死を乗り越える井上ひさしの言葉

 

おまえさん、さっき死にたいといっていたね。ばかなことをいうもんじゃないよ。世の中はじまって以来、死ぬといって死んだ人はいないんだから。(井上ひさし

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、日本の小説家、劇作家、放送作家である井上ひさし(1934年~2010年)の言葉です。彼は、放送作家を経て作家になりました。主な著書に『四千万歩の男』『吉里吉里人』『ドン松五郎の生活』『四十一番の少年』など多数。

 

 

この言葉は、『戯作者銘々伝』に出てくる言葉です。昭和を代表する作家である井上ひさしは、笑いの中に人間の心情を見事に描きだしました。作家としてのスタートは放送作家でした。テレビ文化の創成期に、彼の才能は見事に花開きました。彼が作家の1人として参加した「ひょっこりひょうたん島」など、オリジンのパワーを感じさせてくれます。



わたしは「笑い」というものにとても興味があります。なぜなら人が生きていく中で、笑いが不可欠に思えるからです。わたしはグリーフケアの一環として、「笑いの会」などを主宰しています。高齢者は大声で笑っている姿を見ると、笑いの力を実感します。



「笑い」は時に不謹慎といわれ、「死」も不吉などと忌み嫌われています。でも、この二つを忘れた幸せなど、まやかしに思えます。井上ひさしは常に真実を「笑い」というものでくるんで表現してきました。喜劇ゆえに軽んじられる傾向がありますが、逆に笑いにしたことによる素晴らしさがあるのです。なお、この井上ひさしの言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。

 

 

2022年10月14日 一条真也