男からの花束贈呈について

一条真也です。
9日、ブログ「花束贈呈と舞台挨拶」で紹介したように、映画「レッドシューズ」の北九州先行公開記念初日に雑賀俊朗監督、朝比奈彩さん、松下由紀さんに花束を贈呈させていただきました。すると、3日後の12日に「花束贈呈」が日本中の話題になっていて驚きました。もちろん、わたしの花束贈呈ではなく、俳優でタレントの谷原章介(50)さんの花束贈呈です。


ヤフーニュースより

 

谷原章介さんがMCを務めるフジテレビ系朝の情報番組「めざまし8」にスタジオ出演。サッカーW杯カタール大会で活躍した日本代表の森保一監督へ花束贈呈して奮闘をねぎらいました。谷原さんは、大きな花束を抱えてテレビカメラの中央を横切り、「すみません。男からで申し訳ありませんが」と言いながら贈呈。「決勝トーナメント進出おめでとうございます」と健闘をたたえ、力強く拍手。森保監督は「応援、共闘ありがとうございました」と深々と礼をしました。まことに微笑ましいシーンでした。


スタジオには笑顔が溢れていましたが、ネット上では谷原さんの冒頭の一言に不快感を示したとする声もありました。「違和感」「花束渡すのに性別関係ないでしょ」「花束贈呈は女性のやること、男から男へ花束を渡すのは変、という感覚」「男が花束渡して何か問題あるの?」などなど、性別を引き合いに出したことに疑問の声が上がったのです。これまで谷原さんを支持していた人からも、「シンプルにキモい・・・谷原章介好きだし子沢山で好感度高かったのにナチュラルに出ちゃっててちょっぴり残念」などと発言を残念がる声もあったそうです。


朝比奈彩さんに花束を贈呈しました

 

わたし自身の考えを述べるなら、花束贈呈は男性がやろうが、女性がやろうが構わないと思います。記事で紹介された批判コメントは、今でもツイッターで確認できます。ただ数十件といったレベルでもなく、正直かなり少ないです。いわゆる炎上と呼ばれる状況にはありません。谷原さんに差別的な悪気はないと思いますし、大袈裟過ぎるのではないでしょうか。謙遜して、「女性の方が華がある」という意味で言っていると思います。また、彼が女性から花を貰って嬉しいって気持ちあるから、素直に表現しただけでしょう。ちなみに、わたしも花束を貰うなら、男性より女性からの方が嬉しいですけどね。


前川清さんと花束交換したことも

 

そういえば、ブログ「サンレー 旅好キファン感謝祭」で紹介したイベントでは、前川清さんとお互いに花束贈呈したこともあります。いずれにせよ、谷原さんの「男からで申し訳ありませんが」という言葉は「華がなくて、すみません」という言葉のバリエーションでしょう。では、どういう人なら華があるのか? ここで、ちょっと考えてみたいと思います。わたしの本業は冠婚葬祭業ですが、とにかく花と縁が深い仕事です。結婚式には、たくさんの花を飾ります。雛壇に飾り、列席者のテーブルに飾り、花嫁の髪に飾ります。いま、「花嫁」といいました。そう、花嫁とは人間の花なのです。それは、「花婿」も同様です。


花をたのしむ』(現代書林)

 

なぜ日本では、新郎新婦の呼び名に「花」をつけるのでしょうか。拙著『花をたのしむ』(現代書林)にも詳しく書きましたが、新郎新婦の呼び名に「花」をつける理由はいくつかあると思います。でも、その最大の理由は、やはり、結婚したばかりの若い二人は美しいからです。幸福の絶頂にあってキラキラと輝いており、文字通り「花」があるからです。日本語には、「花嫁」や「花婿」の他にも、「花形」や「花道」といった花にまつわる言葉があります。相撲や芝居で花形に与えるお金も「花」と呼びます。


力士や役者への心づけを「花」というのは、まず見物のときに造花を贈って、翌日お金を届ける習慣から来たそうです。歌舞伎の「花道」も、ここを渡って客が役者に花を贈ったことから、この名がついたのです。「花形役者」は、客から花を贈られるほどの才能の持ち主というのが本来の意味です。また、芸者や遊女と遊んだ料金を「花代」といいます。これも、花に代わるものとしての金銭という意味です。どの言葉も、遊芸者と客のあいだの花のやりとりに起源があるわけです。これは、もともと花が御幣として神々を呼ぶ力を持っていたことにも関係があります。


力士にしろ、遊女にしろ、遊芸者とは神々の代理人という役割があったわけですね。彼らは人間界の「花」でした。しかし、何よりも人間界の「花」といえば、役者に尽きるでしょう。現在でも芸能人のことを「スター」と呼びますが、かつては役者のことを「花」と呼んだのです。谷原章介さんは、情報番組のMCである前に俳優です。役者です。役者の中でも、わたしは谷原さんを華のある男優だと思います。だから、彼にはもともと華があるわけで、「華がなくて、すみません」といったニュアンスの言葉など不要なのです。それでも、その言葉を言ったのは彼が基本的に慎み深い人間であり、気配りの人だからだと思います。


もともと、わたしは谷原章介という人に好感を持っていましたが、今回の一件で好感度がさらにアップしました。最後に、最近は女優を「俳優」と呼ぶ風潮がありますね。でも、わたしはあくまで「女優」と言い続けます。なぜなら、女優と俳優は違うからです。女優とは、人類における美のチャンピオンであるとリスペクトしているからです。アカデミー賞も「女優賞」という呼称を残していますが、わたしも「女優」と言い続けます。何か問題ありますか?

 

2022年12月13日 一条真也