの本質に気づかせてもらったという印象でした。記憶というのも、じつは彼のいうドラマと同じかもしれません。楽しい思い出をたくさん持ってその生涯を終えたいものです。



映画界において「無冠の帝王」と呼ばれたヒッチコックでしたが、1979年にアメリカ映画協会功労賞を受賞します。授賞式で、彼は功労賞のトロフィーを持って、「私に大いなる愛情と高い評価を与え、常に激励と共に惜しみない協力をしてくれた4人の人物を紹介することをお許しください。1人目は映画の編集者、2人目は脚本家、3人目は私の娘、パトリシアの母親。4人目はすばらしい名コック。長年キッチンで奇跡的な腕をふるってくれました。偶然にも4人全員が同じ名前、その名もアルマ・レヴィルです」と言いました。



この感動的なスピーチを隣で聴きながらアルマ夫人は涙を抑えられませんでした。これはヒッチコック夫妻の人生という「ドラマ」において最高のクライマックスだったと思います。自身の作品に主演するブロンド女優たちに異常なまでの愛情を示し、「鳥」の主演女優のティッピ・ヘドレンへのセクハラ疑惑なども囁かれたヒッチコックでしたが、妻への感謝の念を抱いていたことは事実だったのでしょう。なお、この黒澤明の言葉は、『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。

 

 

2023年5月30日 一条真也