最高の人生の修め方

一条真也です。
タクシー業界最大手、第一交通産業の創業者で相談役の黒土始氏が17日午前8時58分、肺炎のためお亡くなりになられました。大分県中津市のご出身で、享年101歳でした。わたしの尊敬する経営者であり、大恩人です。

ヤフーニュースより

 

故人の訃報に接したわたしは、すぐさま御自宅を訪れ、お参りをさせていただきました。第一交通産業田中亮一郎社長のご厚意で故人とも最期のお別れができました。わたしは子どもの頃から故人には大変可愛がっていただき、その後もわたしの成長を温かく見守って下さったので、まるで親戚が亡くなったかのような感覚にとらわれ、グリーフを感じました。横たわる故人のお顔を見ながら、手を合わせて「長い間、お疲れ様でございました。ありがとうございました」と申し上げました。

昨日、故人と最期のお別れをしました

 

黒土始氏は、1960年に前身の第一タクシーを5台のタクシーで創業されました。その後、1964年に第一通産(現第一交通産業)を設立。創業の地が小倉の富野だったので、近くにある松柏園ホテルが最初の顧客となりました。当時の松柏園の社長だったわたしの祖父である栗田光十郎が若き日の黒土氏のバイタリティに惚れ込み、意気投合したようです。松柏園の専務だった父の佐久間進も黒土氏と親しくさせていただきました。父は14歳年長の故人を経営者の先輩として慕い、後に第一交通産業監査役を務めました。北九州市の誕生と同じ1963年に松柏園で産声をあげたわたしは大変可愛がっていただきました。

 


朝日新聞DIGITAL」より

 

わたしが大学に合格したとき、故人は大変喜んで下さり、わざわざ電話を下って「早稲田の政経とは、たいしたもんじゃ。あんた、将来は政治家になりなさい」と言って下さいました。同じ小倉南ロータリークラブに入会したときも優しく接して下さいましたし、北陸大学の客員教授に就任して同クラブを退会するときも助けて下さいました。また、ブログ「小倉南RC卓話」で紹介したように、新たに入会した小倉ロータリークラブの会員でありながら、古巣の小倉南クラブで卓話に招かれたときは涙を流さんばかりに喜んで下さり、卓話の後は「あんた、立派な経営者になったなあ。大したもんじゃ」と褒めて下さいました。本当に、故人にはひとかたならぬお世話になりました。


 

 

故人は第一交通産業グループの総帥として、企業の合併・買収を積極的に行い、全国のタクシー保有台数は8000台を超え、日本一となりました。2022年6月に代表権を返上して取締役を退くまで、60年以上同社グループの経営を率いていかれました。そのときの引退記者会見では、「みなさんも、100歳を目標にして下さい!」と訴えられました。こんな凄い人がどこにいるでしょうか! また、故人は早くから人生を卒業する準備をされていたといいます。いわゆる「終活」ですが、人生を終う活動としての「終活」より、人生を修めるための「修活」でした。田中社長とお話させていただいたとき、「もう十分なくらい準備はしましたよ」と言われていました。


人生の修め方』(日本経済新聞出版社

 

実際、お葬儀の具体的な打ち合わせも5年前から行っていました。こんな方はなかなかおられません。将来必ず訪れる最期を覚悟し、今の生を輝かせる達人であると感服していました。ちょうど5年ほど前、わたしは『人生の修め方』(日本経済新聞出版社)という著書を書きました。帯には「人生100年時代。いつまでもポジティ部でありたい人に贈るヒント集。『終活』から『修活』へ――。」と書かれていますが、じつは同書を書いているとき、ずっと故人のことを考えていました。そして、刊行後は献本させていただきました。ちなみに、5日前の今月13日に上梓した『供養には意味がある』(産経新聞出版)は『人生の修め方』の続編のような内容の本です。

供養には意味がある』(産経新聞出版

 

故人の通夜式は明日19日19時から、葬儀・告別式は20日正午から、いずれもわが社の小倉紫雲閣の大ホールで行われます。同ホールは日本初の大型セレモニー会場で「儀式の殿堂」などと呼ばれていますが、じつは大規模な改装工事を行っており、3月末に完成したばかりでした。故人のお見送りに間に合って、わたしはサンレーの社長として感無量です。おそらく明日の通夜式も、明後日の葬儀・告別式も過去最大級のものになるでしょう。コロナ以後では、日本でも最大級になると予想されます。



新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本中の葬儀の参列者が減りましたが、明日からその流れが一気に変わる気がしています。また、親が亡くなっても周囲に告知せず、こっそりと家族葬で済ます世の風潮の中で、亡くなったその日にマスコミでも大々的に発表され、そこに葬儀の日時と会場が発信されるのも久々のような気がします。故人の偉大さを再確認するとともに、わが社およびわが業界へのエールには感謝の言葉もございません。最高の人生の修め方をされた故人の「人生の卒業式」も最高にするべく、サンレー紫雲閣の社員・スタッフ一同、心して務めさせていただきます。最後に、威風堂々たる生涯を歩まれた故黒土始様の御冥福を心よりお祈りいたします。合掌。

 

2023年4月18日 一条真也