死を乗り越える川端康成の言葉

 

死んだ時に
人を悲しませないのが、
人間最高の美徳さ。
川端康成

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、日本の小説家である川端康成(1899年~1972年)の言葉です。彼は、大阪府生まれ。東京帝国大学文学部国文学科卒業。代表作に『伊豆の踊子』『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』『古都』など。日本人初のノーベル文学賞受賞。



「死んだ時に人を悲しませないのが、人間最高の美徳さ。」とは、日本人の美意識を追求した作家である川端康成らしい言葉です。彼が描き出す女性像がわたしは好きなのですが、この言葉は女性に向けた言葉に感じてしまいます。死んだ時に、その人の価値が決まるといいますが、その価値を「人を悲しませない」と表現したことに、わたしは彼の死生観を感じます。



川端こそ、「死」をしっかりととらえ、美学を描き出した作家ではないでしょうか。しかしながら、彼自身は自殺という道を選んでしまいました。ただ、遺書がなかったことで事故説もあります。同じように遺書がなく自殺したといわれるマリリン・モンローの死に対し、「無言の死は無言の言葉だと考えますね」と川端は語っています。



自殺の理由の1つに、川端が15歳の時に寝たきりで下の始末も自らできずに死んでいった祖父・三八郎の世話した記憶があったというものがあります。老醜が具体的な恐怖となっていたというものです。しかし、わたしは、そんなことはなかったと思います。「人を悲しませない」といいながら、その美徳を表現できなかったのが残念です。なお、この川端康成の言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。

 

 

 2022年9月4日 一条真也