朝倉未来襲撃に思う

一条真也です。
1分1ラウンドで戦う格闘技イベント「Breaking Down7」のオーデイション動画が公開されましたが、総合格闘家朝倉未来選手が人気アニメ「鬼滅の刃」の煉獄杏寿郎のコスプレをした男に突如襲撃されたシーンが物議を醸しています。それにしても、くだらねぇな!(怒)


ヤフーニュースより

 

朝倉選手がスペシャルアドバイザーを務める「Breaking Down7」は2月に開催される予定ですが、そのオーディションのEグループ(ライト級)には、「煉獄コロアキ」と名乗る煉獄杏寿郎のコスプレをした男が登場しました。彼は「底辺乞食系YouTuber」と紹介され、入場時には「俺がBreaking Down7の主役になる。俺は前回のオーディションで、逮捕されて参加できなかったんだよ!」などと絶叫していました。

ヤフーニュースより

 

自己紹介になり、煉獄コロアキは「俺は今年40歳なんだよ!借金は1億円!俺は、俺の債務を全うする!相手はな、お前じゃ!朝倉未来!」などと吠えながら、突然朝倉選手に刀の形をした所持品で首元に勢いよくぶつけました。「元アウトローのカリスマ」で知られる瓜田純士らがすぐに止めに入りましたが、男は朝倉選手に紙を投げつけるなど抵抗を続けました。煉獄コロアキは収まらず、瓜田に向かって「てめえ、入れ墨だせぇんだよ」と吐き捨てました。最後は瓜田にカツラをはぎとられ、関係者に連れ出されて強制退場となりました。


じつは、わたしは「目立った者勝ちのオーディションで、いつかは朝倉未来を襲撃する奴が現れるだろうな」と思っていましたが、ついに出現しました。煉獄コロアキは、貧しい家庭に育ったそうです。しかし、株などの投資で成功し、一時は資産3億円にまで到達したといいます。しかし以降は負けも大きくなり、結局、負債は現在の1億円になったとか。ネットの情報では、3年前にはコンビニでアルバイトしレジからお金を盗んで株の投資にまわし、半年後に逮捕され、懲役2年となった模様です。


前回のブレイキングダウンオーディションは昨秋に開催されましたが、彼は7月にYouTubeの企画で統一教会の本部にほぼ全裸で突撃、扉は閉まっていましたが、「霊感商法はやめろ」などと叫び訴えました。すると警察が来て逮捕。ほぼ全裸だったため公然わいせつ罪に当たるとして連行されたものの、当日中には釈放されたようです。また9月にも、あるデモで隠部を露出した公然わいせつ罪で逮捕、収監されています。


ところで、煉獄コロアキの格闘技の実力はどうか? 昨年12月29日に開催されたブレイキングダウンの類似イベントである「炎上万博」に参戦し、YouTuberラファエルの偽物の「ニファエル」に31秒でKO負け。まったく腕が立たないことが判明しました。ネット記事でも、彼に対して「格闘技をやるなら、大きな事故にならないよう、しっかりジムで練習をし、先生から参戦の許可をもらえるレベルになってからが良いだろう。今後の活躍を祈りたい」などと書かれています。


わたしは、今回の朝倉未来襲撃事件を知り、非常に驚きました。なぜなら、模造刀とはいえ、こんな格闘技も武道の経験もないような素人の一撃を朝倉未来が喰らったからです。エキシビションマッチとはいえ、あのメイウェザーともボクシングで打ち合った朝倉未来が、です。しかも、煉獄コロアキは「相手はな、お前じゃ!朝倉未来!」と名指しで叫びながら、かなりの距離を走って向かってきたのです。この攻撃を避けられないようでは、朝倉選手はプロの格闘家とは言えません。これはもう、ヤラセとしか考えられません。つまり、朝倉選手はわざと煉獄コロアキの攻撃を受けたのです。その理由は、もちろん「Breaking Down7」を盛り上げるためです。


ブレイキングダウンのオーディションが無法地帯となっていることは(ここ最近)有名ですが、朝倉襲撃事件を知ったファンからは、「運営は所持品のチェックをしろ」とか、「このままでは、オーディションでいつか殺人事件が起こるぞ」とか、「もはや格闘技ではなく、プロレスだ!」などとの声が上がっているようですが、笑止千万。運営はすべてわかっていて、底辺YouTuberをオーディションにかき集めているのです。彼らにはギャラも支払わなくて済みますし、そのくせ動画再生数は稼げるということで、運営側にとってこれほど旨い話はありません。スペシャルアドバイザーの朝倉選手も含めて、「商売がうまい」「頭がいい」ということなのでしょうが、わたしは「えげつないなあ」と思ってしまいます。


特に、「もはや格闘技ではなく、プロレスだ!」という意見には、わたしは大反対です。ブレイキングダウンがもはや純粋な格闘技イベントから逸脱した茶番となっていることは明白ですが、「プロレス」と同一視しないでいただきたい。プロレスは一歩間違えば命を落とすような(実際、試合で亡くなったプロレスラーは多いです)危険な技の応酬を見せる格闘パフォーマンスであり、レスラー同士のマイク合戦や煽りなどは高度な演劇的要素が求められます。昨年亡くなられた「燃える闘魂」ことアントニオ猪木さんや「革命戦士」こと長州力をはじめ、一流のプロレスラーはみな千両役者でした。彼らの言動には燃えました!


一流プロレスラー同士のマイク合戦は、ブレイキングダウンの不良同士の罵り合いとは比べようもありません。ブログ『テレビはプロレスから始まった』でも紹介したように、「プロレスはアメリカの歌舞伎だ」という見方がありますが、それほど高レベルのパフォーマンスなのです。その意味で、ブレイキングダインは「格闘技未満、プロレス以下」と言えるでしょう。まあ、わたしが愛した昭和プロレスに比べれば、令和のプロレスはまったくの別物かなという気もしますが。それはともかく、今回の朝倉未来襲撃は最低の茶番です。朝倉選手は、前田日明が非行少年の更生を目指して立ち上げた格闘技イベント「アウトサイダー」の出身ですが、ブレイキングダウンのあまりのレベルの低さに、日明兄さんも情けなくて泣いているのでは?

「鬼滅の刃」に学ぶ』(現代書林)

 

それから、今回の一件で、どうしても言いたいことがあります。煉獄コロアキの一連の炎上パフォーマンスは、国民的人気作品である「鬼滅の刃」の登場人物の中でも最も高い人気を誇る煉獄杏寿郎のイメージを甚だしく損なっているということです。拙著『「鬼滅の刃」に学ぶ』(現代書林)に詳しく書きましたが、「鬼滅の刃」という物語には、神道儒教・仏教といった日本人の「こころ」の三本柱が見事に描かれており、それゆえに、日本人の心の琴線に触れて一大ブームを巻き起こしました。


その「鬼滅の刃」の中でも、最強戦士の柱の1人である煉獄杏寿郎がとにかく魅力的に描かれています。まず、彼はとにかく底抜けに明るいです。そして、よく食べ、よく笑い、その上、後輩たちには優しいです。まさに、日本人の理想像そのものだと言えるでしょう。そんな彼を煉獄コロアキごときが貶めることは許されません。私的なコスプレまではある程度までは自由かもしれませんが、作品の商用利用や、作品そのものの商品価値を落とすような行為に対し、IPを有する会社は断固として法的処置に踏み切っていただきたいと思います。それが世の中のルールです!


世の中のルールを守れよ!(怒)

 

2023年1月3日 一条真也