「こどもの日」は仮面ライダー!

一条真也です。
5月5日は、「こどもの日」です。
端午の節句」でもあります。拙著『決定版 年中行事入門』(PHP研究所)に詳しく書きましたが、男の子のお祭りと思われている「端午の節句」は、もともと女の子のお祭りでした。田植えが始まる前に早乙女と呼ばれる若い娘が「五月忌み」という田の神のために仮小屋や神社などにこもりケガレを祓い清めたのが始まりです。すなわち、田の神に対する女性のお清めの日でした。

決定版 年中行事入門』(PHP研究所)

 

男の子の行事に変わったのは平安時代からです。端午の節句で使われる菖蒲が「尚武(武事を尊ぶこと)」や「勝負」に通じるということで、男の子が菖蒲でつくった兜で遊ぶようになり徐々に変化していったものです。江戸時代になると、五節供の1つの「端午節供」に定められ、武者人形を家で飾るようになりました。また、中国の「竜門を登って鯉が龍になった」という故事から鯉のぼりを立てるようになり、粽(ちまき)と柏餅を食べるようにもなります。雛人形と同じく、五月人形の販売促進の色彩が近年強くなってきましたが、少子化の現在、子供に関する年中行事をもっと普及させることが求められます。

f:id:shins2m:20210504105304j:plain「こどもの日」は「こどもに戻る日」 

 

さて、わたしにとっての「こどもの日」は「こどもに戻る日」です。毎年、この日には童心を思い起こすようにしています。そのために、昭和の少年時代にタイムスリップすることができる本を読みます。

f:id:shins2m:20210504105359j:plain「こども日」に読んできた本

 

たとえば、ここ数年の「こどもの日」にはブログ『昭和ちびっこ未来画報』ブログ『ぼくらの昭和オカルト大百科』ブログ「今年の『こどもの日』は『怪獣の日』だった!」ブログ『昭和ちびっこ怪奇画報』ブログ『タケダアワーの時代』ブログ『日本昭和トンデモ児童書大全』で紹介した本、を取り上げました。

f:id:shins2m:20210504011418j:plain2020年の「こどもの日」に読んだ本

 

2020年は、ブログ「昭和のこどもの本と映画」で紹介した『昭和こども図書館』と『昭和こどもゴールデン映画劇場』(ともに大空出版)を取り上げました。ともに、「こどもの日」に読もうと思って楽しみに取っておいた本でした。2冊とも1960~70年代のキッズカルチャーの研究家である初見健一氏の著書です。わたしは初見氏の本の大ファンで、そのほとんどを読んでいますが。初見氏は1967年生まれで、わたしの4歳下ですが、いわゆる同世代だと言えます。ですから、この2冊に登場する本や映画も懐かしいものばかりでした。

f:id:shins2m:20210505001532j:plain愛の戦士レインボーマン」の全話DVD 

 

2021年の「こどもの日」は、ブログ「『こどもの日』はレインボーマン!」に書いたように、特撮ドラマのカルト作品「愛の戦士レインボーマン」のDVDを観ました。東宝製作の特撮テレビ番組で、原作は川内康範です。1972年(昭和47年)10月6日から1973年(昭和48年)9月28日までNET(現・テレビ朝日)系で毎週金曜日の19:30から20:00に全52話が放送されました。インドの山奥でダイバダッダからヨガの秘術を学んだレインボーマンが、ミスターK率いる死ね死ね団に立ち向かう物語ですが、当時小学生だったわたしは想像を絶するほど大きなインパクトを受けました。その全話のDVDを数年前に購入していたのですが、「いつか、こどもの日にでも観たいな」と楽しみにしていたのです。


わが家の「円谷プロ」DVDコーナー

 

そして、昨年2022年の「こどもの日」はウルトラマンでした。戦後日本最大のヒーロー「ウルトラマン」は、1966年7月17日放送の第1話「ウルトラ作戦第一号」でブラウン管にその姿を現しました。銀色に輝く巨大宇宙人という前代未聞のアイディアにたどり着くまで、金城哲夫をはじめスタッフは文字通り産みの苦しみを味わったといいます。そして誕生したヒーローの物語は、才能溢れる若者達の情熱によって、驚くべき発展を遂げていくのでした。わが家の映像ルームには、「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」のDVDーBOXをはじめ、円谷プロの特撮ドラマのDVDがほとんど全作品揃っています。


この日に眺めたウルトラ本たち

また、この日は、ブログ『「ウルトラQ」の誕生』ブログ『「ウルトラマン」の飛翔』ブログ『「ウルトラセブン」の帰還』ブログ『「怪奇大作戦」の挑戦』で紹介した映画評論家の白石雅彦氏の一連の著書を再読というか眺め直し、それぞれの特撮ドラマの素晴らしさを思い出しました。さらには、買い置きしていた『「少年マガジン」「ぼくら」オリジナル復刻版 ウルトラマン画報』(講談社)のページも繰りました。


「昭和40年男」2022年4月号増刊より

 

それだけではありません。これまた買い置きしていた「昭和40年男」総集編4月号増刊を読みました。本誌の特集記事は「俺たちが愛した昭和ヒーロー」ですが、昭和2大ヒーローとして、ウルトラマン仮面ライダーが取り上げられています。そのリード文には、「昭和の2大ヒーローと名づけても異論あるまい。どれだけ俺たちを興奮させたか。どれだけ俺たちに勇気をくれたか。日本中の子供たちにこれほどまでに愛されたヒーローは、未来永劫出現しないだろう。その熱狂の瞬間に、ガキとして立ち会えたことを幸福と言わずしてなんと言おうか。ありがとうウルトラマン。ありがとう仮面ライダー」と書かれていますが、涙が出るような名文ですね!



その昭和の2大ヒーローであるウルトラマン仮面ライダーは、ブログ「シン・ウルトラマン」ブログ「シン・仮面ライダー」で紹介した映画で令和のスクリーンに蘇りました。「シン・仮面ライダー」は今年3月17日、全国最速公開記念舞台挨拶のLIVE映像付き上映が行われ、わたしも鑑賞しました。この作品は、1971年から1973年にかけて放送された石ノ森章太郎原作の「仮面ライダー」50周年プロジェクトとして、庵野秀明が監督を務めた特撮アクションです。仮面ライダーこと本郷猛を池松壮亮、ヒロインの緑川ルリ子を浜辺美波仮面ライダー第2号こと一文字隼人を柄本佑が演じ、西野七瀬塚本晋也森山未來などが共演しました。

 

 

「シン・仮面ライダー」のスピンオフ漫画にブログ『真の安らぎはこの世にはなく』で紹介したコミックがあります。コミックといえば、石ノ森章太郎の『仮面ライダー』はSF漫画の金字塔で、わたしも少年時代に夢中になって読みました。悪の秘密結社であるショッカー(ここではあえて、SHOCKERとは書きません)の目的については「世界征服」としか認識していませんでした。ショッカーという組織は明らかにナチスをイメージしており、TVドラマではゾル大佐というナチスそのものの幹部も登場していました。ショッカーが「日本一有名な『悪の組織』」というのはまさにその通りですが、オウム真理教という強力なライバルが現実の世界に誕生しましたね。それが『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー ―SHOCKER SIDE―』第1巻では、SHOCKERの目的は「人類を持続可能な幸福へと導く」と明示されています。

 

映画版でも「幸福」という言葉が何度も登場するので、わたしは教祖が最近亡くなった某宗教団体を連想してしまいました。また、「持続可能な幸福」といえば、今はやりの「ウェルビーイング」そのものではありませんか! わが社は、40年前から「持続的幸福」としてのウェルビーイングを追求しており、わたしはまさに今、『ウェルビーイング?』という次回作の校正作業をしているところです。なんと、日本で最も有名な悪の秘密結社が目指すものは、世界制服ではなく、ウェルビーイング? でも、考えてみれば、今では悪のシンボルのように思われているナチスオウム真理教イスラム国(IS)も、ある意味では幸福の追求を目指す組織でした。その幸福観がズレているから困るわけです。また、異なる幸福観同士が衝突すれば戦争となるのが困るわけです。そこで、「幸せ」としてのウェルビーイングだけでなく、他者の存在に思いを馳せる「思いやり」としてのコンパッションが必要になります。奇しくも、わたしは今、『コンパッション!』という次回作の校正作業も行っております。


今年の「こどもの日」は仮面ライダーだ!

 

「今年の『こどもの日』は仮面ライダーだ!」と決めたわたしは、買い込んでいた関連書やムックや雑誌類を並べて、その上にアマゾンで求めたばかりのシン・仮面ライダー1号&2号のフィギュアを置きました。「シン・仮面ライダー」の原型となったTVドラマ「仮面ライダー」は、1971年4月3日から1973年2月10日まで、NET(現・テレビ朝日)系列で毎週土曜19時30分から20時に全98話が放送されました。優秀な科学者にしてオートレーサーの大学生・本郷猛は、世界征服を企てる悪の秘密結社・ショッカーに捕われてしまいます。本郷の能力に着目していたショッカーは、アジトで1週間かけて彼をバッタの能力を持つ改造人間に改造。しかし、本郷は脳改造される寸前、ショッカーに協力させられていた恩師・緑川博士に助けられてアジトから脱出します。以降、仮面ライダーとなった本郷は、ショッカーが送り出す怪人たちを次々に倒していきます。


ショッカーは仮面ライダー打倒のため、フリーカメラマン・一文字隼人を仮面ライダー同様の改造人間に改造します。だが、一文字も脳改造の直前に本郷に救出され、もう1人の仮面ライダーとなるのでした。こうして誕生した2人の仮面ライダーは日本と海外に別れ、時には共闘しながら、オートレーサーとしての師・立花藤兵衛、FBI捜査官・滝和也、自分たちに憧れる少年仮面ライダー隊などの多くの仲間たちの協力を得てショッカーと戦います。普通の人間に戻れなくなった悲しみを仮面の下に隠し、「人間の自由」を守るために戦うのでした。わたしは、1971年4月3日の第1回放送から「仮面ライダー」に魅了され夢中になりました。この作品の基本線は、等身大のヒーローと怪人が対決する痛快SF怪奇アクションドラマです。ショッカーの怪人は、多彩な動植物をモチーフとした特異でグロテスクなものでした。これも、少年時代のわたしのハートにヒットしました。


怪奇蜘蛛男(「週刊文春エンタプラス」より)

 

数多いショッカー怪人の中でも、わたしが好きだったのは、蜘蛛男と蝙蝠男でした。放送初回から、いきなり蜘蛛の特性を備えた怪人である蜘蛛男が登場したときのインパクトは大きかったです。蜘蛛男は粘着性のある強靭な紐で目標を捕らえるほか、放った紐を伝って崖を上ったりもできます。口から溶解液を含んだ矢を放ち、鋭い両手の爪をふるって戦います。組織の決定に従って本郷猛を拉致し、彼が仮面ライダー1号になるきっかけとなりました。身長1メートル98センチ。体重96キロ。プロレスラーも顔負けの堂々たる体躯です。

恐怖蜘蛛男(「週刊文春エンタプラス」より)

 

放送2回目に登場した蝙蝠男は両腕に備えた羽で飛行し、鋭い牙で噛みつきます。危険を察知すると自己催眠で人間の姿になって眠り、危険が去ると目覚める能力があります。また超音波でショッカーのビールス(ウィルス)に感染した人々を操ります。身長2メートル5センチ。体重115キロと蜘蛛男よりも一回り大きいのですが、ショッカーの怪人ってこんなにデカかったのか! とにかく蜘蛛男と蝙蝠男の怪奇性はハンパなく、催眠術にかかったように彼らに魅せられたわたしは、小学生でありながら「蜘蛛」と「蝙蝠」という漢字を一発で憶えました。(笑)


この後も、怪人さそり男、人喰いサラセニアン、怪人かまきり男、死神カメレオン、怪異!蜂女、そしてトカゲロンといった異形の怪人たちが続きますが、やはり蜘蛛男と蝙蝠男のインパクトには誰もかないませんでした。考えてみれば、蜘蛛男と蝙蝠男を英語にすれば「スパイダーマン」と「バットマン」です。クモとコウモリは、アメリカではヒーロー、日本ではショッカー怪人というのが面白いですね。というわけで、5日後には60歳になって還暦を迎えるオヤジですが、いくつになっても「仮面ライダー」のことを考えただけで、こども心が甦ってくるのであります!

 

2023年5月5日 一条真也