「紫雲」が入った戒名

一条真也です。
12日、参院選の街頭演説中に銃撃され、67歳で死去した安倍晋三元首相の葬儀が行われました。場所は、東京・芝公園増上寺です。妻の昭恵さんが喪主を務め、凶弾に倒れた夫が搬送された奈良県内の病院で対面した際「手を握り返してくれたような気がした」と語られたとか。葬儀の後には棺を乗せた車が長年の政治活動の舞台となった国会周辺を回りました。改めて、惜しい方を亡くしました。


安倍元首相の戒名には「紫雲」が・・・

 

葬儀には約1000人参列し焼香などを済ませ、会場での葬儀には約200人が参列しましたが、安倍元首相の戒名が「紫雲院殿政誉清浄晋寿大居士」であることに驚きました。わが社の「紫雲閣」と同じ「紫雲」が戒名の初めに付けられているからです。「紫雲」とは人の臨終の際に迎えに来るという仏が乗る紫色の雲ですが、わたしはかつて、国民的作家だった司馬遼太郎の名作『坂の上の雲』にかけて、「坂のぼる上に仰ぐは白い雲 旅の終わりは紫の雲」という歌を詠んだことがあります。



「紫雲」は名僧などに付く冠です。法然上人が夕方西の空に紫の雲を見つけ、浄土宗を広める決意をされたことから、縁起の良い言葉とされました。浄土宗、浄土真宗といった浄土教系の言葉だとされていますが、安倍元首相の葬儀が行われたのは東京都港区芝公園の「増上寺」です。浄土宗の七大本山の1つですね。安倍家の宗派は浄土宗で、安倍元首相の父・安倍晋太郎氏、祖父・岸信介氏の葬儀も増上寺で行われています。お墓は、父の晋太郎氏も納められている山口県長門市の「長安寺」になるようです。わたしも生前の安倍元首相には大変お世話になりましたので、ぜひ長安寺を訪れて、お墓参りしたいと思っています。

小倉紫雲閣

 

安倍元首相の「紫雲院殿政誉清浄晋寿大居士」については、多くの方々から「最初に紫雲が入っていましたね」と言われました。宗派を超えて、日本仏教における最高の戒名ではないかと思います。わが社の役員や社員にそのことをLINEで知らせたところ、紫雲閣部門の責任者である黒木取締役は「戒名で紫雲の文字を使うことはすごく素晴らしいと思います。紫1文字でも徳の高い文字ですので、13文字もあるとは見たことのない戒名です」、小倉紫雲閣の郡総支配人は「わたくしもニュースで夫人の持たれている御位牌拝見致しました。大変痛ましい事件に心を痛めておりますが、当社の紫雲の名が目に入り戒名では最上位で名僧などにつく冠ということを知りました。ニュース等見られた方からお問い合わせもあるかもしれませんので、職員にもこのことを伝え、お客様からのお問い合わせに対応致したいと思います」、同じく緒方支配人は「紫雲院の院号戒名を拝見したのは、2度目です。以前たしか、大分の寺院で紫雲院○○の戒名を付けておられました。その際は、初七日の寺院法話で、亡くなられた方は檀家総代を努めていましたので、『最高の戒名』を付けましたと遺族に話しておられました」、同じく橋本副支配人は「安倍元首相は、ご本人らしい素敵な戒名を頂かれました。心よりお悔やみ申し上げます。私も山口出身ですので、とても残念です」という返信をくれました。

 

 

小倉紫雲閣といえば、最近読んだ島田裕巳氏の最新刊『葬式消滅』に、以下のように書かれていました。
「私は、福岡県で葬祭業を営む一条真也さんと葬式のことをめぐって往復書簡を交わし、対談をしたことがあります。それは、『葬式に迷う日本人 最期の儀式を考えるヒント』(三五館シンシャ)という本にまとめられています。その対談のおり、日本で最初にセレモニーホールを作ったのは、一条さんが社長をつとめるサンレーという会社だということを知りました。総合葬祭会館などと呼ばれる大型の施設は、1978年にオープンしたサンレー小倉紫雲閣が最初だというのです。現在では、他の業者もセレモニーホールを建てるようになり、全国に広まりました。今では、8千を超えていると言われます」


『葬式消滅』に小倉紫雲閣の記述が・・・

 

同書では、戒名について、日本にだけしかないものであると指摘しています。インドに生まれた仏教は、周辺の国々に伝えられ、今でも信仰されているわけですが、他の仏教国に戒名はありません。島田氏は、「他の仏教国では戒名などというものはあり得ないのです。そこに、戒名の存在意義を説明することの難しさがあります。その意義を説明しようとすると、どうしても矛盾したものになってしまうのです。日本における戒名は、『死後の勲章』としてとらえた方が、理解しやすいのではないでしょうか」と述べています。この意見は基本的に、わたしも賛成です。安倍元首相には素晴らしい戒名だけでなく、日本の最高勲章にあたる「大勲位菊花章頸飾」が贈られることになりました。本当に偉大な政治家でした。わたしは、憲政史上最長の政権を続けられた大政治家に敬意を表して、新国立競技場か東京ドームで「国葬」を行うべきだと思います。最後に、故人の御冥福を心よりお祈りいたします。合掌。

心より御冥福をお祈りいたします

 

2022年7月14日 一条真也