台風の中の「敬老の日」

一条真也です。
19日は「敬老の日」ですね。本当は、娘夫婦と一緒に実家の両親を訪ねようかと思っていましたが、史上最強クラスの台風14号が九州に上陸するというので止めました。
昭和10年生まれの父は、来年で「米寿」を迎えます。昭和38年生まれのわたしは、来年で「還暦」を迎えます。父子で長寿の祝いとは、まことに有難いことです。

 

人は長寿祝いで自らの「老い」を祝われるとき、祝ってくれる人々への感謝の心とともに、いずれ一個の生物として自分は必ず死ぬのだという運命を受け入れる覚悟を持つ。
また、翁となった自分は、死後、ついに神となって愛する子孫たちを守っていくのだという覚悟を持つ。祝宴のなごやかな空気のなかで、高齢者にそういった覚悟を自然に与える力が、長寿祝いにはあるのです。そういった意味で、長寿祝いとは生前葬でもあります。冠婚葬祭業界の中にあっても、特にわが社は、これまで長寿祝いに力を入れてきました。わたしは、この長寿祝いという、「老い」から「死」へ向かう人間を励まし続ける心ゆたかな文化を、ぜひ世界中に発信したいと思っています。

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「読売新聞オンライン」より

「人は老いるほど豊かになる」といえば、拙著『老福論〜人は老いるほど豊かになる』(成甲書房)が旅行誌の名門「旅行読売」2021年10月号で紹介されました。同誌に掲載された「【コラム/旅へ。】日本地図を作った伊能忠敬」という三沢明彦氏の文章の中に、「帰りの車中、老いの指南書をめくると、歴史に名を遺した賢人たちも揺れていた。哲学者プラトンは『経験知を生かせ』と温かいが、アリストテレスは『自己中心的になり、早く引退せよ』と厳しい。迷いが深まる中で、こんな言葉に目が留まった。『老人は孤独なのではなく、毅然としている。無力なのではなく、穏やか。頭の回転が鈍いのではなく、思慮深いのだ』(一条真也老福論』より)。そう置き換えてもらえば、少しは前向きになれる。老いと向き合い、つまらないプライドから自由になれば、険しい山は無理でも、なだらかな丘ぐらいは、とも思えてくる」とあります。

老福論』(成甲書房)

 

「老い」というものを陽にとらえた『老福論』の言葉を紹介していただき嬉しい限りですが、何よりもプラトンアリストテレスの言葉と一緒に紹介されたことに驚きました。なんだか世界三大哲学者の一人になったような気分で、まことに愉快であります。(笑)みなさんも、「敬老の日」には御両親やおじいちゃん、おばあちゃんを訪ねてあげて下さい。新型コロナウイルスの感染が怖い場合は、ぜひ電話を掛けてあげて下さい。メールやLINEもいいですが、やはり子や孫の声を聴くのは嬉しいものですよ。



2022年9月19日 一条真也