『満月交遊 ムーンサルトレター』

一条真也です。
78冊目&79冊目の「一条真也による一条本」紹介は、『満月交遊 ムーンサルトレター』上下巻(水曜社)であります。2015年10月1日の刊行でした。


満月交遊 ムーンサルトレター』上下巻(水曜社)

 

本書は、宗教哲学者で京都大学こころの未来研究センター教授(当時)の鎌田東二先生との往復書簡集で、『満月交感 ムーンサルトレター』の続編です。わたしは、「バク転神道ソングライター」の異名を持つ宗教哲学者の鎌田東二先生と満月の夜にウェブ上の文通を交わしてきました。文通は「ムーンサルトレター」の名で、2005年10月18日に開始されました。そして、2015年6月7日に第120信がアップ。その単行本化が本書です。
 

満月交感 ムーンサルトレター』上下巻(水曜社)

 

第60信がアップされた際には、『満月交感 ムーンサルトレター』が上下巻で出版されています。それぞれの巻は300ページを優に超え、その過密な字組みは業界に衝撃をもたらし、多くの出版社の編集部で回覧されたとか。それから5年後、『満月交遊 ムーンサルトレター』上下巻が刊行され、出版界に再び衝撃が走りました。


この過密な字組みを見よ!

 

前作の『満月交感』は本のカバー・デザインがインパクト大でした。満月に向って吠える二匹の狼が描かれているのですが、まるで伝奇小説のようなイメージでした。わたしは上巻の「まえがき」の最後に、「満月に吠える二匹の狼が世直しめざす人に化けたり」という歌を詠みました。


満月交遊』上下巻の口絵


じつは、鎌田先生もわたしも大の月狂いなのですが、これはどうやら干支と関係があるように思えます。つまり、二人ともウサギ年生まれなのです。ということは、わたしたちは狼の皮をかぶった二羽のウサギなのかもしれません。今回の『満月交遊』では、表紙にウサギが描かれていて、「やっぱり!」といった感じです。編集を担当して下さった水曜社の朝倉祐二さんによれば、デザイナーの方が「日本最古の漫画」と称される『鳥獣戯画』に出てくるウサギをイメージされたそうです。これを見たわたしは「世直しをめざす兎が二羽跳ねり月を見上げて今宵も遊ぶ」という歌を詠みました。


わが書斎に収まった「金の月」本と「銀の月」本

 

わが書斎の自著コーナーの書棚に『満月交遊』を収めると、銀色の背表紙が、お隣りの『満月交感』の金色の背表紙とともに輝いています。まるで「金の月」と「銀の月」が並んでいる感じです。わたしは、童謡「月の砂漠」に登場するラクダの「金の鞍」と「銀の鞍」に乗った王子様とお姫様を連想して、センチメンタルな気分に浸りました。加藤まさおが作詞した「月の砂漠」の歌詞によれば、金の鞍には銀の甕が、銀の鞍には金の甕が備えられ、2つの甕はそれぞれに紐で結んでありました。いやあ、まことにロマンティックですね。「月の砂漠」は、月狂いのわたしが心から愛してやまない歌です。



さて、この『満月交遊』の上巻には、第61信から第90信までのわたしたちの往復レターが収められています。話題は相も変わらず多岐にわたっていますが、この間に起こった最大の出来事は、何と言っても2011年3月11日に発生した「東日本大震災」です。上下巻の「目次」は、以下のようになっています。


満月交遊』上巻の目次

 

第61信●先祖供養●火・水(KAМI)
第62信●愛犬の死●なんまいだー節
第63信●隣人祭り沖ノ島
第64信●無縁社会●講
第65信●手塚治虫ブッダ●愛の経典
第66信●東京自由大学●解器(ホドキ)
第67信●タイガーマスク運動親鸞
第68信●東日本大震災●現代大中世論
第69信●言霊●大駱駝鑑
第70信●シャーマニズムの未来●「急がば回れ」路線
第71信●引き寄せの法則●星の子供
第72信●涙の般若心経●現代の「モンク」
第73信●ジブリ映画●ロイヤル・タッチ
第74信●黄泉の国●天河火間
第75信●矢作直樹先生●命のウツワ
第76信●ホスピタリティ・カンパニー●現代神道
第77信●のこされた あなたへ●天河の浴酒神事
第78信●有縁凧●朝長
第79信●冠婚葬祭互助会●はひふへほの法則
第80信●孔子文化賞●パリとロンドン
第81信●ショーヴェ洞窟●仰げば尊し
第82信●葬礼歴史博物館●融
第83信●仏教的宇宙観●歴史認識
第84信●グリーフケアと怪談●ベルクソン
第85信●東日本大震災グリーフケア●人災
第86信●世界平和パゴダ●面白・楽し・ムスビ
第87信●ヨーロッパ視察●韓国での講義
第88信●伊勢神宮古事記ワンダーランド
第89信●ダライ・ラマ14世●如来
第90信●台湾視察
    ●東京ノーヴイ・レパートリーシアター


満月交遊』下巻の目次

 

第91信●小津安二郎●清なる水
第92信●縁の行者●対決ライブ!
第93信●山口昌男●感情の共同体
第94信●ミャンマー●卜部氏
第95信●シュガーマン松尾芭蕉
第96信●野口雨情●シャーマン
第97信●風立ちぬ小林一茶
第98信●新しい儀礼文化●森は海の恋人
第99信●出雲大社●スピリチュアルケア師
第100信●禮鐘の儀●三原山
第101信●宇宙葬ムーンサルト・プロジェクト
第102信●かぐや姫の物語●東京賢治シュタイナー学校
第103信●初期設定とアップデート●マリア・カラス
第104信●手向山●五輪書
第105信●慈経 自由訳●鳥山敏子
第106信●沖縄 海洋散骨●聖地巡礼
第107信●セウォル号●東北被災地
第108信●仏教シンポジウム●八百万
第109信●孔子の木●京大俳句
第110信●小倉原爆●高木慶子大姉
第111信●スピリチュアルケア学会●網膜剥離
第112信●ニューヨーク視察●杜若
第113信●FFSS●スサノヲ
第114信●国学●厭離穢土
第115信●文化の核●スパイラル史観
第116信●こころのジパング三島由紀夫
第117信●ライブ版 ムーンサルトレター●悲とアニマ
第118信●鎮魂舞台●出雲神話
第119信●桜山●虎捕山
第120信●高野山開創1200年●「神の島」久高島


満月シリーズが4冊揃うと壮観!

 

わがレター・ネームの「Shin」というのは鎌田先生がつけて下さいました。もちろん「一条真也」の「真」から取っているのでしょうが、メソポタミア神話の最古の神である月神シンの意味もあるそうです。「Tony」というのは、「東二」の音読みです。また、コメディアンの「トニー谷」をもじってもいるそうですが、「トニー・パリ・カマターニュ」という名のフランス人みたいでカッコいいですね。そういえば、先生が以前パリの街を歩いていたとき、パリを自分の故郷であるように感じられたとか。


日本経済新聞」2013年10月18日朝刊


タイトルには「交遊」とありますが、じつは「日本経済新聞」の最終面の文化面にある「交遊抄」というコーナーにわたしが登場したことがあります。2013年10月18日の朝刊でした。交友関係を語るコーナーでしたが、わたしは鎌田先生との「ムーンサルトレター」について書きました。当時は100信を迎えるところでしたが、あれからさらに文通は進み、ついには120信を突破したのです。


儀式論』(弘文堂)

 

人類は神話と儀式を必要とする」がわたしたちの合言葉ですが、上巻で『古事記』をめぐって神話論を交わしたわたしたちは、下巻では儀式論を展開しています。じつは、かつて柳田國男折口信夫の2人が「日本民俗学」を創設したように、わたしは鎌田先生とともに「儀式学」を立ち上げるのが夢なのです。わたしは当時、九州国際大学客員教授とともに、冠婚葬祭総合研究所の客員研究員を務めており、「なぜ人間は儀式を必要とするのか」を明らかにするのが使命だと思っていました。その研究と思考の成果が拙著『儀式論』(弘文堂)です。

共著者の鎌田東二先生と

 

本書では、じつにさまざまなテーマを取り上げていますが、すべては「儀式」の本質を見つめています。わたしは、「神界のフィールドワーカー」にして「現代の縁の行者」でもある鎌田先生と満月の文通を続けながら、冠婚葬祭会社の経営者として、また冠婚葬祭業界団体の会長として、儀式の継承と創新に取り組み、「楽しい世直し」をめざしたいと思います。下巻の「まえがき」の最後で、わたしは「満月の気に誘われて文交わし魂振り鎮めこれも儀式よ」という歌を詠みました。


出版記念イベントも開催されました

 

ブログ「ムーンサルト・トークセッション」で紹介したように、2015年11月22日(日)の14時から東京・神田の「東京自由大学」において、わたしの『唯葬論』についての講演および『満月交遊』の刊行記念として鎌田先生とのトークセッションを行われました。


ムーンサルトトークセッションのようす

 

進化論のチャールズ・ダーウィンの祖父にエラズマス・ダーウィンという人がいました。彼は月が大好きだったそうで、18世紀、イギリスのバーミンガムで「ルナー・ソサエティ(月光会)」という月例対話会を開いたといいます。ならば、わたしたちは、現代日本のルナー・ソサエティのメンバーなのかもしれません。そして、われらのルナー・ソサエティは、ハートフル・ソサエティをめざしています。そう、『満月交遊 ムーンサルトレター』上下巻は「楽しい世直し」の書として出版されたのです。

 



2022年7月4日 一条真也