墓と仏壇を自分で作る

一条真也です。
8月になりました。1日は恒例のサンレー本社の総合朝礼が行われるはずでしたが、新型コロナウイルスの感染者がここのところ急増したため、今回は中止になりました。この日、産経新聞社の WEB「ソナエ」に連載している「一条真也の供養論」の第49回目がアップされます。今回は、「墓と仏壇を自分で作る」です。

「墓と仏壇を自分で作る」

 

少子高齢化核家族化が進み、お墓の悩みを抱える人が増えています。先祖のお墓を引っ越しする「墓じまい」、新たにお墓をつくる「墓じたく」など、お墓のかたちが多様化しています。前回も触れたとおり、『論語と冠婚葬祭』(現代書林)において、わたしは、わが国における儒教研究の第一人者である中国哲学者で大阪大学名誉教授の加地伸行先生と対談させていただきました。

 

加地先生は、「お墓の問題は簡単に解決できます。もし、土地付きの家をもっていたら、その敷地内に、自分の亡き親族のお墓を建ててしまえばいいのです。しかし法律が禁じている、と思われるかもしれません。地目が墓地でなければ埋葬してはいけないことになっているからです。では、敷地の一角を墓地に地目変更しようと思っても、時間が掛かります。しかしその必要はないんです」と語られました。

 

例えば石碑に、「加地家之墓」と書いた瞬間に、墓地関係の法律に全部引っかかってしまいます。ところが、「加地家記念(あるいは祈念)碑」としたら、全然関係ないというのです。誰も文句は言えません。黙っていれば、そこに遺骨を納めてまったく構わないといいます。お骨が家の中にあるか、外の碑の下にあるかの違いだけであるというのです。加地先生は、「地目は宅地のままです。自宅がマンションだったら、マンション入居者で話しあって一角に記念碑を建てればすむことです。いかがでしょうか」と言われました。なるほど、これなら墓問題は解決ですね。

 

墓と並んで、祖先とのコミュニケーション・ツールとして、仏壇があります。仏壇は、聖なる空間にして、かつ家族の絆を強烈に意識できる、素晴らしい日本特有の装置です。仏壇の前で、家族はともに泣き、ともに喜ぶことができます。それこそが家族主義の姿でしょう。しかし、現在では仏壇のない家が増えています。加地先生は、「もし家に仏壇がなければ、作ればいい。菓子箱でも段ボール箱でもかまいません。何も黒色でなくても、千代紙を貼って華やかな色調にしてもいい」と語ります。

 

さらに、加地先生は「内部は三段にし、上段に仏様(お釈迦様でも観音様でも)を安置し、中段にはあなたの家の祖先の位牌を建て、下段には、向かって左から花瓶(花を活ける)・香炉(線香を点てる)・ろうそく立ての三つを置けばりっぱなお仏壇なのである。大切なことは、仏壇という〈物〉ではない。祖先と出会う〈こころ〉なのです」と語られました。わたしは、加地先生の発言を聴いて、目から鱗が落ちる思いでした。なるほど、墓も仏壇も自分で作ることができるのです。自らの人生を修めるために、ハンドメイドの墓や仏壇も悪くないかもしれませんね。

 

 

2022年8月1日 一条真也