供養に意味はあるか?

一条真也です。金沢に来ています。
左目にものもらいができて元気がありません。サングラスを外したら、サンレーの東専務が「ギャーッ!」と叫んだので傷つきました。今朝、「身元わからぬ『無縁遺骨』、全国に6万柱 自治体は取り扱いに苦慮」という朝日新聞デジタルの記事を見つけました。心が痛みました。

朝日新聞デジタル」より

 

それによれば、高齢化が進み地縁や血縁が薄れる中、引き取る人がいない死者が増えている問題で、総務省は初めて自治体への実態調査をし、28日に発表したそうです。2021年10月に全国の市区町村で管理・保管していた「無縁遺骨」は約3万柱あったことが確認されました。報告書によると、身元がわからない遺骨は約6千柱で、残りは身元が判明しています。市区町村の執務室のキャビネットや倉庫、納骨堂、遺品整理業者の倉庫などに保管されています。同省では、「自治体によって納骨堂に移った遺骨はカウントしていないケースもあり、実際はもっと多いとみられる」とコメントしています。

朝日新聞デジタル」より

 

朝日新聞デジタルといえば、ちょうど4ヵ月前となる昨年12月29日に「『無縁遺骨』の葬祭件数が最多に『身元わかっている人が9割以上』」という記事を配信しています。それによれば、身寄りがなく経済的に困窮して亡くなった人の葬祭費を行政が負担するケースが増えているそうです。厚生労働省によると、2021年度は全国で4万8622件(速報値)と過去最多となり、この10年で約1万件増加しました。地域や血縁のつながりが薄れる中、高齢化で年間140万人が亡くなる「多死社会」が到来しており、引き取り手のない「無縁遺骨」が増えているのです。取り扱いに苦慮しているようで、記事には「親族への遺骨引き取りの意思確認の統一基準が決まっていないため、判断に困る」「法定相続人になり得るのが三親等内なので意思確認しているが、回答自体をもらえないなど事務的負担が重い」という意見も紹介されています。

ヤフーニュースより

 

また、昨年12月11日にファイナンシャルワールドが配信した「令和はお葬式もお墓も質素に。『墓じまい』したら費用はどのくらいかかる?」という記事には、いい葬儀の行った「第5回お葬式に関する全国調査」の結果が紹介されています。それによれば、2022年の調査における葬儀の平均価格は110万7000円と過去最少となりました。2020年と比較して、実に73万6000円も下落しています。その理由の1つとして、記事には「コロナ禍において人との接触を減らすため、これまで主流だった一般葬を行う方が減少し、家族葬や一日葬、直葬・火葬が増加したことが挙げられます。それに加え、コロナ禍を経て少なからず価値観の変化が生じ、葬儀は大々的に行うよりも身内や親しい人たちでひっそりと行う、といった流れが強まっていることも想定されます。また、2020年と比較すると、基本料金(葬儀を行うための固定費)は約51万円、通夜ぶるまいや告別料理などの飲食費は約11万円、返礼品も11万円ほど、それぞれかかる費用が少なくなっています。昨今の葬儀は、全体的に質素な内容となってきているようです」と書かれています。

ヤフーニュースより

 

さらに、昨年12月14日にファイナンシャルワールドが配信した「もう地元に戻ることないけど・・・お墓ってどうしたらよいの?」という記事には、「墓じまい」の問題が取り上げられています。それによれば、改葬許可書等の手数料は各自治体によって異なります(無料の場合もあります)し、その他の費用も墓地の広さや地域によってもまったく違ってくるそうです。「墓じまい」は自分一人で決められる問題ではありません。家族だけでなく、親族にも相談する必要がありますし、もちろん墓地管理者との話し合いも必要です。行政書士の田久保誠氏は、「なかなか難しい問題ですので、ご自身ひとりで判断できないこともいろいろあると思います。また、利便性や経済合理性よりも、墓参りをすることが自分のルーツを再確認する方法だという方もいらっしゃいます。可能な限り家族全員が納得できる結論を出すことが、トラブルを避ける方法だと思います」とアドバイスしています。

近刊『供養には意味がある』(産経新聞出版

 

このように、日本人の葬儀やお墓をめぐる「供養」の問題は混迷をきわめています。単価が下落したのは消費者にとっては喜ぶべきことなのでしょうか? 価格という表面的なものよりも、故人を弔い追善し感謝するという「こころ」の深いところに大きな地殻変動が起こっているように思えます。多くの日本人が「供養には意味がない」と考えているのかもしれません。このような混迷の時代に、わたしは『供養には意味がある』(産経新聞出版)を上梓いたします。葬儀やお墓をめぐる「供養」についての本ですが、「終活」のこともたくさん書かれています。なぜかというと、日本初の終活専門誌である『終活読本ソナエ』(産経新聞出版)に連載した原稿を収録しているからです。同誌で、わたしは「老福論」というコラムを全16回にわたって連載しました。同時に、『WEBソナエ』でも、「一条真也のハートフル・ライフ」を全34回、さらにはWEB版『ソナエ安心のお墓探し』でも、「一条真也の供養論」を全50回連載しました。同書には、それらの連載原稿がすべて収録されています。4月13日に発売ですので、ぜひお買い求めの上、ご一読下さい!

 

 

2023年3月29日 一条真也