最高の人生の卒業式

一条真也です。
タクシー業界最大手、第一交通産業の創業者で相談役の黒土始氏が17日午前8時58分、肺炎のためお亡くなりになられました。大分県中津市のご出身で、享年101歳でした。わたしの尊敬する経営者であり、大恩人です。


ヤフーニュースより

 

故人の訃報に接したわたしは、すぐさま御自宅を訪れ、お参りをさせていただきました。第一交通産業田中亮一郎社長のご厚意で故人とも最期のお別れができました。わたしは子どもの頃から故人には大変可愛がっていただき、その後もわたしの成長を温かく見守って下さったので、まるで親戚が亡くなったかのような感覚にとらわれ、グリーフを感じました。横たわる故人のお顔を見ながら、手を合わせて「長い間、お疲れ様でございました。ありがとうございました」と申し上げました。

小倉紫雲閣の外にも大量の花が・・・


駐車場もいたる所が花だらけ・・・

「月の広場」にも大量の花が・・・


「月の広場」が「花の広場」になりました


花の回廊から入口に至る


小倉紫雲閣の入口で

19日の通夜式を経て、20日の12時から小倉紫雲閣で黒土始様の葬儀・告別式に参列しました。昨夜の通夜式でも、本日の葬儀でも、第一交通産業田中亮一郎社長が「北九州中の花が集まったのかと思ったぐらい多くのお花を頂戴しまして、本当にありがとうございます」と御挨拶されていましたが、本当にものすごい数の花が小倉紫雲閣の中も外も埋め尽くしました。

小倉紫雲閣の館内も花だらけ


偉大な人生を紹介する


心からの感謝を捧げました


父とわたしの供花

 

館内には、故人の人生を紹介する勲章や表彰状なども飾られました。わたしはそれらを眺めて故人の偉大さを再確認するとともに、これまで多くのご厚意を頂戴したことに対する感謝の念を思い起こしました。メモリアルコーナーの遺影に手を合わせ、感謝の想いをお伝えしました。


開式前の祭壇の前で


葬儀会場のようす


13人の導師が続々と入場!


祭壇の前に立つ13人の導師!


まことに荘厳な儀式でした


最後列のわたしは感動しました

葬儀・告別式は小倉を代表する寺院である広寿山福聚寺(旧小倉藩主の小笠原家、および佐久間家の菩提寺)のご住職様をはじめ、日本仏教各宗派の13名の僧侶が並びました。これほど多くの導師による葬送の儀はわたしも初めて見ましたが、じつに壮観でした。偉大な生涯を送られた故人の「人生の卒業式」に、まことに相応しかったです。わたしは感動しながら、「これは日本一の葬儀だ! 最高の人生の卒業式だ!」と思いました。


日本一の葬儀、最高の人生の卒業式!


焼香のようす


最後に、わたしが焼香しました


御遺族に御挨拶させていただきました

 

戒名も、「新帰元第一院始覚弘通興安大居士」という素晴らしいものでした。安倍晋三元首相の戒名には「紫雲」、アントニオ猪木さんの戒名には「闘魂」の文字が入っていましたが、黒土始様の戒名には「第一」の文字がしっかり入っていました。それを見て、わたしはまた感動しました。その後、親族に続いて参列者の焼香が行われ、昨夜の通夜に続いて最後に並んだわたしは、御遺族に心をこめて御挨拶させていただきました。

 

故人は第一交通産業グループの総帥として、企業の合併・買収を積極的に行い、全国のタクシー保有台数は8000台を超え、日本一となりました。2022年6月に代表権を返上して取締役を退くまで、60年以上同社グループの経営を率いていかれました。そのときの引退記者会見では、「みなさんも、100歳を目標にして下さい!」と訴えられました。こんな凄い人がどこにいるでしょうか! また、ブログ「最高の人生の修め方」に書いたように、故人は早くから人生を卒業する準備をされていたといいます。いわゆる「終活」ですが、人生を終う活動としての「終活」より、人生を修めるための「修活」でした。田中社長によれば、戒名もお墓も葬儀も、その後のこともすべて準備は完璧だったそうです。決まっていなかったのは、今日という日付だけだったとか。


人生の修め方』(日本経済新聞出版社

 

実際、お葬儀の具体的な打ち合わせも5年前から、わが社と行っていました。こんな方はなかなかおられません。ブログ「老いること、生きること」で紹介した天道塾の講話では「自分のお葬式をイメージすること」の大切さについて話しましたが、故人はまさに、将来必ず訪れる最期を覚悟して今の生を輝かせる達人でした。ちょうど5年ほど前、わたしは『人生の修め方』(日本経済新聞出版社)という著書を書きました。帯には「人生100年時代。いつまでもポジティ部でありたい人に贈るヒント集。『終活』から『修活』へ――。」と書かれていますが、じつは同書を書いているとき、ずっと故人のことを考えていました。そして、刊行後は献本させていただきました。



本日のご葬儀は、大変多くの方にご参列いただきました。おそらく久しぶりに葬儀に参列したという方も多かったのではないかと思います。今日お見えになられた方々は、葬儀に参列し、供養することの大切さを改めて考えることの機会となったのではないかと思います。毎日葬儀は行われていますが、すべての葬儀でそのように感じていただけるよう精進していきたいと思います。また、久方ぶりの大規模葬儀で、このような経験をしたことのないスタッフにも大変な学びになったのではと思います。さまざまな意味で大きな意義のあったご葬儀だと感じています。



新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本中の葬儀の参列者が減りましたが、明日からその流れが一気に変わる気がしています。また、親が亡くなっても周囲に告知せず、こっそりと家族葬で済ます世の風潮の中で、亡くなったその日にマスコミでも大々的に発表され、そこに葬儀の日時と会場が発信されるのも久々でした。故人の偉大さを再確認するとともに、わが社およびわが業界へのエールには感謝の言葉もございません。最高の人生の修め方をされた故人の「人生の卒業式」も最高でした。

供養には意味がある』(産経新聞出版

 

今日のお式、サンレー紫雲閣の社員・スタッフ一同、心して務めさせていただきました。最後まで、わたしに学びを与えていただき、ありがとうございました。この日、13日に発売された最新刊『供養には意味がある』(産経新聞出版)の大増刷が決定しましたが、これも故人のはからいのような気がしてなりません。威風堂々たる生涯を歩まれた故黒土始様の御冥福を心よりお祈りいたします。合掌。

 

2023年4月20日 一条真也