ギネス認定と心のケア

一条真也です。
沖縄に来ています。これから福岡に帰ります。
連日、故ジャニー喜多川氏の性加害報道に心を痛め、怒りを感じているわたしですが、今朝、「【独自】ギネス世界記録、ジャニー喜多川氏の記録について回答する」というネット記事を目にしました。

ヤフーニュースより

 

ジャニー喜多川氏は、「もっとも多くのコンサートをプロデュースした人物」や「もっとも第1位のシングル曲をプロデュースした人物」として2010年にギネス世界記録に認定されています。しかし、当該記事によれば、ジャーナリストの松谷創一郎氏が4月4日、イギリスに本社を置くGWR社に対し、BBCによるジャニー喜多川氏の性加害報道(3月7日)を説明したうえで、その記録の是非についての質問をメールで送ったそうです。松谷氏は、「ギネス世界記録に認定されている者が、犯罪や犯罪に類する行為を行っていたことが発覚した場合、これまでどのような対処をしてきたのでしょうか? あるいは規約上、どのように処理すると明記されているのでしょうか。もし犯罪や犯罪に類する行為によってギネス世界記録が成立していたとするならば、それでも世界記録を認定するのでしょうか? ジャニー喜多川氏のケースは、今後どのように扱うのでしょうか? ギネス世界記録をこのまま維持し続けることの議論はなされるのでしょうか?」といった質問を送りました。すると、4月10日にGWR社からの回答が寄せられました。それによれば、個別の記録に対しての言及を避けているものの、今後の「削除の可能性」にも含みを持たせており、状況の推移を見守る態度のようです。

ヤフーニュースより

 

「もっとも多くのコンサートをプロデュースした人物」および「もっとも第1位のシングル曲をプロデュースした人物」のギネス世界記録保持者としての「ジャニー喜多川」の名が抹消されるかどうかはわかりませんが、わたしはもう1つ、ギネス世界記録に認定される可能性があるのではないかと思いました。それは「もっとも多くの少年に性加害を行った人物」という記録です。ブログ「史上最大の性犯罪」で紹介したように、ジャニー喜多川氏が2019年に亡くなるまでに性的虐待を行った少年たちの人数は「単純計算しても2500人以上」と、1980年代後半からジャニー氏による性加害を告発してきた元ジャニーズJr.の平本淳也氏が明かしています。この「2500人以上」という数字が本当なら、間違いなく世界一でしょう。


2500人以上という数字が真実かどうかは別にしても、想像を絶する多くの少年たちがジャニー氏の性加害に遭ってきたことは間違いないようです。ジャニー氏は自宅を「合宿所」と称し、目を付けた少年たちを呼び集め、共同生活を送っていました。当時は「こちょこちょ」、近年は「カルピス」など、少年たちはジャニー喜多川氏の性加害を隠語で呼んでいたそうですが、少年たちのトラウマやその後の人生への影響を考えると心が痛みます。26日、ジャニーズ事務所は、ジャニー喜多川氏の性加害問題について「心のケア相談窓口の開設」「外部専門家による再発防止特別チームの設置」「社外取締役の選出」を行うことを書面にて発表しました。

ヤフーニュースより

 

ジャニーズ事務所は「ジャニー喜多川による問題について、大変なご心配と大きなご不安を与えてしまっておりますこと改めて深くお詫び申し上げます」と改めて謝罪。「弊社には現在に至るまで多くのタレントが所属しており、今回の問題については、声を上げられたかどうかに関わらず、所属経験のあるすべてのタレントへの心のケアが最重要と考えております。そこで、専門家に監修をいただき、心療内科医に委嘱して、本問題によって心を痛めたジャニーズ事務所の所属経験者を対象にした外部機関としての相談窓口を5月31日に開設します」と伝えました。続けて「この窓口では完全にプライバシーに配慮した形で心療内科医・公認心理師がご相談者それぞれの心の問題に対応し、できる限りのケアを行います」と報告しています。


今こそ、上級グリーフケア士の出番だ!

 

性加害に遭った人々の心をケアをする者として、もちろん心療内科医や公認心理師も結構ですが、わたしは上級グリーフケア士の活用を提案したいです。ブログ「横浜のグリーフケア式典」で紹介したように、現在、日本には22名の上級グリーフケア士が存在しています。彼らは、膨大な日数の研修期間を経てこの資格を獲得した、悲嘆に寄り添うプロ中のプロです。現在は、死別の悲嘆のケアが専門ですが、もともと「グリーフ」は死別の悲嘆だけではありません。グリーフには、さまざまな喪失の悲嘆があります。ジャニー氏の性加害によって、安心・安全感、純潔、青春、希望、自尊心、大人への信頼、芸能界への夢、そして「こんな自分はいったい何者なのか」というアイデンティティなどなど、さまざまな大切なものを喪失した方々のケアを担当する者として、上級グリーフケア士ほどふさわしい専門家はいません。ぜひ、ジャニーズ事務所藤島ジュリー景子社長には彼らの活用を御提案申し上げます。

 

2023年5月30日 一条真也